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123.ホントの気持ち

短めです

 

「ようエリーゼ。何落ち込んでだよ」

「別に、落ち込んでなどいませんわ」


 落ち込む、というよりは自己嫌悪に陥っていると言った方がしっくりくるのではないか。

 とにかくエリーゼは自分の行動を悔いていた。


 いくら不安や緊張に押し潰されそうになってたとはいえ、声をかけてくれた慎司に八つ当たりをしてしまったのだ。

 恥ずかしいという感情よりは申し訳なさが先立つ。


 そんな時にアレンが来るものだから、返事もぶっきらぼうなものになってしまう。

 本当は、もっと優雅に、華麗な自分を見せたいのに。


「エリーゼ」


 名前を呼ばれるだけで鼓動が早まる。

 最近、それもほんとにごく最近のこと。

 エリーゼは自分の気持ちの正体に気づいたのだ。


 始まりはいつだったのだろうか。気づけばアレンを目で追っていた。

 彼のする事すべてが気になり、声をかけられれば心が踊った。


 親しい友人と話すのが楽しいのだと思っていたが、影に飲み込まれたガレアスに2人で立ち向かった時に、気づいてしまったのだ。


 時間を稼ぐと言って猛然と立ち向かうその後ろ姿に、宣言通り時間を稼いだその手腕に、足止めに成功したエリーゼを褒めてくれたその声に、愛しさを覚えたのだ。


「なんですの?」

「どうせ後悔してるんだろ?シンジに酷いこと言っちまったーって」


 その言葉にドキリとする。

 なんでそこまで自分の事をお見通しなのだろうか。ついつい読心能力でもあるのかと疑ってしまう。


「そんな、こと……」

「あるさ。お前はそういうヤツだからな」

「……何が言いたいんですの?」


 言い切るアレンに、エリーゼは胡乱(うろん)な眼差しを送る。

 さっきから話が見えてこないのだ。


「そうだなぁ。取り敢えずエリーゼは考えすぎだ。誰だって不安な時はあるし、不満もたまる。シンジはあんなことで腹を立てるような奴じゃない」

「……それでも、自分が嫌になりますの。だって馬鹿みたいじゃないです?勝手に心配させて、心配してもらったら全部八つ当たりで吐き出すなんて」

「馬鹿でもいいじゃないか。俺は馬鹿みたいなことを許してくれる関係、好きだけどな」


 ニカッと笑ってみせるアレン。

 そのいつも見せる笑顔が、なんだかあまりにも普段通りで、エリーゼは毒気を抜かれる。


「……あなたのそういう所、嫌いですわ」

「えぇ!?なんでだよ!ここはいい雰囲気になるところだろ!?」

「そういう所は好きですわよ、アレン」

「えぇ……全然わからんぞ……」


 頭の上にクエスチョンマークを浮かべるアレンから顔を背けて目元を(ぬぐ)う。

 溜まった涙を払って、どこかスッキリとした顔でエリーゼは向き直ると、アレンに一言こう言った。


「ありがとうですわ、アレン」


 エリーゼにいつもの調子が戻ったことを確認して、アレンは優しく微笑む。


「どういたしまして」


 離れた慎司とリプルを置き去りにしてとっても、甘く、穏やかな時間が流れるのだった。

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