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神が云うには

―――――――ナンダッテー!意味が分からない?何故だ!?しかし、神様というのは気が利くものだ!ちゃあんとものすごく簡単な説明とあらすじ風説明と細かい説明の三種類を用意してきた!今のはあらすじ風だ!残り二種類さあ、どれがいい!?

 

 顔など観なくてもキラキラ輝いて良い表情してるんだろうなとわかる声。(自称)神が楽しそうなのに比例して三人と一匹の間の空気は暗くなる。あらすじ風な説明はいらないだろとツッコみたいが、それよりこの(自称)神と会話をしたくない。関わりたくない。

 しかし、おかしな世界に飛ばされてしまっているのだ。戻りたければ観念して話を聞かなければならないだろう。アイコンタクトでお前行けよ、いやそっちが、と押し付け合う。無言の攻防はしばらく続いたが、やがてしぶしぶといった表情で現役女子大生・蓑島未和が一歩前に出た。

「じゃあ、細かい説明をお願いします……」

―――――――おっ!やっと決まったんだ!?いいよ!ちょっと長くなるかも?いや、やっぱ長い話嫌いだから短いかな!?短いな!でも、そろそろお腹減ったよね!ご飯前のコもいたろうし!朝ご飯をあげよう!何がいい??なんてね!好物はリサーチ済みだよ!というわけではい!

「えっ!?」

 一瞬だった。

 いうが早いが三人(+一匹)の前に宮殿にでも置いていそうな長いテーブルが出現する。テーブルの上には、いろんな種類のパンに、エッグベネディクトなどの高級ホテルにありそうな朝食が並び、椅子もきちんと四つあることからここでそれらを食えということなのだろう。

 未和と晶が目を見開いて驚くなか、コノハは冷静にその光景を観察していた。

(今のは……空間魔法の方式と似ていたけど、少し違う。他のものが混じってる……?恐らく火系のやつと同時に使った、と思う。けど何か違和感が……)

 紅い瞳を細めて寝起きにもかかわらず自分の知識を総動員する。コノハは、あっけなく行われた魔法なしではありえない行為、机とできたての朝食の出現方法について考えだした。

―――――――じゃあどんどん食べちゃって!焼き立てだよ!作り立てだよ!おいしいケーキとかも用意してるよ~?

「ケーキ……!」

 未和が目を輝かせた。晶に食べたいと期待に満ちた目を向ける。晶はのほほんと笑うと私もお腹すいた―と言って、突っ立ったままのコノハの背中をぐいぐい押して席に座らせた。その後、自分も座ろうと椅子を引いたが、何かを思い出したようにピタリと動きを止めた。

「そういえば、どうして伊呂波先輩起きないの?」

「ああ、晶さんの先輩の方ですよね。確かに……」

―――――――え!?何を言っているんだい!?彼は『ヒロイン』なんだよ!?彼を起こす方法は一つしかないじゃないか!!

 晶以外の意図胴にに静かな衝撃が走る。といってもコノハは現在進行で(自称)神の行為のしくみに考え中なので三和と『リス』こと赤尾正あかおただしだけだが。

(え……ヒロイン?確かにさっきあらすじ風説明で出てきたけど。成人した男性が?ヒロイン……?)

(ヒロインを起こす方法って……まさか)

 固まる一人と一匹を尻目に晶は瞳を輝かせる。きらきらというよりギラギラに近い。寝ている伊呂波の横に座ると、三和たちからは何も見えない。

「そっかそっか~それなら仕方ないね!うん!据え膳食わぬは男の恥じゃなかった……先輩のくちびグフフ、唇いただきまーす!」


「さて、私たちは朝ご飯食べようか。コノハくん!気になるんなら食べてから質問しましょう?リスくんも。どれ食べたい?食べさせてあげるね」

 三和は、ケモノと化した晶を冷めた目で見届けたが、次の瞬間打って変わって笑顔で席に座った。コノハも声を掛けられ気付いたらしく一番近い三和の隣の席に座る。

「昨日はそのまま気を失っちゃったから言えなかったけど、助けてくれてありがとう!私は蓑島未和。ここにいる理由とかは分からないけど……とりあえずよろしくね」

「いや、別に……コノハです。よろしく……あっちのアレは……?」

「あははーコノハくんは気にしなくていいよ。まずは説明聞こっか。何がなんだか分かんないし」

「はあ」

 早速目の前にあったエッグベネディクトを食べながらにこやかに話す三和。ぽかんとしている魔法使いも引きずられるようにバスケットに積んであった小麦の香りがする焼き立てのパンを一つ手にとった。


――――――さて!自己紹介その他モロモロは済んだかな!?あ!伊呂波優樹いろはゆうきくんおはよう!どうも神です!!何だか疲れているね!?君は『ヒロイン』なんだからいつも笑顔でいないと!さて、まずは君たちの役割を紹介しよう!君たちはメインだ!キャストだ!主要人物だ!それを意識して”すたー”らしく振舞ってね!


 神の優しく涼しい声音が頭に響く。

 四人は、見た目は美味しそうな朝食を各々別の面持ちで食べだした。


 


――――――まず『ペット』としてリスへと変化を遂げた赤尾正くん!君は、物語のシリアスな部分ではその場を和やかにさせる癒しアイテムとして、ギャグの部分ではどんなに無茶な事をしても可愛いで済まされるそのリスという立場を生かしてほしいんだ!そのために言語はいらないと思ったから喋られないよ!けどまあ、意思疎通ができた方が面白いだろうし、人格とか記憶とかあった方が便利かなーと思ったから赤尾正君そのものの脳味噌のままだよ!いじくっても良かったんだけど、ちょっと面倒くさかったんだよね!


――――――次に『執事』として見た目は変わらないけど驚異的な家事力と順応能力を手に入れた蓑島未和さん!君は、漫画みたいな完全無欠の執事になりたいんだそうだね!?ということで、色々基礎的な能力は全部底上げしといたよ!まあ、頭はそもそもいいみたいだからいじくらなかったけど!本当は冷徹な感じの感情ゼロ―って感じのクールビューティ執事にしようかと思ったんだけど、ちぐはぐなほうが面白いかなって思ったのさ!


―――――――次に『ヒーロー』&『ヒロイン』として、最強の身体能力とラッキースケベ運を手に入れた天道晶さん!そして、ピンチに陥り度の強化と怪我のしにくさを手に入れた伊呂波優樹くん!天道晶さんは身体能力を上げて伊呂波優樹くんを守りたかったんだよね!その最強の肉体があれば向かうとこ敵なしだよ!『ヒーロー』は純粋だったり性格悪かったり多種多様だからね!もちろん脳はいじくってないよ!あ、伊呂波優きくんには少し悪いことをしたかな!一度寝たら誰かがちゅーしないと起きれないんだ!『ヒロイン』っぽいでしょ!


――――――――最後に『魔法使い』としてこの世界に招待させていただいた過去現在未来のどの時代でも最強の名をほしいままにする魔法使いのコノハくん!君には何にもしてないんだよね!何たって最強だから!チートはつまらないよね!誰か一人くらい脳味噌いじりたかったからコノハくんの性格を正反対のいつも笑顔で腹黒うざいダサいカリスマ性皆無にしようと思ったんだけど、やっぱ君の世界は手を込み過ぎたよ!発展しすぎ!連れて来るのはまあ、何とかなったけど何にもできなかった!残念!



―――――――……あれれ?どうしたの??これから楽しい楽しい冒険が始まるんだよ??ああ、チュートリアルにはそろそろ飽きたかな?大丈夫!そんな急かさなくとも……嫌でもすぐに始まるんだからさ!!



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