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神曰く

――――何があったし。

 『魔法使い』の少年、コノハは目を覚ましてまず、そう思った。

 自分が大きな怪物を魔法で倒したことまでは覚えている。魔力を生成する土地で加減が解らず大量に魔力を使ってしまったのだから、倒れるのも仕方ないだろう。しかし、

「うーん……それ私のだから…………奪ったらその命ないと思え」

 目が覚めるとそこは女の膝の上だった、というのは予想外過ぎた。

 服装から先ほど飛びついてきた女ということは分かるが、幼少期から魔法にしか興味がなくこういうイベントでフラグが立っても無意識に折っていたためかこの状況に対してどう思えばいいのか分からない。

 コノハはしばらくの間体を硬直させて必死に頭を捻っていた。そして、たっぷり一分間考えた末、起きたのに寝転んでいるのはおかしいなというごく普通の結論に達した。

 なぜこの考えに至るまで一分掛かったんだと思いながらも体を起こす。昨夜は真っ暗で何も見えなったが、今は明け方らしく薄暗いながらも周りを見渡せるくらいにはなっていた。

(岩と砂しかないな……ここは本当に砂漠ということか)

 目の前に広がるのは、昨夜魔法で出した火の玉の明かりで想像した通りゴツゴツした岩と乾いた砂。立ち上がって辺りを見渡と自分の知ってる正装に近い服を着た男と女に、つい先ほどまで自分に膝枕していた女が目に映る。

 この世界に強制的に飛ばされたこともこの面子にも疑問しかない。どうしたものかと顎に手を当てて考えていると、ふと世界の温度が、気圧が、ナニかが変わった。


―――――やあやあやあやあやあ!!おはよう諸君!


 鼓膜が破れるんじゃないだろうかというほどの大きな声が聞こえた。咄嗟に手で耳をふさぐが、頭の中に直接流れ込んでくるので意味がない。岩にもたれて眠っていた女と正装(?)の女がかなり驚いた顔で飛び起きた。彼女たちにも聞こえたらしい。


―――――おやおや??まだ眠っていたのかい!?夜明けに来ると言ったのに!寝坊助だねえ!

「う、うるさい……!」

「頭がグワングワンする……」

 顰め面をするが声の主はおかまいなしに二人が寝ていたことへの文句を言う。

―――――うるさい?当たり前だよ!さあさあ説明タイムだ!とか思ったらまだ寝てんだもん!これは出来るだけ驚く方向で起こさなきゃて使命感に燃えるじゃん!鼓膜が破れる心配はいらないよ?優しいからね!神は!体に負担なんかかけずとも……

「ま、まて!お前……今、『神』って……」

 大音量で苦しみながらも一応話を聞いているとすごい単語が飛び出した。俺のいる世界にとって『神』とは自然を生み出し、動物を生み出し、魔法を生み出した絶対的な創造主だ。この意味の解らない事態の原因がその『神』ということがあるのだろうか。

――――――ああ、そっかーコノハくんとこは色々じかで創ったから神はすごい大きな存在なんだったね!まあ、あの世界は手込んだからなー込み過ぎてコノハくん連れ出すのめっちゃ難しかったよ!あ、そうだ!みんな自己紹介した?してない?まあ、ずっと見てたから知ってるけど!ということで神が説明して差し上げちゃおう!

 ああ、なんてことだろう。俺は創造主教、つまり神を崇める宗教ほどではないが一応『神』の存在は信じていた。それがまさかこんなのだったとは。威厳もくそもない。徐々に効きやすい声量に変わっていく『神』の声を聴きながら俺の心の中の神像が音を立てて崩れていくのを感じた。

「そういや、私と未和ちゃんは自己紹介したけど、コノハくん?とはしてないね。えっと、私は天道晶っていうしがないOLで、そこでまだ寝てる……っていうかよく眠れるな……まあ、寝てる可愛い男の人が伊呂波先輩でーす」

「私は女子大生の蓑島未和です。コノハくんは高校生かな?まあ、魔法かな?使ってたし私たちと同じ感じの高校生じゃないだろうけど」

「OL……?じょしだいせい……?あ、俺はコノハです。普通の高校生ですが」

 意味が分からない……所々単語の意味が分からなかったがとりあえず名前と自分の世界と二人の世界の違いが結構あるということは解った。

――――――さてさてさて自己紹介は終わったね!?じゃあ、説明タイムといこうか!

 俺たちは真剣な顔で身構える。『神』の説明とはいったい……


――――――『これは神の暇つぶしから始まった物語。終着点は誰にもわからない。神はそれぞれ似ているようで全く違う世界から五人の人間を集めた。『リス』『執事』『ヒーロー』『ヒロイン』『魔法使い』……彼らのやることは一つ……この世界で人間のふりをしている神を見破ることのみ。それがもとの世界へ帰るための唯一の方法……ヒントは色々な地域にちりばめた。今、五人の異色パーティーが動き出した―――――っていう感じのことしたいんだけどどうかな!?


「「「い、意味が分からん!!!!!」」」


 俺たちの息のあった返事に変わり者の『神』は愉快そうに笑った。



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