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20.魔剣アルテマ

累計PVが30万を超えました。ありがとうございます!

これからも頑張っていきます(小躍り)

 

 ドラゴン。

 強靭な鱗に包まれた巨大な肉体で、その大きな一対の翼を用いて悠々と空を飛ぶ。

 鋭い爪は大地を裂き、発達した顎は岩をも簡単に噛み砕く。

 お伽噺に出てくるような浪漫溢れる生物に会えるというのだから、慎司のテンションは急上昇であった。


「ご主人様、少しは落ち着いたらどうですか?」

「いやぁ、ドラゴンだぜ?無理でしょ」


 現在2人が歩いているのは、グリッドと話をした酒場から出てすぐの通りだ。

 依頼は明日の朝出発ということで、今は準備を整えるべく装備屋へと向かっている。


「ギルグさんの所へ行くのですか?」

「そのつもりだよ、そこしか知らないし」

「まぁ、かなり優秀なようですし。問題ないでしょう」


 ちなみに、慎司の左手はルナの右手と繋がれている。拒否する間も、与えられなかった。

 何か言おうと思って顔を見た瞬間、ニッコリと微笑まれ、何も言えなくなった。


 嫌なわけではないので、好きなようにさせていると、段々とギルグの店が見えてきた。

 近くまで来ると、ギルグの姿も見えるようになる。ちゃんと営業しているようだ。


「いらっしゃい!……てシンジと嬢ちゃんか。どうした、なんか用か?」

「ああ、ドラゴンを倒すことになったんでな。装備の新調をしにきた」


 ギルグは、慎司達の姿見ると親しげに話しかけてきたが、返ってきた慎司の言葉に目を丸くした。


「は!?ドラゴンだと!……お前ランクは?Eじゃないのか?」

「Bに上がった」

「おいおいおいおい……冗談はやめてくれよ」


 流石に話が突飛すぎたのか、ギルグは信じてない様子だったので、慎司はBランクの冒険者証を見せてやった。

 するとギルグは信じられないようなものを見る目で慎司を見た。


「まじかよ!?シンジ、お前何したらこんなことになるんだ……?」

「いやぁ、魔族を倒して回復魔法かけまくってたら、いつの間にか?」

「魔族ときたか!ハハハ……笑えねぇぞおい」


 話す内に段々とギルグの顔が曇っていく。ルナはうんうんと頷いている。

 かなり有り得ない話の様で、上手く現実を飲み込めないギルグであったが、そこは商人。

 気を取り直して商売を始めるのだった。


「んで、何を買うんだ?剣か、鎧か?」

「いや、剣ならある。欲しいのは旅の道具セットだ」

「ああ、ドラゴンってことは遠出するってわけか。ちょっと待ってろ」


 欲しいものを伝えると直ぐに奥に引っ込むギルグ。

 すると、傍らのルナが不思議そうに慎司に話しかけてくる。


「ご主人様、剣をお持ちだったのですか?」

「え、ああ……見せてなかったっけ?」

「ご主人様、殴ってばっかりでしたからね」


 そう、慎司は未だに魔剣アルテマを使っていなかった。身体能力だけで充分圧倒できたし、使う必要も感じなかった。

 ただ、魔剣を使ってみたい気持ちもあったので、今回のドラゴン討伐で使うつもりだった。


 そのため、ルナは慎司が魔剣を持っていることを知らなかったのである。


「この後、装備を新調したら軽く慣らしに行くから、その時に見せるよ」

「はぁ、わかりました」


 とは言っても、新調する程使い込んでる訳では無いので、実際の所は投擲用の投げナイフを買うぐらいである。


「おい、持ってきたぜ」

「お、早いな……流石だな」

「褒めても安くしねぇぞ、旅に必要なものは大抵入ってる。代金は銀貨10枚だ」

「はい、ギルグさん」

「ちょうどだな、毎度あり!」


 ギルグが戻ってきて、道具を受け取る。お金はルナが払う。

 ちなみに慎司は無一文である。ルナが財布を握っているのだ。理由は無駄遣いするから。

 ルナはお金の計算がすこぶる早いのだ……。


 投擲用のナイフを何本か買い、ギルグとの話もそこそこに慎司達は店を後にした。

 時間はまだまだあるものの、早めの行動を心掛け、明日に備えた方がいいに決まっている。


 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈



 今日も爽やかな北門の兵士に適当に挨拶をしつつ、北の森に向かう。

 いつも北門にいるような気がするが、非番の日はないのだろうか。


 森に到着し、慎司はアイテムボックスから魔剣アルテマを取り出そうとした。

 しかし、何故か取り出すことが出来ず、魔剣はボックスに収まったままである。


「あれ?おっかしいなぁ」

「どうしたのですか、ご主人様?」

「いや、魔剣が……」

『名前を、呼んでください……』


 その時、慎司の頭の中に声が響いてきた。

 いつも不思議に思っていたアナウンスと同じ声である。


「名前……?」

『私を、呼んでください』

「これ、アナウンスの……」

『呼んで、ください』


 頭の中に響く声はしきりに名前を呼べと言ってくる。

 ただ、慎司には名前がなんなのかわからない。

 声はルナには聞こえていないようで、こちらをみつめているだけだ。


「……あ、もしかして」


 慎司は、なんとなく答えを掴んだような気がした。魔剣をアイテムボックスから取り出そうとして、声は聞こえてきたのだ。

 それなら名前は……。


「来い、アルテマ!」

『その言葉を待っていました』


 慎司がそう叫ぶと、虚空に穴が空き、そこから剣の柄が現れた。

 慎司はそれを掴み、一気に引き抜く。

 いつか鎧を打ち倒した際に見た、輝かしい剣が慎司の手には握られていた。

 両手剣のため、片手から持ち直そうとすると、慎司の意思を反映したのか、片手で持つのに最適な大きさに剣自体が変わった。


「ご、ご主人様!?なんですかそれ!?」

「……魔剣です」

「すごいすごい!ご主人様は魔剣までお持ちだったのですか!すごいですぅ!!」


 ────ルナ、小躍り。


 小躍りするルナを尻目に、慎司は魔剣をしげしげと見つめる。

 意思を反映してくれたのか、それとも自動でそうなるのか。


『アナタの意思を汲み取り、具現化しました』

「ほあ!?」

『驚かせて申し訳ございません、私はアルテマと言います』


 なんとこの魔剣、喋るのである。

 慎司は思わず手を離しそうになる。


「アルテマ……さん?」

『アルテマ、とお呼びください』

「それじゃアルテマ、君は一体なんなんだ?魔剣に宿った意思って認識でいいか?」


 慎司は、どこかで読んだ小説に喋る剣が出ていたな、と思う。小説のタイトルは全く思い出せないが。

 それ故に、そこまで驚くことなく慎司はアルテマという存在を受け入れていた。


『はい、私は魔剣であり、魔剣は私です』

「あ、ふーん……」

『理解してませんね?』

「えっ、そんなこと……ないぞ?」

『まぁ、いいでしょう。私はシンジ、アナタの剣となるべく存在しています。故に私はシンジの思うままに従います』


 アルテマは、自己というものを慎司に事細かに説明してくる。

 よく分からない事も多かったが、大体は理解することが出来た。


「つまり、アルテマは放たれた魔力を吸収することができる。そして吸収した魔力は俺に還元するか、放出することができるってとこか」

『その通りです』

「ふーん、わかったぜ」


 ただ、この能力。

 完全に魔法使い殺しである。

 遠くから魔法を放っても剣に吸収され、接近戦では間違いなく勝ち目はない。

 手も足も出せずに完敗する未来しかないのだ。


「ご主人様、何をぶつぶつ言っておられるのですか?」

「え?あー、聞こえないのか」

『私の声はアナタにだけ聞こえます』


 小躍りを終えたルナからすれば、剣に語りかける変な奴に見えたことだろう。

 慎司は少し恥ずかしかった。


 取り敢えず、慎司はルナと共に軽く魔物と戦闘をしてみることにした。

 ルナの訓練も兼ねているが、一番の目的は魔剣の試し斬りである。


「さて、魔物は……」

『前方15mに一体の反応があります』

「え、わかるの?」

『私にとってこの程度、造作もないことです』


 アルテマのドヤ顔が浮かんでくるようだ。

 慎司はアルテマの言葉をルナに伝えて、前へ進んでいく。

 生い茂った木々が視界を邪魔するが、確かに15m程進んだあたりにゴブリンがいた。


『敵はゴブリン、シンジなら簡単に倒せるでしょう。勝率は100%です』


 アルテマは、慎司に対して情報を伝えてくる。ルナとは違う女性の声で、褒められると悪い気はしない。


  ────ルナは何故か魔剣を睨んでいる。


「ご主人様……その魔剣……」

「ル、ルナ!ゴブリンを倒してみるんだ!簡単だろう!?」

「……了解です」


 物凄い圧力と共に向けられた笑顔に恐怖を覚えて、慎司はルナへと戦闘命令をだしていた。

 試し斬りは、次に持ち越しである。


 ルナは、前回よりも更に速くなっていた。

 圧倒的なスピードの前にゴブリンは右に左に首を振るだけで攻撃できないでいる。

 そして、ゴブリンが背中を見せた瞬間、ルナはミラージュダガーを閃かせ、ゴブリンを背中から切り裂く。

 痛みに振り向こうとしたゴブリンを飛び越え、再び背後をとったルナは、着地と同時にダガーを脳天に突き刺した。

 落下の威力が上乗せされた一撃でゴブリンは絶命。

 ルナの戦闘力は格段に上昇していた。


「あれ、ルナあんな強かったっけ……」

『シンジのスキル、指揮の効果です』

「あ、なるほど」


 確かに慎司はルナに戦うように命じた。

 あまり強力ではなさそうなスキルだと思っていたが、想像よりも凶悪なスキルであった。


「ルナ、お疲れ様」

「ご主人様、何かスキルを使いましたか?今までよりも体が動きやすく、倒すのにどう動けばいいかまで分かるようになってるんですけど……」


 ルナの言った通りがスキルの効果なのだろう。慎司はスキルの事をルナに伝え、褒めてやる。


「スキルがあっても、ルナがちゃんと頑張ってきたからあんなに動けるんだ。流石だな」

「んっ……えへへ」


 そう言って頭を撫でてやると、ルナは尻尾をブンブンと振る。

 随分とわかりやすい反応である。


『シンジ、右からスライムが来ます』

「うん、俺にも感知できた」


 アルテマの感知できる範囲は、慎司の魔力感知よりも広いようだ。

 慎司は今度こそアルテマを試すべく、右にある茂みへアルテマを構える。

 1秒後、感知したとおりにスライムが飛び出てくる。奇襲を仕掛けようとでも思っていたのか、かなり勢いよく飛び出してきた。


『一撃で充分です』

「はっ!」


 慎司が剣を振るう意識を持った途端に、頭の中に幾多もの太刀筋が描かれる。

 その全てがスライムを絶命させる威力を持つのだ。

 慎司は袈裟斬りの要領でスライムを切り裂いた。


「なぁ、アルテマ。今のってアルテマの力か?」

『はい、私は持ち主が戦闘をする際に補助をさせてもらいます』


 どう斬れば効果的なのか、太刀筋が浮かんでくるのはアルテマのおかげなのだろう。

 かなりチートな武器である。


「他には何かあるのか?」

『一時的な脳の処理速度の加速と、実体化です』

「実体化?」


 処理速度の加速は、なんとなくわかる。大方動体視力が上がったり、時間の流れを遅く感じたりするのだろう。

 ただ、実体化については、よくわからなかったため、慎司は聞き返した。


『はい、実際に見た方が早いでしょう』


 アルテマはそう言うと、実体化とやらを行使する。

 慎司の持っていた魔剣が淡く光ったかと思うと、慎司の目の前には黒を基調としたゴシックドレスを着た少女が立っていた。

 髪の色は群青色、透き通るような白い肌に、宝石でも嵌め込んだかのような空色の瞳。

 歳は10歳程度だろうか、ルナよりは幼く見える。


「……これが実体化です」

「な、なるほど」


 声は変わらず、綺麗ではあるものの抑揚の無いものであった。

 感情の見えない美少女がそこにいた。


 ────ルナから何か黒いものが吹き出す。


 慎司はバッ!と勢いよく振り返る。

 するとそこにはよく分からないオーラを纏ったルナがいた。


「ご主人様、その女の子は……?」

「あ、僕の魔剣が女の子になったみたいです」


 慎司は、恐怖のあまり正座をする。

 逆らってはいけないのだ。最早それは嵐、過ぎ去るのをただ震えて待つのみである。


「ふーん、ほぉ……」

「なんでしょうか」


 ルナとアルテマは見つめあっている。

 火花が散っているようにも見えるが、気のせいだろう。


 ルナがオーラを引っ込めたのはそれから1時間後であった。


 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


 魔剣アルテマの試し斬りも終わり、ルナからも開放され、慎司は左手にルナ、右手にアルテマを連れてランカンへと戻ってきた。


 北門の兵士は爽やかに挨拶をしてくるが、慎司は少しやつれていた。


 空がオレンジ色に染まりつつある時間、美少女を2人侍らせた慎司はいろんな方向から殺気をぶつけられていた。

 アルテマは魔剣の状態に戻ればいいだけなのだが、何故か嫌がった。

 競うように手を取られ、がっしりと掴まれ今に至る。


「なぁ、2人と……」

「ダメです」

「いや、あの」

「お断りします」


 何を言ってもルナとアルテマは手を離さないのであった。


 宿に戻り、装備を外す。

 ポイポイとアイテムボックスに放り込んでいき、ラフな格好に着替えた後は、夕食である。


「アルテマって人間と同じものを食べれるのか?」

「はい、可能です。今の私は限りなく人間に近い存在ですから」


 どうやら、食事に関する問題はないようだ。

 夕食時に、ルナとアルテマが隣に座りたがったが、丸テーブルであったため、右と左に2人を座らせ、これまた殺気をぶつけられながら慎司は食事をするのであった。


 肉の入ったスープはそれでも美味しかった。


 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


 さて、就寝時間。

 お風呂はなんとか事なきを得た。

 具体的にはルナとアルテマを先に入れ、お互いがお互いを牽制している間に手早く済ませた。


 慎司がベッドで寝ると、一人分しか余らない。そのため、ルナとアルテマにベッドで寝てもらおうとおもったのだが、ルナがそれはダメだと言い出し、かと言ってルナとアルテマどちらかと寝るのもダメだと言われた。


「どうしてこうなった……」


 結果、ルナとアルテマは慎司に抱きつくようにして寝たのであった。

 柔らかい肢体が慎司に絡み、理性を削ってくる。


 慎司はアルテマの手前、ルナに何もすることが出来ず、ただただ我慢をするのみであった。


「ご主人様ぁ……」

「……ん、シンジ……」


 ただ、2人の美少女の幸せそうな寝顔を見れたことは、素直に嬉しいと思った慎司であった。

次はドラゴン退治に向かいます。

魔剣のアルテマちゃん。好きです。


お胸様は現在ルナ>アルテマとなっております。

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