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ミナミのおばちゃん、異世界で心の影を救います  作者: ぽそまる


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第96話:『おばちゃん、エルドの“静かな絶望”に触れる』

光が弾け、

トモエの意識はエルドの心の中へと引き込まれた。


目を開けると――

そこは、薄暗い診療所だった。


現実の診療所とよく似ている。

しかし、どこか違う。


薬棚は倒れ、

カルテは散乱し、

ベッドは空っぽ。


そして――

静かすぎる。


ユウトの声が遠くから聞こえる。


「おばちゃん……

 ここ、なんか怖い……

 音がせえへん……」


トモエは静かに答えた。


「せやな……

 ここは“静かな絶望”の世界や」


カイルの声が続く。


「エルドさんは長い間、

 誰にも弱音を吐けず、

 誰かを救い続けてきた。

 その疲れが……

 この世界を作ったんです」


リリアは胸に手を当てた。


「優しい人ほど……

 自分の心を後回しにしちゃう……

 エルドさん……

 ずっとひとりで頑張ってたんだ……」


セイルは静かに言った。


「心の世界が“診療所”なのは、

 エルドがずっと誰かを救おうとしてきた証。

 しかし……

 その診療所が壊れているのは、

 “自分自身を救えなかった”という象徴です」


トモエは散らばったカルテを拾い上げた。


そこには――

『救えなかった患者の名前』

が書かれていた。


トモエは息を呑んだ。


(エルドさん……

 あんた……

 こんなもん抱えて生きとったんか)


---


◆ ◆ ◆


◆ 診療所の奥 ―― “ひとりの医師”


診療所の奥へ進むと、

そこにエルドが座り込んでいた。


現実のエルドよりも若く、

弱々しく、

まるで“心の中のエルド”のようだった。


ユウトが震える声で言う。


「エルド先生……

 なんでこんなとこに……!」


エルドは顔を上げた。


その瞳は――

深い疲労と後悔を宿していた。


「……ぼくは……

 救えなかった……

 何人も……

 何度も……

 何度も……

 失敗した……」


リリアは涙をこぼした。


「そんな……

 そんなの……

 エルドさんのせいじゃない……!」


カイルは静かに言った。


「医師は……

 “救えなかった命”を

 自分の責任だと思い込んでしまうことがあります。

 エルドさんは……

 その重さに耐えきれなかったんです」


セイルは頷いた。


「長い年月をかけて、

 エルドは心の欠片を落とし続けた。

 その欠片が混ざり、

 “空白の影”として形になったのです」


トモエはエルドの前にしゃがみ込んだ。


「なぁ、エルドさん。

 あんた……

 ずっとひとりで抱えとったんか?」


エルドは震えた。


「……ぼくは……

 弱音を吐いちゃいけないと思ってた……

 医師だから……

 誰かを救う側だから……

 泣いちゃいけない……

 苦しんじゃいけない……

 そう思って……

 心を……

 閉じた……」


トモエは静かに言った。


「泣いてええんやで」


エルドは目を見開いた。


「……え……?」


「医師やからって、

 泣いたらあかんなんて誰が決めたんや?

 あんたも人間や。

 苦しい時は苦しいって言うてええ。

 泣きたい時は泣いたらええ」


エルドは震えた。


「……でも……

 ぼくが泣いたら……

 誰が……

 この街を……

 守る……?」


トモエはエルドの手を握った。


「守るんはあんた一人やない。

 みんなで守ったらええんや」


エルドの瞳に、

ほんの少しだけ色が戻った。


---


◆ ◆ ◆


◆ “静かな絶望”の影の出現


その瞬間――

診療所が揺れた。


壁に黒いひびが入り、

そこから黒い霧が溢れ出す。


ユウトが叫ぶ。


「おばちゃん!!

 なんか出てくるで!!」


カイルは顔を青くした。


「これは……

 “静かな絶望の影”……

 エルドさんが長年抱えてきた、

 最も深い影……!」


リリアは震えた。


「こんなの……

 エルドさん……

 どれだけ苦しかったの……!」


セイルは静かに言った。


「絶望には二種類あります。

 叫ぶ絶望と、

 静かに心を蝕む絶望。

 エルドの影は……

 後者です」


黒い霧が集まり、

巨大な影が姿を現した。


その影は――

エルドと同じ姿をしていた。


ユウトが息を呑む。


「おばちゃん……

 あれ……

 エルド先生の……

 “もうひとりの自分”や……!」


影は低い声で言った。


『……ぼくは……

 エルドの……

 “諦め”……

 “疲れ”……

 “後悔”……

 すべて……

 ここにある……』


トモエは影に向かって言った。


「エルドさんは諦めてへん。

 あんたが勝手に決めつけとるだけや」


影は揺れた。


『……エルドは……

 もう……

 立てない……

 もう……

 救えない……

 だから……

 ぼくが……

 ここにいる……』


トモエは影に近づいた。


「立てるで。

 あんたが邪魔しとるだけや」


影は震えた。


『……ぼくは……

 エルドを……

 守っている……

 これ以上……

 傷つかないように……』


トモエは影を抱きしめた。


「守るんはええ。

 せやけどな――

 “閉じ込める”のは守るんやない。

 エルドさんは前に進みたいんや。

 あんたも、それを知っとるはずや」


影は小さく揺れ、

エルドの胸の中へと溶けていった。


診療所に、

ゆっくりと光が戻り始めた。


---


◆ ◆ ◆


◆ 現実へ戻る


光が広がり、

トモエは現実へ戻ってきた。


エルドは涙を流しながら目を開けた。


ユウトが優しく言う。


「エルド先生……

 大丈夫なん……?」


エルドは涙を拭いながら微笑んだ。


「……ありがとう……

 ぼく……

 もう一度……

 前に進んでみる……」


カイルは胸を撫で下ろした。


「静かな絶望の影……

 完全に落ち着きました」


リリアは涙を拭った。


「よかった……

 本当に……よかった……」


セイルは静かに言った。


「しかし……

 空白の影は完全には消えていません。

 “混ざった欠片”の一部が……

 まだ残っています」


トモエは立ち上がった。


(まだ……

 誰かの心が泣いとる)


「よっしゃ。

 最後の欠片――

 探しに行こか」


虎柄シャツが揺れ、

おばちゃんは再び歩き出した。

ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます。


第96話では、

エルドの心の世界で“静かな絶望の影”と向き合う回

が描かれました。


エルドは長年、

誰かを救うために自分を犠牲にし続け、

弱音を吐けず、

心の欠片を落とし続けていた。


その欠片が混ざり、

空白の影として形になっていた。


今回も改善点として:


• 日常の温かい朝食シーン

• キャラの掛け合い

• 読者が共感しやすい悩み(責任感・疲弊・後悔)

• 心の世界の丁寧な描写

• おばちゃんの成長

• 次回への強い引き



これらを自然に物語へ組み込みました。


次回、第97話では

空白の影の“最後の欠片”の正体が明らかになる回

が描かれます。


これからも、おばちゃんの物語を

どうぞよろしくお願いいたします。

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