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咄嗟に避けられるものではない。
リベロは死を覚悟した。
だが、幸運にも照準がずれていたのか銃弾は彼らのすぐそばにあった石像のオブジェに直撃した。
石像は無惨にも砕け散り、砂塵を起こしながら破片が彼らに襲いかかってくる。
クロウはトラックに乗っているリベロを睨みつけている。
その瞳には珍しく怒りの感情が現れていた。
「お前らのミスだ」その一言は静かながらも有無をいわさない断定だった。
リベロは口元を歪め、顔を伏せ黙っている。
無論、彼だけの責任と言うわけではない。
それでも、彼は油断とも言える失態にショックを隠せないでいた。
そんなリベロに構うことなくシェル・キャトルはすぐに照準を修正し始める。
またもや、クロウ達を狙っているのだ。
だが、その時だった。
一筋の閃光が空気を切るような音と共にシェル・キャトルに直撃した。
シェル・キャトルはバランスを崩し、大きな地響きと共に地面に倒れ込む。
閃光が放たれた場所には四機の量産型マシンナリーアーマー『テンゼン』の姿があり悠然と構えていた。
テンゼンもシェル・キャトルと同じくカザミ重工が開発した量産型のマシンナリーアーマーであり、現サーマシバルの主力兵器である。
汎用性が高く、あらゆる戦局で使用ができる。
装備も自由性が高く固定装備はヒートナイフのみな為好きな武装をする事が可能。
つまり、兵器以外にも使用する事もできる。
大きさは四メートル程で人型のシンプルな構造をしている。
カラーリングはグレーに統一され、人でいう目の部分はバイザーで隠されている。
『まさかMAIか!』
シェル・キャトルからシラサギの声が聞こえてくる。
彼にとってこれほど早くMAIの登場は予想外だった。
MAIとはサーマシバル軍の部隊で、主にテロリストの殲滅を任としており、実力、実績、ともにトップクラスの特殊部隊である。
シラサギは何度かこの部隊と戦闘を行った事があり、彼らの恐ろしさをよく知っていた。
『だかな……役不足なんだよ!』
そう、今の彼にはシェル・キャトルと言う最強のマシンナリーアーマーがついているのだ。
その揺るぎない自信が彼を支え、シェル・キャトルはすぐに体勢を立て直す。
そして、120ミリ砲を四機のテンゼンに向けた。
だが、既に四機のテンゼンは散開し、シェル・キャトルを囲み始めようとしていた。
各機テンゼンの手にはグレネードランチャーを装備している。
コックピットでシラサギは舌打ちをし、両手に装備していた120ミリ砲を手放した。
捨てられた砲身はその重さでコンクリートの地面を揺らす。
すぐさま武装を三砲身ガトリングガンに切り替え、そのまま、ガトリングガンから雨のように弾丸が撃ち出される。
だが、四機のテンゼンを捉えることが出来ず、当たることはなかった。
四機はシェル・キャトルを囲み、装備していたグレネードランチャーを放つ。
撃ち出された弾丸はシェル・キャトルの黒い装甲に着弾した瞬間、高熱を発し爆発する。
その光景を、クロウらは少し離れた場所で見ていた。
「……いけるか?」
「無理だろうな。あの程度では」
リベロの問に答えるクロウ。
それは断定的な言い方だった。
それを聞き、リベロの眉間にはしわが寄る。
「なぜ、そう言い切れる?」
「カザミの最高傑作があの程度でやられる筈がないだろう」
「それは分かっている。だが……」
リベロの問いに答えた瞬間、爆音がクロウ達に襲いかかってくる。
四機のテンゼンは躊躇なく都市破壊用の焼夷弾を放ったのだ。
大きな火柱が上がり、熱で辺りのものが溶け始める。
熱はクロウ達の所にまで伝わってくる。
クロウが先程までいた宿舎も、酷い有り様になっている。
窓ガラス熱で砕け散り、コンクリートも溶け始めていた。
もし、中に誰かいたら間違いなく生きていない。
それはおろか死体すら残らないだろう。
無論、避難は既に完了しているため破壊されたのは周辺の施設だけである。
「いくら何でもやりすぎだ……」
リベロはその光景を呆然と眺めていた。




