神の住む島
悲鳴と怒りの叫び声は爆音によってかき消されていく。
背の高い建物は崩れ落ち、砂煙が舞う。
散乱するは大量の瓦礫と原型を留めていない死体ばかり。
この地こそヤタガラスの本拠地である『デア・ニール』だ。
かつては大国の一つであったこの場所も数年前にヤタガラスの侵略により今は彼らの巣。
しかし、現在その巣は侵入者に攻撃を受けていた。
「たった一人にこの様とはな」
キジの仮面をつけた女性だ。
その女性の周りには同じく鳥の仮面をつけた者達が所狭しとおり、重火器を構え一人の男を囲んでいた。
男は黒い防護服にヘルメットをつけており、顔を確認する事は出来ない。
手には真っ黒の斧が一本握られているだけであるが、その黒い刃には赤い血が滴り落ちており、足元にはバラバラになった死体が山積みとなっていた。
「撃て」
キジは短く冷たい声で命令を下す。
すると、男を取り囲んでいたヤタガラス達は火器の引き金を躊躇わず引き、銃弾は雨のように降り注ぎ、男に襲いかかる。
銃声は止むことを知らず、いつまでも続きやがて、全ての弾丸を撃ち尽くした彼らは硝煙の巻き上がる空間を凝視し始める。
北から吹く火薬の匂いをのせた風により硝煙は飛んでいき男の姿が確認できるようになる。
ヘルメットや防護服は蜂の巣状態であったが、それ以外は何も変化なく、まるで何もなかったようであった。
ヤタガラス達に動揺が走る。
男はボロボロになったヘルメットを投げ捨てる。
現れたその顔は良く言えば端正な悪く言えば人形のような顔つきで、茶色の短髪で鋭い目つきをした青年であった。
「お前らじゃあ話にならないな」
風切り音とその声がキジの耳に届いた時には前列にいたヤタガラス達の首は綺麗に吹き飛んで、血しぶきを上げていた。
「……化け物め」
それが最後にキジが口にした言葉であった。
男はキジの死体を躊躇なく踏みつけ、歩み始める。
彼の名はクゥエル。
風見重工が二番目に製造した超越者の一人だ。
彼が歩くたびに死体は数を増していき、残酷なまでの圧倒的な強さを見せつける。
「……面倒だ」
そう呟き、斧をひたすら振り回しながらヤタガラス達を鎮圧させていく。
悲痛な彼らの叫びはいつまでも続くが、彼の耳には全く届かない。
彼らの叫びなど、どうでもいい事なのだ。
ただ、ひたすら無感情に仕事をこなす。
クゥエルにとってはその様な感覚でしかない。
彼の目の前には瓦礫の山が連なり、その奧には量産型マシンナリーアーマー テンゼンの機影が見えている。
やがて、テンゼンは瓦礫を崩しながらクゥエルへと近づきなから、右腕を斜め上に掲げ対人用のグレネード弾を発射する。
弾丸はクゥエルのちょうど真上で爆せ、鉄の雨を降らす。




