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ミナミのおばちゃん、異世界で心の影を救います  作者: ぽそまる


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第83話:『おばちゃん、空白の影と出会う』

光が弾け、

トモエの意識はミオの心の中へと引き込まれた。


目を開けると――

そこは、何もない世界だった。


空も地面もなく、

ただ白い空間が広がっている。


ユウトの声が遠くから聞こえた。


「おばちゃん!!

 そこ、どんな場所なん!?」


トモエは静かに答えた。


「……真っ白や。

 何もない。

 音も、風も、影も……

 何も感じへん」


カイルの声が続く。


「それが……

 “空白の影”の世界……」


リリアは震える声で言った。


「影が……

 何も持っていないから……

 心の世界も“空っぽ”になる……」


セイルは静かに言った。


「気をつけてください。

 空白の影は、

 “存在を消す影”。

 あなたの心まで空白にされる危険があります」


トモエは深呼吸した。


(ミオちゃん……

 あんたの心、こんなに空っぽになってしもたんか)


(うちは……

 絶対に取り戻したる)


---


◆ ◆ ◆


◆ 真っ白な世界に響く“足音”


トモエが歩き出すと、

真っ白な地面に、

小さな足跡が現れた。


ユウトの声が震える。


「おばちゃん……

 足跡……

 誰かおるんや……!」


カイルは分析するように言った。


「これは……

 ミオの心の“残り香”……

 完全に奪われたわけじゃない……」


リリアは胸に手を当てた。


「ミオちゃん……

 まだ心のどこかに“自分”が残ってる……!」


セイルは静かに言った。


「その足跡を追えば、

 空白の影の“核”に辿り着くでしょう」


トモエは頷いた。


「よっしゃ。

 行くで」


足跡を追って歩く。


しかし――

歩けば歩くほど、

世界は静かになっていく。


音が消え、

感情が薄れ、

思考がぼやけていく。


トモエは眉をひそめた。


(あかん……

 心が……

 薄くなっていく……)


ユウトの声が遠くなる。


「おばちゃん!?

 しっかりして!!」


カイルも叫ぶ。


「空白の影が……

 おばちゃんの心を……!」


リリアは涙声で言った。


「戻ってきて……!」


セイルは静かに言った。


「光の継承者。

 “自分”を忘れてはなりません。

 あなたの光は……

 あなた自身の心から生まれるのです」


トモエは拳を握った。


(せや……

 うちは……

 トモエや)


(ユウトのために、

 みんなのために、

 ミオちゃんのために……

 ここに来たんや)


(うちは……

 消えへん)


光がトモエの胸から広がり、

世界の白が少しだけ揺れた。


---


◆ ◆ ◆


◆ 空白の中心 ―― “影のない影”


足跡の終点に辿り着くと、

そこには――

小さな影が座っていた。


しかしその影は、

黒くもなく、

灰色でもなく、

ただ“透明”だった。


ユウトが息を呑む。


「おばちゃん……

 あれ……

 影なん……?」


カイルは震える声で言った。


「影なのに……

 影じゃない……

 “色”がない……」


リリアは涙をこらえた。


「こんな影……

 見たことない……」


セイルは静かに言った。


「これが……

 “空白の影”。

 心を奪う影……

 存在を薄くする影……

 世界が変わったことで生まれた、

 新しい影です」


トモエは影に近づいた。


「なぁ。

 あんた……

 ミオちゃんの心を返したって」


透明な影は、

ゆっくりと顔を上げた。


そこには――

何の感情もなかった。


怒りも、

悲しみも、

孤独も、

絶望もない。


ただ、

“空白”。


影はかすれた声で言った。


「……返せない……

 ぼくは……

 空っぽ……

 だから……

 奪うしか……

 できない……」


トモエは息を呑んだ。


(この影……

 自分が空っぽやから……

 誰かの心を奪って埋めようとしてるんや)


ユウトが叫ぶ。


「そんなの……

 あかんやろ!!」


カイルは震える声で言った。


「でも……

 この影……

 “悪意”がない……

 ただ……

 空っぽなだけ……」


リリアは涙を流した。


「空っぽだから……

 苦しいんだ……」


セイルは静かに言った。


「空白の影は、

 “生まれたばかりの影”。

 心を持たず、

 存在の意味も知らない。

 だから……

 奪うことでしか自分を保てないのです」


トモエは影の前にしゃがみ込んだ。


「なぁ。

 あんた……

 ミオちゃんの心を奪っても、

 埋まらへんやろ?」


影は震えた。


「……わからない……

 でも……

 空っぽが……

 こわい……」


トモエは影に手を伸ばした。


「怖かったんやな。

 空っぽで……

 どうしてええかわからんかったんやな」


影は揺れた。


「……こわい……

 こわい……

 こわい……」


トモエは影を抱きしめた。


「大丈夫や。

 あんたは一人やない」


影は震えながら、

トモエの胸の中で小さくなっていった。


その瞬間――

白い世界に、

小さな“色”が灯った。


---


◆ ◆ ◆


◆ ミオの心が戻る


光が広がり、

トモエは現実へ戻ってきた。


ミオはゆっくりと目を開けた。


ユウトが叫ぶ。


「ミオちゃん!!

 大丈夫なん!?」


ミオは涙を流した。


「……こわかった……

 胸が……

 空っぽになって……

 何も感じなくて……

 でも……

 誰かが……

 抱きしめてくれた……」


トモエは微笑んだ。


「うちや。

 あんたの心、ちゃんと取り戻したで」


ミオは泣きながらトモエに抱きついた。


「ありがとう……

 ありがとう……」


カイルは胸を撫で下ろした。


「空白の影……

 完全に消えたわけじゃないけど……

 ミオからは離れました」


リリアは涙を拭った。


「よかった……

 本当に……よかった……」


セイルは静かに言った。


「しかし……

 空白の影は“生まれたばかり”。

 世界のどこかに、

 まだ存在しているでしょう」


トモエは立ち上げった。


(空白の影……

 あれは“悪”やない)


(ただ……

 生まれたばかりの影や)


(せやけど……

 放っといたら危ない)


「よっしゃ。

 空白の影――

 全部見つけて、

 全部抱きしめたる」


虎柄シャツが揺れ、

おばちゃんは新しい影を追う決意を固めた。

ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます。


第83話では、

ミオの心の世界で“空白の影”と対峙する回

が描かれました。


空白の影は、

痛みも怒りも孤独も絶望も持たない、

ただ“空っぽ”な影。


悪意はない。

ただ“存在が怖い”だけ。


だからこそ、

誰かの心を奪って埋めようとする――

非常に危険な影。


おばちゃんはその影を抱きしめ、

ミオの心を取り戻しました。


しかし空白の影はまだ世界に存在し、

これからも人々の心に触れようとするでしょう。


次回、第84話では

空白の影が“次に狙う心”が明らかになり、

おばちゃんたちが新たな影の気配を追う

物語が描かれます。


これからも、おばちゃんの物語を

どうぞよろしくお願いいたします。

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