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46.魔法の練習

少し短めです。

 

 午後の実習は魔法の練習らしい。

 慎司達は昨日模擬戦を行った魔法練習場へ移動する。


 今回行うのは、基礎的な魔法の発現。

 これは適正属性ごとに別れて行うらしいのだが、慎司は全ての属性に適正がある。

 取り敢えず慎司は火属性の練習に参加するのだった。


「おし、んじゃ火属性の初級魔法。ファイアボールの練習を開始すんぞ!」


 火属性を担当する先生は見るからに体育会系の男だ。がっちりした体は、魔法使いというよりは冒険者や傭兵と言われた方がしっくりくる。


 そんな先生が、手本として自分の手のひらの上に野球ボール程の大きさの火球を生み出す。


「はい、これがファイアボールだな。取り敢えずこれぐらいの大きさに留めてるが、出来る奴はもっとでかくしてもいいぞ!」


 先生は生み出した火球を消すと、近くにあった椅子にどっかりと座る。


「よし、んじゃ始め!」


 先生の号令がかかると、周りの生徒が一斉に火球を生成し始める。


 ただ、ここで慎司の予期せぬ事態が起こった。


 全員が詠唱を始め、魔法を発現させた瞬間、彼らの手のひらに生み出されたのはかなり小さな火種。


 およそピンポン玉ぐらいの大きさだろうか。

 その程度がほとんどで、先生程の大きさの火球を生み出せたのは数人しかいなかった。


「……これ、そんなに難しいのか?」


 一先ず慎司もファイアボールを無詠唱で発現させる。


 生み出された火球の大きさはバスケットボール程の大きさ。

 見慣れた大きさのファイアボールである。


 しかし、周りの生徒からすればその大きさは規格外だ。

 皆火球の大きさに唖然としている。


「クロキ……お前、もっと大きくできたりするのか?」

「え?ああ……できますよ」


 先生がやけに真剣な顔をして聞いてきたため、言われた通りに今度は2回り程大きくする。


「さ、流石に限界か?」

「え、まだまだセーブしてますけど……あ、もっと大きくしますか?」

「いや、いい!」


 慎司が更に大きくしようとすると、先生が焦った様子で止めてくる。

 ちなみに、既に先生が生成できる限界の火球の大きさを1回りは上回っているのだが、それを慎司は知らない。


「なぁクロキ。お前今どこまで火魔法は扱える?」

「メテオフレイムぐらいなら扱えますよ」

「ぐらいってお前……それ上級魔法だぞ?」


 火魔法は初級の《ファイアボール》、中級の《フレイムランス》、上級の《メテオフレイム》が代表的な攻撃魔法だ。


 他にも攻撃魔法はあるが、全てを挙げるとキリがない。


 慎司が現在使える火魔法は、攻撃魔法が《ファイアボール》、《ブラスト》、《フレイムランス》、《フレイムジャベリン》、《メテオフレイム》、《ファイアストーム》の6つだ。

 支援魔法は《エクスパワー》が使える。


 それを先生に伝えると、顔を手で覆って頭を振る。

 なんだか呆れられている気がする慎司だが、気にしないことにする。


「流石に最上位は扱えないんだな、あー良かった」

「良かった、ですか?」

「おうよ、俺でさえ最上位を使うのはちょっとキツいんでな。これでクロキが最上位までポンポン使いだしたら俺の立場がねえよ」


 先生は呆れた顔で慎司に答える。


 火属性の最上位魔法は《メギドフレイム》と言い、莫大な魔力量と高度な魔力制御技術が要求される。


 それを、いくらSランク冒険者とはいえ魔法学校に入ったばかりの生徒が使えるとなると、いささか非常識である。


「先生は使えるんですか、最上位魔法」

「ああ、これでも火属性には自信がある。最上位魔法も使えるぞ」

「おお、それならこの学校にいれば安全ですね!先生が守ってくれるんでしょう?」


 慎司が軽い調子でそう言うと、先生は軽く慎司の頭を小突く。


「アホか。どれだけ長い詠唱が必要だと思ってるんだ。詠唱してる間にやられちまうよ」

「はぁ、そんなものですか……」


 先生は無詠唱でファイアボールを使っていたが、口振りから察するに最上位魔法は無詠唱では使えないのだろう。


 慎司には《無詠唱》のスキルがあるが、もしかしたら最上位魔法は詠唱がいるのかもしれない。


『シンジ、最上位魔法程度なら無詠唱で使うことは可能ですよ』

「あの、心読むのやめてもらえます?」

『シンジに必要かと思ったので……』

「あれ、拗ねてる?」

『私は剣、拗ねるなんてことはありません』


 アルテマが聞いてもいないのに情報を流してくる。

 それに反論すると、拗ねた様な反応を返してくるが、生憎と実体化していないので詳細はわからない。


「てか、最上位魔法程度なら……ってどういうことだ?」

『言葉通りの意味です。魔法には、異なる属性を組み合わせて合成魔法とする技法があります。さらに異なる魔法を連鎖させる魔法連鎖、それらを合わせれば最上位魔法よりも高威力の魔法が出来上がります』

「魔法って奥が深いんだな……」


 授業では習わない、アルテマ先生のありがたい魔法講義を聞き、慎司は魔法に秘められた可能性について考えていく。


 合成魔法。

 つまりは、風の上級魔法ウィンドストームに、火属性を合成して《ファイアストーム》といった所だろうか。


 魔法連鎖については、既に《ファイアボール》と《ブラスト》で使ったことがある。


 合成魔法の利点は、異なる属性の長所を加えられることだろう。

 《ファイアストーム》を例に上げるならば、風属性の広大な範囲で火属性の大火力が使えるという利点になる。


 対してその欠点は、組み合わせ次第では魔法が発現出来なくなる事だろうか。

 火と水なんかでは、それぞれの属性が反発して上手く魔法が発言できないだろう。


 魔法連鎖は、《ブラスト》のように至近距離にしか使えない魔法を《ファイアボール》に当たった敵に対して発動させることにより、短所を補うといった使い方が代表的だ。


 そもそも魔法連鎖というのは、Aの魔法にBの魔法を発動する条件付けをし、条件を満たした場合にBの魔法が発動するというものだ。


 アルテマのいう、最上位魔法を越える魔法というのは、最上位魔法どうしを合成し、それに高威力の魔法を連鎖させるという事だろう。


 確かにそれなら最上位魔法程度と言う気持ちも分からなくもない。


 慎司が魔法について考察をしていると、他の生徒を見ていた先生がこちらへやってきた。


「クロキ、火魔法の実演をやってくれないか?俺がやってもいいんだが、お前の実力を見ておきたい」

「はぁ、いいですけど。使う魔法は何でしょうか?」

「おう、ありがとな。使用してもらう魔法はフレイムランスだ。できるだろ?」


 先生はさらっと言うが、フレイムランスは立派な中級魔法だ。


「できますけど。無詠唱でいいですよね?」

「別に構わんが……お前無詠唱までできるんだな。なんでこの学校に来てるんだ?宮廷魔術師にでもなれそうだぞ……」

「それを先生が言いますか?」

「冗談だ。おーい、お前ら注目しろ!これから次の課題でもあるフレイムランスを実演してもらう!よく見ておけよ!」


 先生が大声で呼びかけると、各々練習を止めてこちらに注目する。

 火属性の魔法の練習に取り組んでいたのは約20人。その視線が一気に慎司に突き刺さる。


「んじゃ、やってくれ。的は……あれだな」


 先生は5メートル先にある藁人形を指さすと、始めるように言ってきた。


「……フレイムランス!」


 詠唱はいらない。

 荒れ狂う炎をまとめあげ、槍を形作る。

 頭上に掲げた手の先に生み出した槍を、慎司は藁人形に叩きつけた。


 炎の槍は火線を残し藁人形に飛来し、当たった瞬間に藁人形を跡形もなく吹き飛ばした。


「上出来だな……ちょっと威力が高すぎる気もするが」

「ありがとうございます」


 実演が終わると、集まっていた生徒は記憶に新しいうちにフレイムランスの練習を始めていく。


 中には既に槍を形成できている者もおり、この学校のレベルの高さを感じる。


『シンジ、威力をセーブしすぎでは?』


 慎司も練習に移ろうかと思ったその時、アルテマがそう言った。

 確かに慎司は今の実演で、本来の力の10分の1も出していない。


「いや、別にあれ以上の威力はいらないだろ?」

『ふむ……確かにそうですね』

「だろ?必要以上に威力を上げると疲れるからな」

『シンジはめんどくさがり屋ですね』

「そんなことは……ないぞ?」

『いいえ、絶対にそうです』


 慎司の言葉にアルテマがテンポよく返事を返してくる。

 抑揚のない声だが、その声に感情が乗っているように感じたのは、気のせいじゃないはずだ。





 結局めんどくさがり屋のレッテルを剥がすことはできなかった。

※矛盾を避けるため修正を加えました

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 前にファイアストームと ウィンドストームで中級魔法と 紹介していました。 修正をした方がいいと思います。 またウィンドストームという名称は風と風で 「頭痛が痛い」みたいな 感じがするの…
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