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ただし中身は男である。

リメイクしました。新作のネタバレを防ぐ為にこちらではなく、そちらの方を読んでもらえるとありがたいです。



 都内の某所…そこにある某大学へと通じる道を歩く一人の男が居た。


(ふわぁ…レポートに追われて1週間くらいゲームできなかったからその反動でつい2徹してしまった…しかも1限提出とかないわ…あのクソ教授はそんなに俺に単位を取らせたくないのか?)


 猶予を持って設けられた期間(例外もあるが)までにレポートに手を出さずにゲームにハマっていた彼の完全な自業自得なのに何故か他人のせいにする彼の名は「黒川彰人」(くろかわあきと)

中肉中背、そして並みの顔に頭も並みなので、中堅大学に通うまさに何から何までその辺に居る量産型文系大学生の二年生だ。


 基本的にはインドア系大学生なのでオンラインゲームやアニメなどを好み、自室の棚には長らく買い込んだ大量の漫画やゲームのパッケージがぎっしりと詰まっている。

…なお、その奥には人には見せれないピンク色の漫画やゲームのパッケージなども詰まってたりする。

家は一人暮らしのアパートなので止める人が居ないために、そのまま徹夜をしてしまったようだ。


(着いたら寝よ…単位稼ぎの為の講義なんて聞いてらんねーしな)


 果たして何のための講義なのか?そんな事を考えながらスマホを取り出し、歩きながらスマホゲーやSNSをやりながら大学に向かっていき、青になった横断歩道を渡っていると、ふいに何か大きな物が視界の端に映る。


(・・・?なんだ?)


 疑問に思ってそちらに目を向けると、巨大なトラックがこちらに向かってきていた。

 しかし気が付くのがあまりに遅過ぎた…認識した時にはすでに彼は跳ね飛ばされてそのまま意識を失うのだった。

 もし、彼が徹夜をせずに普通に寝て起きていたら、もしいつもの癖で危険な歩きスマホをしていなければ…警察に追われ赤信号を無視して猛スピードで走るトラックを確認して轢かれていなかったであろう…

 もしくは誰かがその場に居合わせていれば助かっていたかもしれないが、もう全ては後の祭りである。


――――――――――――――――


(…うん?あれ…?俺何してんだ…?)


 次第に意識が覚醒していき、目を開けていく。

 そこは全く身に覚えのない場所だった。


(…どこだここ?湖の畔か?こんな大きな湖と木に囲まれた地形なんて近所にはなかったぞ?いや、そもそもなんでこんな所に俺は…?…そうか!徹夜で書いたレポートを大学に届ける途中で確かトラックが来てたのはわかったんだが…うーん。その先が全然思い出せん。にしてもここどこだ?)


 寄りかかっていた木から立ち上がりスマホで現在地を確認をしようとしてズボンを探ろうとした所でようやく自身の姿の異常に気が付く。


(あれ?ズボンがな………)「えっ?…んん!?!?」


 ズボンではなく何やら女物の服を着ている事に驚き、声を出したところでさらに驚く。


「な、なんだこの声と格好は…いや待て待て待て、なんか凄まじく嫌な予感がするぞ…」


 すぐさま自分の今の格好を見るために湖面へと駆け寄るとそこには今まで見たことの無いほどの美女が自分を驚愕した顔で見つめていた。


 スッと通った鼻筋、整った眉に燃えるような真紅の瞳に切れ長ですこしクールな印象を与える目付き、薄く、ほのかなピンク色の瑞々しい唇と腰下までかかる長く綺麗な髪は透き通るような銀色をしていてとても美しい。

着ている服は袖のないワンピースに分離振袖が付いている組み合わせで、露出した肩からは白く透き通るような肌が太陽に照らされて眩しく輝いている。

そして、極め付きはその背中から生える大きく白い翼で、その見た目はまさしく天使といったところだろうか?

ちなみに胸の部分だけは並みより少し大きめ程度のようだ。


「この格好って完全にこれイーリスだよな?何がどうなってるんだ一体…」


 完全に混乱している彼だが、自身の格好には身に覚えがあった。

それは彼が今日徹夜でやっていたゲームのキャラである。


「つまりここの世界は日本じゃなくてズワールト オブ アディガマーの世界だって事か?冗談じゃねーぞ」


 ズワールト オブ アディガマー(略称ではアディと呼ばれているのでこの先もアディと呼ぶ)はMMORPGとしては非常に有名なゲームである。

すでにサービス開始から3年が経過しているので数百万人が登録をしてプレイをしているが、アクティブユーザー数(実際のプレイヤー人数)もその半分近くを占めると言われるほどの人気ぶりだ。


そんな彼もこのゲームにハマッていて、プレイヤーとしては中々の古参なので位置付け的には上の中といったところだ。

上の中というと中途半端にも聞こえ勝ちだが、それでも全プレイヤー数の2%しか居ないので十分廃人レベルと言えよう。


 そして何故彼の背中から翼が生えているのか?それは「天人族」と呼ばれる種族だからだ。

このゲームは最初人族、妖精族エルフ、獣人族、小人族ドワーフの4種族しか選べないが課金ガチャを回すことで極低確立(200万分の一)で課金種族というのを手にすればその種族を選べるのだ。


 彼はそれをたった30回で引いてしまい、狂喜乱舞した彼はすぐさまその新しいキャラを作成して育成しまくった結果、最初に作ったキャラを超えるキャラとなっている。


「はぁ…いや、常々イーリスになってアディを旅してみたいなー。とかもし女性に生まれ変わるならイーリスがいいなー。とか思ってたけどさぁ…まさか本当になるとは思わなかったよね?それにゲームの世界に転生?するなんてラノベかよ。」


 キャラクリエイトに一週間かけて作った彼の自慢のキャラはまさに絶世の美女とも言うべき見た目になっている。

そして、今までにないくらい自キャラに愛情を注ぎまくった結果、所謂重度の自キャラ可愛い病に罹ってしまっていて、その愛情は装備の性能よりも見た目を重視した装備にするほどである。


「どうすっかね…確か昨日は狩場から帰還して街でログアウトしたはずなんだが…明らかにここ全く別の場所だよな?いや、格好がイーリスなだけでアディじゃない可能性だってあるんだよなぁ、う〜む…」


 次第に落ち着いてきた彼は自分の現状について考えるがさっぱり検討もつかない。


「出た場所が森のど真ん中じゃなくて湖の近くってのは不幸中の幸いだな…少なくともここを拠点に辺りを探索できそうだ。あ、まてよ?俺が今イーリスになって装備もアディの頃と同じならアイテムもあるんじゃ!えっと…どうやって出すんだ?…うぉっ!?」


 アイテム欄をどうやって出そうか考えていると、アイテム欄に入っている一覧の情報が突然頭の中に浮かんでくる。


「お、おぉ…なんという便利…いやご都合?というかここまで来たらもう夢の範囲超えてるな。なんにせよ都合いいからいいんだが…おっ、ちゃんと愛用の聖剣も入ってるな。デーアピース(今来てる服)だけ装備してたから少し不安だったんだがよかったよかった。」


 等と考えながらアイテム欄を見るとどうやら一部を除きアディの頃のままのインベントリのようだ。

そしてその無くなった一部のアイテムが…


「蘇生ポーションがない?課金アイテムの身代わり人形(自動蘇生)まで無くなってるぞ!これは…死んだら終わりってことか…?」


 そう、どんなゲームにも必ずと言っていいほど存在し、同時に必須のアイテム、蘇生系アイテムがないのだ。


「これは…ゲームと違って現実では命は軽くないってことか…まぁそりゃそうだよな」


 他にも減っているものがないのか確認をしてみるが、特に変化はないようで一安心する。


「次はそうだな、魔法はやっぱ使えるのか?…聖騎士パラディンだから聖魔法なら結構使えるしやってみるかな。」


 アディにはジョブシステムがある。まず4つの基礎職である戦士ウォリアー狩人アーチャー魔道士メイジ+生産職である鍛冶師スミスの4つに分けられており、レベルが上がる時に手に入るSPスキルポイントを使用してスキルツリーを強化する。そしてそのツリーの強化具合と強化傾向によって決められた上位職へと転職する事が可能となる。


 そんな彼は廃人プレイヤーだったので当然の事ながら進める事が可能なスキルツリーは全て進めており、彼の場合は前衛にも中衛にもなれる聖騎士パラディンになっている。

逆にいってしまえばどっち着かずの器用貧乏なので装備、PSプレイヤースキルが両方備わっていないと最弱職とも呼ばれるので上級者向けの職業と呼ばれている。


「とりあえずホーリーアローでも使うか?でもどうやって出すんだ?ゲーム時代はショートカットキーとマウスによる自動使用だったからなぁ。待てよ?アイテムみたいに思い浮かべたら…来た!」


 ゲーム時代に使用していた魔法レイウアウトを思い浮かべるとアイテムの時と同じ用に頭に思い浮かんでくる。

さっそくゲームの時と同じように腕を真っ直ぐに伸ばしてから、ホーリーアローを使用する。と念じてみる。

すると、何かが体の中を駆け巡る感覚が起きるのと同時に足元に魔法陣が一瞬にして浮かび上がり、イーリスの後ろ両肩あたりにも現れた4つの魔法陣から光の矢が出現した後に目にも留まらぬ速さで突き刺さる。


「うおおおお!!これはすげえ!!ゲーム時代のと全く同じだけどリアルで見るとめっちゃかっけえな!!使用した時のあの感覚は魔力が抜けた感覚か?何かディスプレイで見てたときより派手な気がするが…クールタイムも同じくあるみたいだな。」


 彼が使用した魔法は初級魔法なのでクールタイムは1秒となっている。

初級、下級、中級、上級、最上級と分別されていて最上級クラスの魔法にもなると強力な分クールタイムは40秒を超えてしまう。

数字だけで見ると短いように思えるが1分1秒の差で自身の生死を分ける事となる場面は非常に多いので、最上級魔法の使用タイミングはプレイヤーの強さへと直結することになる。

勿論これらは素の状態でのクールタイムで装備に付与される特殊能力エンチャント等で前後するので一言で言える訳はない。


「蘇生ポーションがないってことは蘇生魔法も使えなくなってんのかな。まぁ、白魔道士クレリックじゃないから元からできないけど…さて、どうしたもんかねぇ、格好がイーリスだからアディの世界なのは間違いないんだし、適当に探索していれば身に覚えのある場所に出るかな。」



「あ、せっかくだし飛べるかどうか試してみるのもよさそうだな。今気づいたけど不思議と翼の感覚は違和感なくあるしなー」


 しばらく翼を動かして感覚を掴んでからさっそく飛ぶ練習をする。


「よし…そろそろいけるか?…ふっ!おぉ!!こりゃすげえな!!」


 ぶっつけ本番だったのにも関わらず自然に飛べた事に驚くのと同時にその感覚、光景にも感動と驚きを感じるのだった。


「うおお!これは癖になるな、まさに風になったような感覚だ。これはたまらん!!」


 こうしてしばらく湖がすぐ目に入る範囲内で飛行すること30分。飛行速度もかなりのスピードを出せるところまで慣れたところで少し湖から離れて探索を開始する。


「う~ん見渡す限り森って感じだな~、湖が見えるギリギリまで行ってみるか」


 そう決意をして更にスピードを出して飛行すること10分。だんだん森の密集度が下がってきたところで不自然に木がないところが一本道のように続いている。明らかに人工物、それも街と街を繋げる街道のようだ。


「おっ、あれは街道か?よっしゃ!これで街道沿いに飛べば街に…ん?あれは?」


 街道を見つけて喜んでいると何やら爆音が聞こえてきた方向に目線を移動させると人影が見えたのでそちらに向かって着地しようとするも何やら様子がおかしい。


「あれは…襲われているのか?明らかに熊っぽいのに追いかけられてるよな…助けに入ったほうがいいのかなぁ。」


 悩むのには訳があった、MMORPGには相手の獲物を横取り、横殴りして経験値等を得るのはマナー違反とされている。その為相手が追われているのも単純に戦いやすい位置に誘導しているだけの可能性もあるのだ。

しかしそれならばその誘導する位置に何人か待ち伏せをしているはずなので、その人影が向かっている方向の辺りを見てみるもそれらしき人物はどこにもいないようだ。

しかもよく見るとその追われている人物達の様子も本当に追われているようで非常に焦っているのが伝わってくる。


「いや、これはマジで追われているな、ここはいっちょやりますか!」


 この世界に来てからはまだ1時間程しか経っていない彼は心の奥底にあるゲーム感覚というのを捨て切れていないようで、その場へと突っ込んでいってしまうのだった。

良い子は危険なので歩きスマホはやめましょう!実際に自転車に轢かれた作者とのお約束だよ!主人公みたいに車だったら…って思うと生きた心地がしませんよ!

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