2
季節は夏の中旬を迎えた頃である。
快晴と呼ぶに相応しい空に入道雲が湧き上がり、気温はどんどん上昇していた。暫くはこのような日々が続くだろう。
その快晴の下では一台の小型トラックが轟音を鳴らしながら荒れたアスファルトの道を走っていた。ギラギラと輝く太陽が車内を照らす。
周辺には枯れた木や廃屋が所々にあり、退廃的な風景が続いている。
トラックの助手席から坂上千歳はそれらを眺めていた。十年戦争時に生まれた彼女にとってこれらの風景は何てことのない当たり前の日常のひとつである。そんな見飽きた光景に彼女は退屈していた。
トラックの運転手であるクロウは無表情のまま、ただひたすらに前を向いている。
「まだ、着かないんですか?」車内のクーラー音にのせて千歳は落ち着かぬ素振りで尋ねる。
「後、一時間ってところだな」
クロウは千歳を一瞥することなく前を向いたまま小さく応えた。
何とも素っ気ない。
だが、これはいつものことであり、彼自身に悪気があるわけでは無い。生まれながら愛想がまったくと言っていいほど無いだけなのだ。
無論、千歳もその事は重々承知しているためか、特に気にする様子はない。
「早く、着かないかな」
車の振動が、彼女達を揺らしている。
千歳は上着のポケットから携帯を取り出し、メモ機能を使い今の現状を事細かく携帯に打ち込み始めた。
これは彼女が担当する仕事の一つで、依頼の内容等の記録をしている。
彼女はコレを『仕事日誌』と呼んでおり、今までこなしてきた仕事の内容が全て詰まっている。
彼らは風見重工の運搬屋をしている。その名の通り依頼を受ければ、何であろうと目的地まで運ぶのが仕事だ。
今も、ある品をこの先にあるサーマシバルの都ウォータービレイに運ぶ最中であった。
『ウォータービレイ』は通称、水の都と呼ばれており、街全体に人工河川が張り巡らされている。その街並みはとても美しい。ガラス細工などの美術工芸品が有名で世界五大観光名所に名を連ねている。それと同時にサーマシバル軍の重要拠点でもある。千歳は生まれて一度も『ウォータービレイ』に行った事がない。故にとても楽しみにしていた。
「まだ、着かな」
「後、一時間だ」
千歳の言葉をさえぎり、クロウは静かに言う。
先から、コレの繰り返しである。




