表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/163

12.決闘騒ぎと装備

たくさんのブックマーク、評価、感想をもらいとても嬉しいです。

これからも頑張っていこうと思いますので、応援いただけたらと思います。


思ったよりも話が長くなってしまったため、無双シーンまでいきませんでした。楽しみにして頂いていた方には、お詫び申し上げます。

 慎司は、絡んできた男たちを睨みつける。

 あまり強そうには見えないが、それは慎司が常識という枠組みから外れているからであり、周囲にいた冒険者は途端に騒がしくなる。


「何黙ってんだ、いいからこい!」

「……はぁ、わかりました」


 苛立ちを隠さず男は慎司を怒鳴りつける。一方慎司はというと、ルナが怖がっていないかどうかだけが心配であった。

 試しに男に鑑定を使った所、慎司が負ける要素は万に1つもなかったのだ。


「おいおい、あの新人も厄介なやつに絡まれたもんだなぁ」

「そうだなぁ、あいつCランクだろ?」

「そろそろBに届くって噂だぜ、まぁあの性格じゃ上がれないだろうけどな」


 絡まれた慎司たちが負けると思っている周りの冒険者は、遠巻きに成り行きを見守っている。


「よし、お前俺と決闘しろ。もちろん賭けるのはその奴隷だ」


 ギルドから出た大通り、男たち3人は不敵な笑みを浮かべながらそう言ってきた。

 慎司としては、できれば受けたくない。変なところで自分の力がバレてしまえば面倒事に巻き込まれることになるからだ。


「いやー、俺達みたいな新人とCランクのあなた方では勝負になりませんよ。無理に決まってます」

「ああそうだな、だからハンデをやるよ。俺を除いたこいつら2人は決闘には参加しない。そして俺は武器を使わない。これでどうだ?」


 慎司が適当に誤魔化して切り抜けようとすると、初めから取り決めてあるのだろう。男たちはハンデを言い渡してきた。

 ただ、ハンデをもらったところで決闘をするつもりは慎司には全くない。そもそもメリットがないのだ。大方相手は負けた時にお金を出してくるのだろうが、そんなものは後からどうとでもなる。

 相手の考えが読めない以上、ルナを失うリスクは避けておきたかった。


「ハンデをもらったところで互角にはなりませんよ、戦闘経験が豊富なら武器を使わずに相手を制圧する方法なんて幾らでもあるはずだ」

「ちっ、随分と口が回るようだな……めんどくせぇ。やめだやめ!お前ら行くぞ!」


 慎司がどうしても受けないというスタンスを誇示すると、やがてリーダー格の男は諦めたのか、子分を連れて去っていった。


「ふん……まぁこれからだ」


 去り際に聞こえた声が嫌に耳に残った。


 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


 男たちが去っていったとなり、取り囲んでいた冒険者たちは興味をなくして散っていった。

 不満を言っている者もいるが、ただの戦闘マニアかなにかだろう。慎司は気にせずルナに話しかける。


「あー、その。平気か?」

「はいっ、私は……ご主人様が前に立ってくれていましたので」


 慎司はその様子を見て安堵する。体の傷は治ったとしても、心の傷はまだ癒えていないはずである。こういった事でトラウマを思い出せば、今度は何が起こるかわからない。


「まぁ、あんなのは気にせず取り敢えずは依頼の準備をしよう」

「準備?ああ、ご主人様の武器ですね!」

「いや、俺のは既にあるけど……」

「なら防具ですか?」


 なんだか噛み合わない会話。慎司はルナの武器と防具を調達しようと思っているのだが、ルナは慎司が買うと思っているのだ。


「買うのはルナの物だぞ?」

「私の、ですか?奴隷に武器は持たせても防具を持たせる人は殆どいないのですが……」

「ルナだって、痛いのは嫌だろ?」


 ルナは奴隷に金をかけるなんてとんでもないと言うが、慎司は自分よりはルナの防具を優先したいぐらいである。

 ルナは奴隷と言ってもまだ小さな女の子であることに変わりはない。そんな子に防具もなく戦闘させるなど慎司自身が許せない。


「ま、いいから行くぞ」

「しかしですね、ご主人様……」

「俺がルナに怪我されたくないの!いいから行くぞ!」


 渋るルナの手を引いて慎司は武器防具屋へと向かう。資金ならたっぷりある。足りなくなったら適当な魔物でも狩ればいいだろう。


「いらっしゃい!今日は何をお求めで?」


 店を覗くとすぐに店主が声をかけてきた。髭を生やした顔は少し怖いが、淡い緑色のエプロンがその印象を和らげていた。


「えっと、この子に合う武器と防具を頼みたいんですが……」

「予算はどのくらいで?」

「銀貨50枚までなら出します」

「ご主人様!?」


 大金をポンと予算として出すという慎司にルナは驚きを通り越して、少し怒ったような表情を見せた。

 ルナ曰く、奴隷にはせいぜい安物の品を持たせる程度なのだとか。

 ただ、そんなことを言われても慎司は意見を変えるつもりは無い。ルナには怪我して欲しくない、その言葉に嘘はなかった。


「ふーん……狐の嬢ちゃん、大切に思われてるんだな。よし、奥に取りに行ってくるからちょっと待っててくれ」

「構いませんよ」


 店主は、意外そうな顔をしたと思うと何か言葉を飲み込み、奥へと引っ込んでいった。

 すると、後ろにいたルナが慎司に話しかける。


「ご主人様?ご主人様は、ご自分が何をなさったか分かってるのですか?」

「あ、ああ……わかってるつもりだけど」

「いいえ、わかってないです」


 詰め寄ってくるルナは、以前までの遠慮等感じさせない様子だ。その剣幕に押され、慎司は後ずさる。


「そもそもご主人様は常識外れな行動をしすぎなんです!私は奴隷なのですよ?普通はここまでしませんよ」

「それは、ほら。俺って常識破りな人間を目指してるから?」

「むぅ、そういう事を言ってるんじゃないです。いいですか、まずですね……」


 その後、ルナによるお説教は店主が戻ってくるまで続いた。既に言ってしまった事なので今回の予算は変えないが、次からは買い物をする際ルナに予め相談をするようにと約束させられてしまった。


「さて、狐の嬢ちゃんは小柄だからな。でかい武器は扱えねぇ、という訳でだ。俺がオススメするのはこのダガーだな」


 慎司は店主が差し出したダガーに鑑定を使う。


 《ミラージュダガー》

 レアリティ5

 魔力を込めることによって切れ味が上がり、刀身がやや伸びる。


「……いいダガーじゃないか」

「お?なんだ兄ちゃんにもわかるかい?このダガーはな、ミラージュダガーってんだ。魔力を込めれば切れ味が増す上に、リーチも伸びる優れものだ」

「そんな凄い装備が……!」


 慎司がダガーを褒めると、店主は嬉しそうに説明をしてくれる。鑑定の効果とも食い違いはないし、今後ともこの店主とは仲良くしていきたいと思った。

 常識外れな慎司を、足元見ずに接してくれているのだ。信用してもいいだろう。


「値段はどのくらいです?」

「そうだなぁ、銀貨30枚でどうだ」

「買った」

「よし、商談成立だな。なら次は防具だな」


 こんなダガーが銀貨30枚で手に入るとは思わなかった。ルナも文句を言ってこないから適正か、むしろ安いぐらいなのだろう。

 そして、次に見せられた防具もまた、優れた性能のものであった。


 《ファングベアーの革鎧》

 レアリティ3

 ファングベアーの革を使った鎧、耐刃、耐衝撃に優れている。


「ほう、これはまた……」

「おお、わかってるねぇ。こいつはファングベアーの革を使った鎧だ。鉄製の重い鎧じゃ狐の嬢ちゃんは動けなくなっちまうからな!こいつは銀貨20枚でどうよ?」


 慎司は値段の安さに目を見張った。ダガーで銀貨30枚も安かったが、この鎧もかなり安い。

 思わず慎司がルナの方を向くと、ルナも驚いている様子だ。


「いいのですか?もう少し高いですよね、これ」

「そう言ってくれる奴にならこの値段で売ってやれるさ。近頃は性能も分からず値段の高さだけで選ぶバカが多いからな。見極めのできない奴にはふっかけてるから、倒産なんてしねぇから安心してくれ」


 どうやらこの店主、かなり自分の商業に魂を込めているようだ。鍛治職人が自分の作品に愛着を持つのはよく聞くが、使われる道具に対して向き合っている者はそういないだろう。


「それならありがたく買わせてもらいます」

「はいよっ!ちゃんと使ってやってくれよな!」

「任せてください」

「ご主人様?これ私のですよね?」


 意気投合する慎司と店主に、ルナは置いてけぼりなのであった。

 店を出る時に、店主は一つのメダルを投げて寄こしてきた。お守りらしい。


「兄ちゃん、俺の名前はギルグだ。またご贔屓に頼むぜ。狐の嬢ちゃんも、何かあったら尋ねてくれて構わねぇからな」

「ギルグ、覚えました。お守りありがとうございます。また寄らせてもらうますよ」

「ギルグさん、ありがとうございました」


 ルナを見て絡んでくるような下衆な男もいれば、ギルグのようにいい奴もいる。

 慎司はそのことに気分を良くしながら、買った装備をルナに渡す。


「よし、今から薬草採取の依頼に行くぞ。これを装備したら出発だ」

「はいっ、ご主人様!」


 お説教をしてくる程度にはルナは気を許してくれている。今だって笑顔で受け答えをしてくれた。慎司は、この笑顔が翳らないようにしよう、と思ったのだった。


 装備を確認して、慎司はルナと共に北門に向かう。北門の兵士は今日も爽やかである。


 ルナと共に通った北門は、1人で通った時よりも、狭く感じた。それが、新たな1歩を踏み出したようで嬉しく感じた慎司だった。

ちなみに、Cランクとなるとそれなりに実力も備わっています。新人ではまず勝てないでしょう。

まぁ、慎司なら瞬殺できるんですが……


※誤字の修正をしました


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ