孤児院
奥に案内されたイーリス達は食堂のような場所で話をすることになる。
「院長と他の子を呼んでくるので待っててください」
それから数分程経ったころに、50~60代といったところの中年の女性とヴェラ姉と呼ばれていた彼女と同じ頃合の女性が2人ほどやってくるので、お互いに自己紹介を済ませてから、今回の経緯について院長と話し始める
「その、本当にルイに30万ユノをあげたんですか?」
「本当ですよ。」
「立ち振る舞いや従士様を見る限り高位の貴族様とお見受けしますが、申し訳ありませんが我が孤児院は見ての通りかなりギリギリで、30万ユノに見合う対価というのは…」
「いえ、私達はただの旅人ですよ。それに対価なんて求めていません。」
「どういうことでしょうか?」
「私のしたいようにしたかった。ただ、それだけです。この前もこの先も同じような事をしてきました。それをここでも同じ事をしたというだけです。」
「なんと寛大な心をお持ちの方でしょう…その、是非ともお礼をしたいのですが…」
「何だかそれはこそばゆいのでお礼なんて気持ちで大丈夫…と言いたいところですが、実は今日の昼は食べていないんです。なので、ここの子達と一緒の食事が対価という事でいいですか?」
「そ、それだけでいいんですか?」
「勿論です。賑やかな食事というものはとてもいいものですから!お願いしますね?」
「わかりました!それでは精一杯作らせていただきます!」
その後院長とヴェラ、修道女性の3人が食事を作る間に子供達と戯れることにする。全員かなり幼く、一番の年長で14歳だろうか?
「ねえねえ!イーリスお姉ちゃん!どうしてそんなに綺麗なの?」
「ふふっ、ありがとね?それはヴィヴィアンが毎日身だしなみを見てくれるからですよ。」
「へぇ~」
「じゃあ、ヴィヴィアンお姉ちゃんもすっごく可愛いけど、同じように別の人に見てもらってるからなの?」
「いえ、私は全て自分自身で行っています」
「あれ?自分でやってもそんなに可愛いのなら、イーリスお姉ちゃんはなんで他の人にやらせてるの?」
「(うぐっ…流石子供だぜ、痛いところを平気で…)じ、自分でやるよりもヴィヴィアンにやってもらった方がとっても綺麗に仕上がるからですよ。」
「そうなの?いいなぁイーリスお姉ちゃんは…私の髪の毛なんてボサボサだもん…」
「俺らは気になんないけどな」
「ルイ達はそうだろうね~」
「ね~、憧れちゃうなぁ」
そう呟く彼女は自分の髪の毛を手繰り寄せては枝毛だらけな髪の毛にため息をついている。幼く、貧しくとも乙女なのだろう。
「そうですね…それじゃあ今日はお姫様にしてあげましょう!」
「どういう事?」
「ここってお風呂はありますか?」
「昔使ってたのが残ってるよ!」
「よし…それじゃあ、お昼ご飯を食べ終わるまで楽しみです!いい子に待っててくださいね?」
「はーい!」
待つこと数分…様々な食事が出されるが、孤児院の子達の反応がとても大きい。
「あれ!?今日は凄い豪華だ!」
「やったー!!」
「なんでなんで!?」
「ふふっ、今日はイーリス様のおかげですよ!感謝の気持ちを込めていただきましょうね!」
「それではいただきましょう…メエルーン様、そしてイーリス様に感謝を…」
院長が席に着き、一斉に食事の礼をする。所作は違うがクレイ帝国と同じ様にこちらでも食事の礼をするようだ。イーリスも普段と同じように手を合わせるが、何故かヴィヴィアンだけが少し隠れてアズラ教のお祈りをしていた。
更に、食事が始まったというのに何故か子供達は誰一人として言葉を発しない事に疑問を思いつつ、食事を終えた後になってヴィヴィアンから小声耳打ちをされる
「(メエルーン教の信者は信仰の深さに関係なく全員無言で食事を取らないと、天罰が下ると信じられているので、食事中は会話がありません。ですが、アズラ教は食事の時は逆に信者同士の親交を深める機会の場として教えられているんです。他にも全く真逆の考え方が多いのでメエルーン教上層部はアズラ教を敵視しています。その為に念のため所作は隠れておこないました。)」
「(なるほど…宗教面でも対立しているんですね…)」
すっかり陽も落ちた頃にお風呂場に案内されたたイーリスはさっそく魔法を唱える。するとお湯が現れるので、それを一気に溜めていく。
「こ、これは…!」
「少し早いですがお風呂ですよ、貴女達もしばらく入れてないでしょう?存分に洗ってください!」
「え、ええ…!ありがとうございます!
「私は入れないのでヴィヴィアンはお手伝いお願いしますね?」
「かしこまりました」
男の子達は女性の後に入る事になったので、先にお風呂場ではしゃぎまわる女の子達を抑えるが修道女性達も久々のお風呂に舞い上がってしまい、やや暴走気味になるのをヴィヴィアンが落ち着かせてから旅用にインベントリに持ってきていたシャンプー、リンス、そしてイーリスによる回復魔法で荒れていた肌などの修復を行うと、見違えるように綺麗になっていく。
「すごいすごい!髪の毛がさらさらだー!」
「ヴィヴィアンお姉ちゃん洗うの凄く上手いね!とっても気持ちいいよ!」
「こんなに大量のお湯を使って洗ったのなんて何年振りかしら…私でも髪の毛ってこんなに綺麗になるんだ…肌もカサカサだったのに何かぷにぷにしてる…」
見違えた自身の姿が信じられないと言わんばかりに髪の毛や肌をいじくりまわし、見惚れているが、今まで女性らしい事が全くできていなかった彼女にとっては当然の事だろう。
「ヴェラ様は特にお美しい方です。身だしなみをキチンとして女性らしさを出すのをお勧めいたします」
「え、えぇ…髪の毛を梳いたりするくらいはした方がいいわね…」
「ねーねー!イーリスお姉ちゃんは?」
「ヴィヴィアンお姉ちゃんと一緒に入るのも楽しいけどイーリスお姉ちゃんとも入りたい!」
「イーリス様は入るに入れない事情があるので難しいですね」
「え~!なんでなんで?」
「こら、あなた達、ヴィヴィアン様が困ってるでしょう?やめなさい」
「ちぇ~」
その後、ヴィヴィアンと共に宿屋へと戻る前に更に院長に50万ユノを渡すと、当然断られたが、今日の事はそれだけの価値があり、同時にこの子達はまだまだこれからがある。投資の意味として受け取ってくださいと伝えると、渋々ながらも受け取ったのを確認してから宿屋へと戻っていく。
「とても賑やかな所でしたね」
「あのような場所は非常に癒されます」
「そうですね…おや?」
宿屋へと向かっているとルイと呼ばれていた30万ユノを渡した子がイーリス達の前に飛び出す。どうやらここの住人ゆえの近道を使って先回りしていたようだが、顔はりんごのように真っ赤に染まり、その表情は力んだ表情になっていた。
「きょ、今日は…ありがとな!その、お風呂凄く気持ちよかったし…あんなにおなか一杯食べたのは初めてだった!ま、またっ…きてくれ…」
かなり恥ずかしいのか途切れ途切れながらもイーリス達をしっかりと見て礼をするルイに微笑みながらしゃがみこみ、かなり近い位置まで顔を近づけるイーリス。
「くすっ…お礼は言わないんじゃなかったんですか?」
「う、うるせえ!人のお礼は素直に受け取れって…!」
「ふふふっ、お顔真っ赤ですよ?どうしたんですか?」
「…ッ!ち、近寄るなよ!」
「(なんだこの可愛い生き物…ショタに興味はなかったが、これは可愛過ぎるだろ…よし、特別サービスだ!)ほーら捕まえた。」
「う、うわぁっ!?」
たじろいでいる彼に不意を突いて抱きしめて、優しく語りかける
「…貴方は最初私にスリをしようとしましたね?」
「そ、それはッ…(な、なんだこれ…すっげえ安心感が…女の子ってこんなに柔らかくていい匂いがするのか…)」
「生きるために仕方のない事…それはわかります。それでも貴方が犯罪を犯す事に孤児院の子達は喜びますか?」
「…ッ」
「喜ぶわけないですよね?あの子達を喜ばすためにしていたことなのに、それでは意味がありません。だからこれからはもう二度とそんなことをしないって誓ってください。そうじゃないといつまでも抱きしめちゃいますよ?」
「わ、わかった!に、二度としねえ!しないから早く離してくれ!!」
「本当ですね?」
「あ、あぁ本当だ!そんな事は二度としないってメエルーン様とイーリスに誓うよ!」
「よろしい!ほら、お望みどおりにしますよ。それじゃあおやすみなさい。」
「あ……お、おう!!」
「おやおや?どうしてそんなに寂しそうなんですか?よかったらこのまま抱っこしながらヴィヴィアンと私の川の字で一緒に寝ますか?」
「えっ!?……じゃなくて!もうそんな歳じゃねえ!じゃあな!!」
「ふふっ、おやすみなさい。…本当に可愛らしい子ですね」
「イーリス様も本当に…」
「どうしました?」
「ッ!いえ、なんでもありません」
「…?」
疑問に思いつつも宿屋へと戻り、眠りに就くだった
登場人物多過ぎなので今度人物紹介を作ろうかと思います。
モブはなるべく3人称で表現したいですね…でもあんま多用するのと不自然さが残ってしまいます…頑張りたいです




