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女子大学生→?

「次は何にしようか!」 

神は言った。真っ白な空間の真っ白の箱に腰掛け、顔には花が咲いたような笑みを浮かべている。

「やっぱり“きゃすと”は人間がいいかな!ぐーぜん日本人になったから次も日本人がいいよね!言葉通じないと面倒だろうし!いや、でも全員同じ人種だと諍い起きなくて面白くないかも!うん!まあ、いいや!後で考えよう!早く“きゃすと”を考えなくちゃね!でなきゃ物語は始まらない!」

 神は真っ白い箱から飛び降り両手を前に突き出す。そのままゆっくり目を閉じた。真っ白い部屋には静寂のみが訪れる。

 数秒後、神はゆっくり目を開けた。その瞳にはやはり光は無く、濁りきっている。しかし、目を閉じている間に出現した球体を眺める神は、まるで遠足の前の日の子供のようだ。

「決めた!アレがいい!アレにしよう!」 

 神は笑う。にっこりと。そして、ダイヤモンドのように輝く球体を掲げて叫ぶ。


「さあ、次は君の出番だ!」





~2人目の『執事』~

「いらっしゃいませー」

 店内にカランカランと昔ながらの穏やかな鈴の音色が響く。

神社の鈴の音に似ている、そう同僚と常連客の一人が話している時、私もなるほどと思った。聞くたびにどんな暑い日でも体温が下がる気がするのは、涼しげな神社を連想していたからなのだろう。

私――蓑島未和は【駒鳥】という洋菓子店でアルバイトをしている。商店街の裏側にある店なのでお客さんは基本少ない。けれど、ここにしかないケーキが沢山あり、一度来ればはまること間違いないと自信を持って言える。

しかし、場所が悪い。表の商店街には雑誌に載るほど有名な洋菓子店【とりーとる】があるのだ。時給はいいし制服も可愛くて働く場としても人気の店だ。でもここには、個人経営ならではの温かさなど数えきれないほどの長所がある。何より、余ったケーキを一つただでもらえるというのは、何物にも代えがたい魅力があるというものだ。

 マイブームのスポンジにジェリーを挟んだお菓子、レヤーケーキは人気の商品の一つなのだが、運よく一つ残っている。これがまた美味しいのだ。

「すみませーん。マンゴーのショートケーキと……レヤーケーキくださーい」

 ……店的にはいいのだ。店的には。明日残っていることを期待しよう。


 カランカラン。時間的には最後かと思われる客が帰って行った。私は、店長に閉めていいかを聞くため奥に向かう。だが、靴を脱いで引き戸を開けようとした瞬間、私は石のように固まった。見覚えのある靴。これは【とりーとる】の従業員用の靴ではないだろうか?黒いバレーシューズの鳥のマークには見覚えがある。でも、どうしてここに?私は、扉に耳を近づけ店長と謎の人物の会話をこっそり盗み聞きした。


驚いた。本当に驚いた。ケーキをもらい忘れたことを家についてから思い出した位だ。

約十分間、店長と謎の人物――【とりーとる】のチーフマネージャーは話していた。要約すると、経営が苦しいので、店を畳み、その際に【駒鳥】のケーキのレシピを【とりーとる】に売却するというもの。明日にでも私は解雇を言い渡されるかもしれない。

けれど、私が驚き、そしてショックをうけたのはそこではない。レシピを売る。それはつまり、【駒鳥】のケーキはやはり全国で通用するほどに素晴らしいものだったのだ。

そう、もっと上手くやれば。広告の仕方や場所など問題点はいくつもあるだろうが、せめて私が、私がもっと危機感を持ってしっかりとした対応をしていれば違ったかもしれない。そう、例えばたまたま深夜のアニメで見た『執事』のように。

ああ、神様。どうかいるのなら私を完全無欠の執事にしてやり直させてはくれませんか?そう、私は『執事』になりたいのです。


―――執事になりたいとは面白い。いいだろうその願い叶えてやろう。君は今日から完全無欠の『執事』だ!


私は、爽やかで涼やかな……そう【駒鳥】の鈴のように素敵な声を最後に意識を失った。ああ、明日はレヤーケーキ残っているかなあ?


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