表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
闇夜の爪  作者: べこちゃん
永久の樹と白き鬼
19/47

永久の樹と白き鬼

雲は緩やかな風に流されていく。

そんなのどかな風景の中で二人の人間が対峙していた。

一人は男で長身の白髪。もう一人は対照的に女で黒髪である。

男はバイザーをつけており、大きな槍を女に突きつけている。

一方、女は腰あたりまである一束に縛られた髪をなびかせながら刀を構えていた。

柄は黒く、刀身は細い。

刀の波紋は美しく、一種の芸術作品を思わせる。

二人の距離は徐々に狭まっていく。

刹那、強い風が吹き草原を波たたせる。

次の瞬間、男は牽制で突きを放った。

風切り音が渦巻きながら女の腹部に迫る。

女はそれを流すように受け止め、自分の間合いに持ち込む。

すぐに男の顔の横一線上に刀の刃が襲いかかる。

男はすぐに一歩大きく引き、それを回避した。

刀は男の前髪を掠め、何本かの白い髪が風にのり飛んでいく。


「……後ちょっとでしたのに」女は残念そうにそう呟いた。


しかし、その言葉と裏腹に女は男が自分の攻撃を避けることを期待していた。

彼女は試したのである。


「甘いんだよ。このストーカー女」男は笑みを浮かべながら女を嘲笑する。


「ストーカーとは失礼ですわ」抑揚のない静かな声を発しながら女はむっとした表情をした。


「サーマシバルの大都会から、こんなド田舎まで追いかけてきといてよく言うな」


槍を携えながら、男はあきれ口調に頭を掻く。

そんな男を見て女は愉快そうに目を細める。


「あなたが大人しく死なないから、わざわざ追いかけてきましたのに……酷い人」


口調とは裏腹に女は凛然たる威儀を正す。

言葉は吹きつける風と共に過ぎていく。

二人の髪は風に揺られる。


「お前の言ってることは滅茶苦茶なんだよ!」


男が強めの口調で言うのとほぼ同時に、女はいきなり間合いを詰めようと動き出した。

女の靴は辺りに伸びる草を容赦なく踏み散らしていく。

両腕に握られている刀が疾風と化して、空気を切り裂く。

だが、金属のぶつかり合う鈍い音が響き渡る。

男は槍の先端部で器用に刀の軌道を止めた。

普通ならまた一旦間合いをとるが、女はそれでも止まらずに鍔迫り合いに持ち込んだ。


「コレはあなたへの愛情表現ですのよ……ジン」


女の黒い瞳は人の血を吸いすぎて妖気を帯びた刀の如く妖しい光を放っている。

コレとは無論、殺意の事を指している。

コレが彼女、如月麻耶の愛の形なのだ。

「気持ち悪いんだよ!」ジンの瞳には強烈な侮蔑の色が揺れている。

彼は麻耶の腹を蹴る。

すると靴についていた土が辺りに飛び散っていく。

彼女の端正な顔が痛みで歪む。

そのまま、ジンは距離を置いた。

「ひどい……ですわ。女性に手を挙げるなんて」摩耶は自分の腹を触りながら口をとがらせる。

彼女の瞳は笑っていた。

痛みがまるで快感にでも感じているかのように表情は愉悦に満ちている。

痛みを受けるたびに彼女の愛はさらに高まっていく。

「いい加減にしやがれ!この変態女!」

「まあ、ストーカーならいざ知らず、変態女とは……」

「事実じゃねえか」

「私は変態ではありません」摩耶は刀を脇構えに持っていき姿勢を下げる。

そのまま、摩耶は何かの技を繰り出そうとするが、いつの間にかジンの手にはフラッシュ・バンが握られており彼女の挙動と同時に地面に落とした。

フラッシュ・バンは落ちた衝撃で物凄い閃光を放つ。

彼自身はバイザーにより光を遮られている。

「じゃあな、変態ストーカー女」

摩耶の耳には確かに彼の声が聞こえていた。

数分の時間が経過し視界がようやく開けてきた頃には、既にジンの姿はなく火薬の臭いを残すだけであった。

「……また、逃げられましたわ」彼女はため息をつきながら、空を見上げる。

だが、その瞳に写るのは蒼天ではなくジンの顔であった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ