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月光に照らされ恐ろしくも美しく輝いているシェル・キャトルの前には、クロウが立っていた。
黒いコートに、ブラックレザーのパンツを穿いており、全身が黒ずくめである。
また、髪の毛も黒く、右目が前髪で隠れている。
そんな彼の腰にあるホルスターに入っている銃は対象的に白く輝いていた。
空気は鋭く今まさにシェル・キャトルと対峙しようとしている。
「……お前はヤタガラスか?」
シェル・キャトルに向け、静かに言う。
しばらく沈黙が続く。
そして、夜の静寂をうち崩すようにシェル・キャトルの肩に装備されている可動式砲が火を噴いた。
殺意をその身に孕ませ空を切りながら発射された弾丸はクロウに直撃する。
鈍い音が拡散し、砂塵が舞う。
『ああ、そうだよ』シラサギの声は夜の静寂に木霊するのだった。
シラサギは仕留めたと確信した。
コックピットの中で堪えきれず笑声を上げるシラサギ。
「そうか、予想通りだな」その声はシラサギの笑みを引かせるには十分だった。
『……冗談だろ』
コクピットのメインカメラに映し出されている光景を見て、シラサギは目を疑うしかなかった。
可動式砲から撃ち出された弾丸はクロウの右腕にすっぽりと収まっているからだ。
弾丸の衝撃で微かに靴が地面にめり込んではいるが、外傷はまるで見当たらない。
彼は熱を帯びた弾丸を投げ捨て、夜の静寂に乾いた音が広がっていく。
そして、そのままシェル・キャトルを見据える。
『……お前は一体』
「ソレと同じだよ」
シラサギの問いにすぐさま答え、右腕をシェル・キャトルに突き出す。
右腕は一瞬で姿を変える。
黒い装甲に包まれた爪だ。
手から肩までその姿は変わり、変化前の面影はまるでない。
小さな冷却棒が幾つかその手には見受けられる。
シェル・キャトルと共に輝くその爪は正に『闇夜の爪』であった。
『ふざけるな!』
シラサギの罵声と共に銃声が響き渡る。
120ミリ砲からは硝煙が上がり、火花なと共に弾丸がクロウに迫り来る。
しかし、彼は常人のスピードでは到底、避けきれる筈のない弾丸を悠然とかわすクロウ。
高温地帯でありながら涼しげであり、まるで舞うかのように優雅であった。
そのままホルスターから『白』を取り出し、撃ち出す。
しかし、撃ち出された弾丸はシェル・キャトルの装甲に傷すらつけられず、弾かれるだけだった。
『コイツをよけたって事は……』
シラサギはすぐに間髪を入れず、もう一丁の120ミリ砲を放つ。
クロウは舌打ちをしながら避けつづけた。
彼に避けられ飛んでいく弾丸は辺りの建造物を次々に破壊していく。
シラサギは自分の見立てが当たり冷静さを取り戻す。
『流石にコイツは受けきれんみたいだな』
コックピットの中でシラサギは恐ろしい笑みを浮かべ、可動式砲も使いだしクロウを追い詰める。飛び散るコンクリートの破片が彼を襲う。
客観的に見て明らかにシラサギの方が優勢に見える。
だが、シラサギは気づいていなかった。
徐々にクロウとシェル・キャトルの距離が縮まっている事に。




