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79.雲の上で

短いです。

大分前に張った伏線の続きだったり。

 

 雲の上。ふわふわと浮かぶ白い綿のような物に寝転がり、アイテールは笑っていた。


「見てみなよ、テミス!やばそうなの見つけちゃった!!」

「はぁ、今度は何を見つけたの?──アナタのそういう顔は大抵厄介事に繋がるのよね……」

「ほら!これ、見なって!」


 テミスの腕をグイグイと引っ張り、アイテールは下を指さす。

 そこに映っているのは、箱を手にした男だ。


「……なによこれ?」

「わからないのかい?この男が持っている箱にはね、すごーい凝縮した瘴気が入ってるんだよ!」

「そうね、だから何?瘴気ぐらいならどこにでもあるでしょ」


 アイテールの言う瘴気とは、世界のどこにでも存在する魔力と同じように、ありとあらゆる場所に湧き出る可能性がある負のエネルギーだ。

 基本的に人間には毒となり、魔物には餌となる。

 それを凝縮した箱とはつまり、魔物を多数おびき寄せてしまうパンドラの箱に成り得るのだ。


「いやいや、瘴気を凝縮するのは別に面白くもなんともないんだけどね?……この男が箱を持ち込んでいるのはどこでしょーか?」

「これは……王都にある魔法学校ね」

「そうなんだよ。しかも持ち込んだのは誰でしょう?」

「……教師ね」


 そこまで聞いて、テミスはアイテールの言わんとしてることがわかった。

 魔物を呼び寄せるパンドラの箱が学校に持ち込まれた。それはつまり何者かが学校に魔物を呼び込もうとしているということだ。

 だが、テミスはそう考えたところで笑ってしまう。


「バカね、いくらパンドラの箱だからって魔法学校は王都の中にあるのよ?普通に考えたら軍と冒険者たちで集めた魔物が殲滅されるのがオチよ」

「まぁ、普通ならそうなんだろうけどね?そこは誰でも考えたら行き着くよ。要はそれで何がしたいのかってとこだよ」

「軍や冒険者たちの目を遠ざけたとして、誰かを殺すか、誘拐するって所かしら?」


 テミスの答えにアイテールはニヤリと笑ってみせる。


「いやー、わかんないよ?そうかもしれないし、違うかもしれない。もしかしたら目的としては違うのかもしれないよ?実は単に一時的に保管しているだけかもしれない」

「でも、そうだと面白くない、そう言いたいんでしょ?」

「うんうん、テミスはよく分かってるなぁ。最初に言ったとおり、事件が起こってくれると僕としては嬉しい。なんなら起こしやすくしても──」


 アイテールはそこで言葉を途切れさせる。テミスの絶対零度もかくやというべき視線に晒され、黙るほか無かったのだ。


「アイテール。わかってるわよね?」

「ははは、掟破りはしないよぉ……やだなぁ」


 睨みつけられ冷や汗を流しながら、アイテールは両手を上げて降参のジェスチャーをする。

 そのままアイテールはもう一度下を見て、テミスのほうへ笑ってみせる。

 それはもう、酷く嫌悪感を煽る笑みだった。


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