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魔法使い→?

 パリン!

「……退屈だ。ひどく退屈だ。まだ、四ニンしか集まってない!ああ!退屈だ!ああ!イライライライライライライラする!」

 神は叫んだ。

 神は濁った瞳をかっぴらき、辺りに散らばった球体を端からわっていく。

 パリン!パリン!

「何でこんなにイラつくんだ!?何が悪い!遅いからだ!何が遅い!?そうだ!”きゃすと”が足りない!物語が始まらない!大体無理があったんだ!世界は広い!神の目は全部観れるし視れるし看れるけど!それでも時が進むのは早い!面白いことも楽しいことも可笑しなことも溢れているのに!こうする間にもどんどん過ぎていく!何てことだ!どうすればいい!?」

 神は暴れまわる。苛立ちをすべて白い空間にぶちまけているようだ。神の独白は長い時間続いた。ついにはコトバにならずただの悲鳴になる。段々小さくなっていく叫び声。俯きながらうわ言のようにああ、と声にならない呟きを漏らす。

「ハア、ハア……ハアー……すっきりした!楽しくなってきた!神なんだから出来ないことは何もない!時間なんて有り余るほどあるじゃないか!愉快な事だって!どんどん湧き出ているんだから!さあさあさあ!次の”きゃすと”を決めようじゃないか!そうだ!もう四ニンも集まっているんだから!」

 神は笑った。

 先ほどまで暴れていた者と同人物だとは思えないほど無邪気な笑みだ。

 神は高らかに宣言した。

「五ニン目の……さあ、最後の”きゃすと”を決めようか!」




~5人目の『魔法使い』~


「聖なる光よここに……明らかなる煌めきよ我に力を!」

 右の人差し指を遠く離れ魔法を使わなければ見えない位置にある人形の心臓に向ける。いつも通り人差し指から電撃が一直線に飛んで行った。

「ハア……これで今日の試験は終わりか?」

 俺は隣でその様子を見ていた長身の学生に問い掛けた。学生は人好きのするからっとした笑みを浮かべる。

「相変わらずすげーな、コノハ!今回の電撃射撃試験100点いくんじゃねえの!?真っ直ぐいったもんなあ。意外と電撃系が一番平均命中率悪いんだろ?オレ35点だったぜ!」

「質問に答えろよ。赤点野郎。大体今回の、じゃなくて今回も、だろ。カス」

 俺は一日中行っていた魔法試験のだるさから下がっていた気分が、すごいと言われ少し上がったことを悟られないようにそっぽを向いた。

「ひでえなーオレにはクワっていうウルトラかっこいい名前があるんだぜ!知らなかったっけ?」

「知ってるよ。わざとだよ。分かれよだから馬鹿なんだろうが。万年赤点童貞ゴリラ」

「悪化してる!?」

 俺はいつものようにクワと軽口を言い合いながら射撃場を出た。ドアはもちろん空調も魔法を使っているので、温度が変わるわけでは無いのだが、やはり魔法が至近距離で飛び交う射撃場を出ると気温が下がったように感じる。俺はようやく肩の力を抜いた。

「疲れた……もう寝る」

「え?テスト結果見ねえの?コノハが最後だったし、試験もおわりだからもう出てると思うけど」

「そんな分かりきったもん見る必要ねえよ」

 解りきっている。俺が魔法の実技試験で100点以外を取る訳がないのだ。ブーイングするクワを置いて俺は全国屈指の魔法訓練所高等部の寮に向かった。


 そのとき、ふっと風が吹いた。そんな気がした。



――――やっぱり魔法使いは必要だよね!中々魔法を扱う世界を見つけるのは骨が折れたよ!よく分からないいけど過去現在未来全てを合わせた中で君が一番すごいようだね!


 身体が動かない。目がぐるぐるとまわる。俺は膝から崩れた。それに合わせてクリアになっていく声に意識を持っていかれる。


――――もう面倒だし!だから、君に決めた!君は今日から『魔法使い』だ!


 俺はそもそも魔法使いだよ。そんな俺の気持ちは声にならず、俺は意識を失った。


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