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闇夜の爪  作者: べこちゃん
闇を撫でる爪
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7

先ほどの軍工場ではあちらこちらで機械音が響いていた。

整備士たちは忙しそうに動き回り汗を流している。

全てはこの、静かに重圧感を放っているシェル・キャトルのためにほかならない。

そんな中、一人の銀髪の若い整備士が漆黒の機体に近づいていく。

まるで、何かにとりつかれているかのような虚ろな姿。


「おい、何しているんだ! 早く、自分の持ち場にもどれ!」

そんな若い整備士に、近くにいた整備士長の男は怒鳴り声を上げた。

しかし、若い整備士はまるで聞こえてないような顔をして近づくのを止めない。

ただでさえ忙しいというのに勝手な行動をとる若い整備士に整備士長は怒りを露わにし、彼の肩を掴んだ。

「おい、聞こえて……」

「邪魔だ」

静かで冷たい声が整備士長の耳に入り込む。

次の瞬間、整備士長の頭部は血しぶきをあげながら近くで作業をしていた別の整備士の足元に飛んでいった。

彼の手には、いつの間にか少し長めの鋭利なナイフが握られており、白銀の刃は赤く染まっている。

工場の時が止まった。

他の全ての整備士達が目を丸くし、口が開いていた。

先まで、あんなに騒がしかった工場からは、機械の稼働音しかしない。

血しぶきを上げて倒れる死体を彼は何事もなかったかのように踏みつけシェル・キャトルの側まで行き乗り込む。

ソレが合図かのように、工場からは様々な悲鳴が響き渡っていく。

そして、それを合図にシェル・キャトルは起動した。

「お前らも邪魔だ!」

コックピットの中で、叫びながらトリガーを引いている青年はシラサギだった。

シェル・キャトルの両腕に装備されている三砲身のガトリングガンが、工場の全てのものに襲いかかる。

おびただしい、死体の数と壊れた機材、そしてシェル・キャトルのみが工場に残ったのは言うまでもない。

硝煙と血の臭いが工場に充満していく。

「あの女の言うとおりなら……」

コックピットのシラサギは恐ろしい笑みを浮かべている。

彼は自身の左目に触れる。

彼の左目は血よりも濃く、とても汚れた赤色をしていた。

そして、そんな赤色の瞳が捉える先には、クロウ達の泊まっている宿舎があるのだった。



宿舎のある一室には何とも可愛げな千歳の寝息が聞こえている。

二つあるベットの内、一つに千歳は横たわりながら快眠しており、もう片方には二人の荷物が無造作に置かれている。

クロウは椅子に座りながらベットの隣にある机で銃の整備をしていた。

木製の机の上で『黒』の砲身はバラバラになり、中の構造が丸見えになっている。

また、机には銃弾が幾つも並べられており、火薬の芳烈な臭いが部屋に充満し始めていた。

流石に寝ている人間の近くでこのような臭いを振り撒くのは悪いと感じてクロウは窓を開けに椅子から立ち上がり、締め切られているベージュ色のカーテンに手をかけ開く。

すると、月の明るい良夜がすぐに顔を見せる。

穏やかで冷たい光が窓から射し込んでくる。

だが、それとはうって変わり、外は騒がしくて慌ただしかった。

不思議に思いながらそのまま窓を開けると、小夜嵐と共に火薬臭が勢いよく部屋に入ってくる。

また、外では所々で鬨の声が木霊し、装甲車何台も忙しなく動き続けていた。


「どういう事だ?」


独り言は小さく響く。

途端にセシリーの言葉を思い出すクロウ。

その瞬間、爆音が彼の耳に襲いかかってきた。

彼の目には、先ほどの工場から火柱があがっているのが見えた。

そしてだんだんと宿舎に爆発音が近づいてきている事を彼は察し部屋を飛び出した。

クロウが出て行った部屋には、バラバラになっている『黒』と静かに寝息をたてている千歳だけが残っているのだった。


宿舎の外はあちらこちらで閃光が煌めき、火薬の臭いが充満し、そして死体が転がっている。

それは正に『戦場』と言えるだろう。

外に出てきたクロウはこの光景を見てすぐに理解した。

シェル・キャトルが奪取された。

セシリーの危険視していた通りだった。

だが、クロウもまさかこれほど容易く奪取されるとは思ってもいなかった。

ヤタガラスからしてみれば此処は敵の本拠地。

そんな危険な場所でシェル・キャトルを奪取しようと思えば、かなりの人数と時間を要する。

だが、事実はシェル・キャトルを持ち込んでさほど時間も経過していない。

これほど短時間でそれが行われたとなると、どうにもきな臭い話である。

考え込むクロウの目の前をタイミング良く一台の装甲車が迫ってくる。

彼の隣で装甲車は動きを止め、車の窓が開く。

そこから現れた人物はサイモン・リベロだった。


「早く、此処から非難しろ!」

彼は間髪を入れず、クロウに言う。

その声色から相当焦っている事が分かる。

「これは一体どういうことだ?」それでも、クロウは無表情で現状を理解しようと問う。

「説明は後だ。早く」

「少佐!」クロウからは見えないが、車内にいる兵士がリベロの言葉を遮る。

刹那、リベロの表情が歪む。

「来たか……」

彼らの前方にはシェル・キャトルの姿が現る。

その両手には、120ミリ砲が握らており銃口を彼らに向けられ始めていた。

放射上には間違いなく、クロウと装甲車が捉えられている。

「逃げろ!」リベロが叫んだ瞬間、轟音と共に銃弾が彼らに向け放たれた。

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