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闇夜の爪  作者: べこちゃん
神の住む島
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グレイの肩から生える黒い翼は重厚な金属の羽が幾つも重なり合い光沢を輝かせている。

羽の一枚一枚には刃がついており、まさに凶器の塊と呼ぶに相応しい。

彼は両腰に吊るしていた短刀を引き抜き、不敵な笑みを浮かべた。

一歩ずつ、ゆっくりであるがクロウとの距離をつめはじめるグレイ。

クロウはすぐさま、黒の砲身をグレイに向け引き金を引く。

弾丸は音速の速さでグレイの体へと近づいていくが、肩から生え出た黒い翼が弾丸が迫るよりも早く彼の体を覆い守る。

普通のハンドガンに比べ破壊力に特化した黒であるが羽の衣に傷一つ与えることできずに弾かれてしまう。

クロウは黒が効かないのを確認すると舌打ちをしながら黒をホルスターにしまい込み、右腕を前につき出す。

「まだ、使うなと言われてたんだがな……」

そう小さく呟き、グレイを見据える。

やがて、クロウの右腕は爪へと変化を始める。

爪は夜を切り裂くかのような、鋭利さを露わにしグレイの前に現れる。

さらにクロウの爪は手首から綺麗に両断するかのように、赤く発光する線が伸び前腕まで続いている。

その線を中心線とし四本の20センチほどの黒い冷却棒が左右対称に伸び出してくる。

激しいモーター音が爪の中で声を上げ、やがて爪先からを荷電粒子の赤い黒い光が覆い始める。

やがて、爪の先は赤黒い光が渦巻き、禍々しい姿へとシフトする。

「……なんだそれは」

グレイはその姿に顔を歪ませ、足を止めた。

そして、何かを悟ったのか全力で足を後ろへ蹴りだし、距離を開こうとする。

「その翼は返してもらう……」

その言葉が吐き出された瞬間、クロウは先ほどグレイが見せた踏み込みとまったく同じ速度でグレイの懐近くまで詰め寄る。

赤黒く渦巻く爪が彼の体へと迫るが、瞬間的に翼がグレイの体を守ろうと動き出した。

赤黒い荷電粒子を纏った爪の刃が何層にも重なる金属の翼と対峙する。

金切り声のような金属のぶつかり合う音と赤とオレンジが入り交じった火花が弾ける光景が展開され、空気が冷たく変化し始める。

グレイの翼は攻撃と防御を使い手の意思に関わらずオートで行う装備型の刀。

また、使い手の意思伝達もでき、ある程度まで自由に形を変化させることも出来る。

クロウの攻撃に対してグレイが反応しきれなくとも翼が防御体勢にシフトする。現状もまた、その機能が作動しているが、クロウの爪はそれを意に介さない威力を発揮していた。

硬質な翼を一層ずつ確実に焼き切り、貫いていく。

翼では防御しきれないとグレイは判断し、翼の外層を即座に刃状に変化させて、クロウの体に幾つもの刃を突き刺す。

薄黒い刃は彼の肩、胸部、腹部に容赦なく侵入していく。

さらに、刃は体内に入り込んだ途端にまた形状を変化させ、細く小さな線となってクロウの体内を駆け巡る。

「弾けな!」

グレイの言葉と共に刃はクロウの体内で小さく弾けていく。

その小さな攻撃は彼の血管を突き破り、内部から体内を破壊していく。

それにより、クロウの動きは止まり、その隙にグレイは翼を大きく展開させ、距離をとり直す。

クロウの口からはかなりの血液が吐き出され、ひび割れした地面に染み込んでいく。

クロウはよろめきながらも体勢を立て直し、グレイを見据える。

グレイはそんなクロウの姿を見てか笑みを浮かべる。

「今度はこっちがとっておきを見せてやるよ……」

そういい放ち、グレイは両翼を自身の真横に展開させていく。

クロウとグレイの戦闘が行われているビルから目と鼻の先には様々な高さのビル群が等間隔で並んでおり、そのうちの中間位置にあるビルの屋上にニナ・ヘイズルはいた。

何本もの鉄骨に支えられた給水タンクの上に彼女は腰を据えていた。

風が肌を切るかのように吹き付けており、彼女のブロンド色の髪が波打つ。

黒を基調としたタイトな服装が彼女の体をより細く見せる。

ニナの視線の先にはグレイの翼が薄く、そして鋭く伸び続けていた。

漆黒は徐々に半透明に変色し、地上の緋色と空の紺碧の光が反射しながら入り交じっていく。

その光景を彼女は妖艶な笑みをチラつかせながら眺めていた。

そんな時だった。

ニナの手元に置いてあった携帯のコール音が鳴り響く。

ニナは悦に入っていたのを邪魔され、顔をしかめながら電話にでる。

「今、良いところなんだから邪魔しないでもらえる?」

『おっと、それはお楽しみのところ悪かったね。で、首尾はどうだい?」

電話からの声色は明らかに何もかもお見通しといったものであった。

ニナは呆れ顔になりながらも口を開く。

「よく言うわ……グレイがクゥエルでなく彼と交戦している時点でとっくに計画は破綻してるわよ」

『あ、やっぱりそうなっちゃってた?』

「……とんだ無駄足ね」ニナは目くじらを立てながら息を吐いた。

『風見もまだまだ、盲目ではなかったってことさ。これも予定調和のうちだよ……』

「何が予定調和よ。ヤタガラスを引き換えにクゥエルを風見から引きずり出したのに、結果は大量の駒を失うだけで肝心のクウェルの鹵獲は失敗。とんだ負け博打よ」

『大丈夫、次プランにシフトするだけの話しさ。とりあえず、使える駒は再利用したいからさ……グレイ、拾ってきてよ』

「フザケないでくれない?あんなとこ飛び込んだら私が死ぬわよ」

ニナは口調こそ落ち着いているが、顔は完全に怒りを露わにしている。

しかし、電話越しからはそんな事に気がつかないのかひょうひょうとした返答しか返ってこない。

『別に当初の相手だったクゥエルからクロウに変わっただけの話しだろ。アレもあるんだから問題ないさ、じゃあ頼んだよ』

そう言って、一方的に話を進められ、有無を言わさずに電話は切られた。

その瞬間、ニナは悪態をつきながら携帯を勢い良く投げ捨てる。

そして、給水タンクから飛び降り、鉄骨の下に置いておいた小さな収納ケースを取り出す。

「ほんと、良いように使われているわね……私」

ニナはそう言って、ケースを開いた。

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