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カザミ重工地下施設。
通路は結露しており、滑りやすくなっている。
その通路の先には薄暗いその空間があり、二つの卵形の機械が設置されている。
その卵形の機械の前には二人の男がいた。
四十代くらいの男とまだ十代そこそこの若い青年だ
「エルヴィス。いつになったら、完成する?」
男は青年に尋ねる。
感情がまるで感じられない冷淡な声が空間に反響していく。
この声の持ち主こそ世界最大の軍事企業『カザミ重工』の社長 風見 宗一郎である。
鋭い眼光がエルヴィスを捉える。
エルヴィスはその問いに対して何とも言えないとひょうきんに答える。
この様子から彼は目上の者に対する態度がなっていないのがよく分かる。
「体そのものはすぐにでも仕上げるのは可能さ。ただ、問題は精神なんだよ。データ化された知識や人格を詰め込んでも役に立つものか。だからこそ揺りかごに繋いで脳に乳児から大人になるまでの成長過程を疑似体験させている。これには、やはり時間がかかるからね」
エルヴィスはそう言いながら三と表示されている揺りかごと呼ばれる機械を叩く。
鈍い反響音が二人の鼓膜を揺らす。
「まあ、三番に関しては失敗作かもね。成長が十代前半程度で止まってる」
その言葉を聞くと宗一郎は険しい顔つきとなった。
だが、それもすぐ消えていく。
一瞬の出来事であったがエルヴィスはそれを見逃さなかった。
「使えないなら破棄しろ」 まるでゴミを扱うような感じで冷たく言い放つ。
「それはナンセンスさ、失敗作は失敗作で使い道はいくらでもある。先行投資と思ってくれればいい」
そう言うが、宗一郎の顔色は変わることはなかった。
冷たい視線は二つの機械とエルヴィスを睨みつける。
「何でもいい。1ヶ月以内になんとかしておけ。でなければ、いくらお前でも主任からおろす」 そう言い放ち、宗一郎は出口に向けて歩き出す。
去り際に、彼は小さな声で「やはり、あの男には及ばんようだな」と言い残す。
その小さな声をエルヴィスは聞き逃さなかった。
一人取り残されるエルヴィス。
「……やれやれ、ああいう人種は決まってせっかちだから困るよ」 彼は揺りかごを見つめる。
拳をつくり、揺りかごを小突く。
エルヴィスの顔色は徐々に怒りを見せ始めていた。
宗一郎が残した言葉は彼にとって最も聞きたくないものであった。
「完全な生命体か」
吐息のように呟くエルヴィス。
その瞳には明らかな侮蔑の色が映し出されていた




