15
「何だコイツは!」
コックピット内で叫ぶシラサギ。
必死に操縦桿をいじるが、シェル・キャトルはうんともすんとも言わない。
『無駄ですよ』どこからか千歳の声が聞こえてくる。
彼女はシェル・キャトルの通信機能を使い、シラサギに話しかけているのだ。
『既にこの機体は私の手の中ですから』
その声色からは絶対の自信が見え隠れしている。クロウが千歳に頼んだのはシェル・キャトルへのハッキングだった。
無論、シェル・キャトル本体にも電子防壁が張られており、普通ではハッキングなど到底不可能である。
だが、コロンを駆使した千歳の前にはそんなものにたいした意味はなく、シェル・キャトルのコントロールを難なく奪い取ってしまった。
ヤタガラスが逆にモノを奪われるとは何とも皮肉である。
『流石に大変でしたよ。マシンナリーアーマーにハッキングなんて初めてでしたから……』少し疲れ気味の声がシラサギの鼓膜を振動させる。
「……あの売女、話が違うじゃねぇか!」
シラサギは画面を思いっきり殴りつける。
画面上の液晶にひびが入りだし、拳に破片が刺さり血が流れ出している。
彼の赤い瞳はとてつもない怒りに満ちていた。
するとコックピットのハッチが開かれる。
千歳が強制的に開放したようだ。
外にはクロウが『白』を構えて立っていた。
シラサギは舌打ちをする。
次の瞬間、銃声が闇夜に広がっていった。
撃ち出された弾丸はシラサギの眉間を貫通し、鮮血がコックピット内に飛び散る。
返り血が、容赦なくクロウの顔に飛んでいくが、それでも彼は相変わらずの無表情であった。
クロウは用が済んだ『白』をホルスターにしまう。
コックピットには眉間に穴が開いたシラサギの死体が収まっていた。
その表情はいつまでも憎悪の赤に染まっている。
クロウの爪は徐々に元の状態に戻っていき、彼は携帯を取り出し、千歳に電話をかける。
『もしもし』
「俺だ。始末はついた」
淡白な口調。
いつの間にか開いていた腹部の傷も塞がり、血は完全に止まっている。
『そうですか。にしても……アレ?』急に疑問符を浮かべる千歳。
「どうした?」急に声色を変えた千歳にクロウは問いかける。
『え、嘘!?』
次の瞬間であった。
シェル・キャトルの持っていた120ミリ砲の砲身が凄い勢いでクロウの横腹を直撃する。
明らかに何かが砕ける音と共に、クロウは残骸となっているテンゼンの所まで吹き飛ばされていき、装甲に、めり込むかのように叩きつけられた。
常人な間違いなく即死の一撃である。
クロウの腹からは大量の血が吹き出し、彼はそのまま気を失うのだった。




