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「……これは」
左手が血で滑り、力が入らない。
意識が朦朧とし始め、足が震え膝をつきそうになるが、突き刺さった神無がそれを許さない。
ジンはもう一本の神無を地面から引き抜き、少しずつジンに近づいていく。
刃の切っ先を三白眼で睨みつけているクロウの眉間に向けて突きつけようとする。
「ジン!」
だがその時だった。
沈黙していたアイは後ろからタイミング良くジンに向けて小石を投げつける。
凄まじい風きり音がジンに迫る。
彼は咄嗟に振り返り、小石を手の甲で払う。
クロウはその隙を逃さず、すぐさま左手に力を入れ、神無を引き抜く。
花火のように血は煌めき、同時に彼の内蔵は体外に飛び出す。
しかし、クロウはそれに構わず爪をジンに振り下ろした。
肩から腹部にかけてクロウの爪が切り裂いていく。
彼から吹き出た血がクロウの髪や頬を赤く染め上げ、爪は赤黒く輝きを放つ。
ジンの手から神無は滑り落ち、目の虹彩は色褪せ始めていた。
今にも倒れそうだか、口を大きく開き叫び声を上げるジン。
「大人しく寝てください」
アイの抑揚の無い声と共に鈍い音が森に響き渡る。
「うっ……」
ジンの頭には強い衝撃が襲いかかり、視界は霞み、意識が闇の中に消えていく。
彼の体は事切れたように血溜まりの中に倒れこんだ。
この瞬間、森は静けさを取り戻していった。




