155.それはとても不思議で
丁度いい切り方がわからず、短めです。申し訳ありません。
「それでは、式典での注意事項は以上となります。時間になりましたらお呼びいたしますので、こちらの部屋でお待ちください」
再建された城へと赴いた慎司たちは、仕立てのいいメイド服に身を包んだ女性に案内されるまま、客人をもてなすためと思われる部屋へと通された。
今回の式典には多くの人が集まるため、それぞれに注意喚起がされているようで、前にコルサリアのためとはいえ力を振るった慎司には、とりわけ注意がされているようだった。
「さて、時間までは暇になったな」
「暇じゃないです。ちゃんと注意事項を覚えてください」
お気楽な調子で構える慎司に、それを窘めるルナ。コルサリアと言えば、部屋に置かれている調度品などをじっと見つめている。
「うーん、まぁそうか。何かあって迷惑がかかるのは、フラミレッタ様だもんな」
「……ご主人様が、考えて行動を……!」
奴隷にしては不敬な物言いだが、そんなものは慎司は気にしていない。
ただ、自分を侮っているような発言にはお仕置きが必要だとも思うのだ。
「いふぁい!いふぁいでふ!」
「うるせぇ罰だ」
もちもちの頬を指でつまんでやり、縦横無尽に引っ張る。心地よい弾力と肌触りを堪能した慎司は、満足した顔で質のいい椅子に座る。
やや大きめの椅子には、あと1人ほどす座れそうではあるが、ルナもコルサリアも座ろうとはしない。
「……何してるんだ、2人とも?」
「いえ、べつに何も」
「そうですとも、何もしていません」
何もしていないと口を揃えて言うルナとコルサリアだが、その目からは鋭い眼光がお互いを刺し貫いている。
それはまるで牽制をしているようで、触らぬ神に祟なしと、慎司は知らない振りをするのだった。
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それから幾らか時間が経ち、早くも慎司が飽き始めていた頃。
ようやく迎えの声がかけられた。
「お待たせいたしました。シンジ様、ルナ様、コルサリア様。式典が始まりますので、ご案内させて頂きます」
ドア越しなのによく通る声でメイドが言うなり、慎司たちはそれぞれ身だしなみのチェックを軽くして部屋を出る。
「あぁ、式典が始まるな。1度終わって、新たなるスタートを切るってやつか」
「……何を言ってるんですか、ご主人様?」
「ん、いやいや……気にしないでくれ」
そうは言われても気になるのが普通だ。
ルナは疑問を頭に浮かべながらも、もうすぐ式典の会場に到着するとのことで、無理やりそれを頭の隅に押しやった。
暫くメイドに従って歩けば、大きな扉が目に入る。
慎司たちが式典の舞台────謁見の間へと続く扉の前にやって来る。
ガチャリ、とやけに響く音とともに扉が開き、修繕された部屋が顕になる。
「ようこそおいでくださいました。シンジ殿」
よく通る声で、フラミレッタが出迎えてくれる。
既に殆どの列席者は来ており、慎司たちは少しだけいたたまれなくなる。
それも一瞬、温かく迎えてくれていることに気づくと、3人で一斉に足を踏み出し────
────世界が凍った。