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電子戦対策室はクロウたちがいた宿舎からさらに南方にあるウォータービレイのサーマシバル軍司令部の地下にある。
司令部と対策室はエレベーターで繋がっており、それ以外では侵入は不可能。
千歳の願いを聞き入れたニナは荒っぽい運転で軍司令部まで数分でたどり着き、二人はそのエレベーターを使い、対策室に入っていった。
中にはスーパーコンピューター コロンとその他の端末機器が所狭しと点在している。
室内の温度はかなり低い。
しかし、それはパソコンの処理などによる熱暴走を防ぐためであり、致し方ない。
そう分かってはいるが、千歳は寒そうに両腕をさする。
「寒い?コレでもかなり温度を上げてある方なんだけど……」ニナは心配するかのように尋ねる。
「大丈夫です! それより……」白い息を吐きながら答える千歳。
ニナはそんな彼女を見ながら肩をすくめ微笑み、コレよ、と一つの端末を指さす。
他の端末に比べ、画面が大きく重量感がある。
外部端子の接続部分はしばらく使われてないのかホコリが溜まっていた。
ニナはそれを吹き飛ばす。
「これでコロンに直接アクセス出来るわ」
「失礼します」
ニナの横を通り過ぎ、千歳は端末の前に置いてある椅子に腰掛け、起動ボタンを押す。
すぐに機械の動作音が聞こえだし起動画面が出てくる。
その瞬間、彼女の指は凄い速さで動き始める。
画面は真っ暗になり、数字とアルファベットの羅列が所狭しと埋まっていき、彼女の瞳と指は世話しなく動き続けるのだった。
暫しそのような状態が続いたが、千歳の指は前触れも無くピタリと止まり、手を口元に持ってくる。
彼女は何か悩むと、すぐにそうする癖がある。
「どう?何か分かった?」ニナは千歳の隣に詰め寄りながら言う。
「何者かに侵入された形跡はありませんでした……」
腑に落ちないと言った表情の千歳。
ニナはそれを聞くと小さくため息をついた。
「だから言ったじゃない……不正アクセスがあれば気づくって」
ニナはそう言うが、千歳はそれでも納得はいかず、画面を凝視し続けている。
もし、謎が訪れた時、目に見える事ばかり意識してはいけない。
あらゆる観点、情報から状況を判断するのが重要なのだ。
千歳はそう兄から教えられていた。
彼女は考える。
間違いなくこの騒動は何者かがヤタガラスを手引きした筈なのだ。
軍本部にありながらシェル・キャトルが簡単に奪取されてしまったのは警備機能が動いていない証拠。
つまりは軍部全体を機能統括しているこのコロンに何らかの作用が行われたに違いないのだ。
でなければ、あれほど短時間にこれだけの惨事が起こせる筈がない。
思考を巡らせ続ける千歳。
やがて彼女はある考えを浮かばせた。
足元に置いてある、自分のカバンからノートパソコンと何本かのケーブルを取り出し端末に接続し始める。
すぐにノートパソコンの画面にも端末の画面と同じ数字の羅列が映し出される。
「どうする気?」突然の行為にニナは驚き、説明を求めた。
だが、千歳は「ちょっと……」と素っ気なく答えるだけで自分のパソコンを睨み続けている。
すぐに端末の画面上には、黒猫のアイコンが姿を現し、素早くキーボードを叩き始め、ノートパソコンを凝視する。
「やっぱり」千歳の顔がほころぶ。
「一体、どうしたの?」ニナは何が何なのか、サッパリ理解できていない様子だった。




