Dark Mystery
『黒女』
夏の暑さが抜け、少しずつ寒くなり始めた11月の事。
僕は夢の中にいた。
夢と現実の区別は案外できるものであった。
その夢。
それはとある女子との出会いという正夢になったら死ぬほど嬉しい展開だった。
見た目は中の上(僕が言えるような事ではない)と思うし、良い人に見える。
服装は制服。
恐らくあの制服は僕が通っている翼江高校の制服のはず。
しかし、さっきからあの女子が怖い顔をしているようなしていないような。
…。
ん?
……の…。
何か聞こえる。人の声だろうか。
……のせ。
何て言っているのかわからない。
…ちのせ。
「一之瀬!」
怒鳴り声によって僕は現実へと戻ったのだった。
「ん…」
ぼんやりとした意識の中にまだいた。
霞む視界の中に一人の中年男性。
目の前には眉間にしわを寄せた数学の教師。
そうだった。
まだ学校だった。
周囲の生徒は皆、僕を見ていた。
こういう時はだいたい笑いで済むはずなのだが、僕の場合は違った。
見ればわかった。
眼が違う。
あの眼はじゃまな存在に対する眼だ。
裏腹では僕に対する暴言が飛び交っているだろう。
まぁ、今更気にするような事ではないし一人なんて当たり前だから。
孤独慣れしているのだ。
普通に考えれば可笑しな人間だろうな。
数学教師はイライラしている様子をわざとわかりやすくしているような態度で教卓へ向かい授業を再開したのだった。
さて、黒板にチョークで書かれている計算式をノートに書くふりでもしてまた眠るかな。
そして僕はまた眠った。
これから身近で起こる別世界のような事件に巻き込まる事に気づかずに。




