第82話:『おばちゃん、新しい影が潜む心へ踏み込む』
新しい影の足跡を追い、
トモエたちは街へ戻ってきた。
影の残滓は、
まるで“誰かを探すように”
街の中へと続いていた。
ユウトが息を切らしながら言う。
「おばちゃん……
影の跡、まだ続いとる……!」
カイルは地面に残る黒い染みを見つめた。
「この影……
形を持たないまま、
街の中を漂っている……」
リリアは胸に手を当てた。
「誰かの心に……
入り込もうとしてる……?」
セイルは静かに頷いた。
「新しい影は“空っぽ”。
だからこそ、
“心の隙間”を探しているのです」
トモエは拳を握った。
(心の隙間……
誰にでもあるもんや)
(せやけど……
影が入り込んだら危ない)
「急ぐで。
この影、誰かに取り憑く前に止めるんや」
---
◆ ◆ ◆
◆ 影の足跡が向かった先 ―― 学校
影の跡は、
街の中心にある学校へと続いていた。
ユウトが驚く。
「おばちゃん……
学校に向かってるで……!」
カイルは眉を寄せた。
「子どもたちの心は、
影にとって“入り込みやすい”……
危険です」
リリアは震える声で言った。
「誰か……
影に触れた子がいる……?」
セイルは静かに言った。
「新しい影は、
“空白”を求める。
心が弱っている子どもがいれば……
そこへ入り込むでしょう」
トモエは学校の門を見つめた。
(子どもに取り憑くなんて……
絶対にさせへん)
「行くで、みんな」
---
◆ ◆ ◆
◆ 教室 ―― “空白”を抱えた少女
学校に入ると、
教師たちが慌てていた。
一人の先生がトモエたちに気づき、
駆け寄ってきた。
「あなたたち……!
助けてください……!」
トモエは落ち着いた声で言った。
「何があったんや?」
先生は震える声で答えた。
「生徒の一人が……
突然、教室で倒れて……
意識はあるのに……
“何も感じない”と言うんです……!」
ユウトが息を呑む。
「何も……感じない……?」
カイルは顔を青くした。
「それ……
“空っぽの影”の症状です……!」
リリアは震えた。
「影が……
心の中に入り込んだ……?」
セイルは静かに言った。
「新しい影は、
“感情の空白”を作る。
その子は……
影に触れたのでしょう」
トモエは先生に言った。
「その子、どこにおる?」
先生は震えながら答えた。
「保健室に……
います……」
---
◆ ◆ ◆
◆ 保健室 ―― “空っぽの影”の宿主
保健室に入ると、
一人の少女がベッドに座っていた。
年はユウトと同じくらい。
髪は肩までの黒髪。
表情は――
まるで“感情が抜け落ちた”ように無表情だった。
ユウトが息を呑む。
「おばちゃん……
この子……!」
少女はゆっくりと顔を上げた。
その瞳は、
深い闇でも、
強い怒りでも、
孤独でも、
絶望でもなかった。
ただ――
空っぽだった。
トモエは少女の前にしゃがみ込んだ。
「なぁ。
あんた……
名前は?」
少女は小さく答えた。
「……ミオ……」
リリアは胸を押さえた。
「声が……
震えてる……
でも……
感情がない……」
カイルは少女の影を見つめた。
「影が……
揺れている……
でも……
“痛み”がない……」
セイルは静かに言った。
「新しい影は、
“感情を奪う影”。
ミオの心の中に入り込み、
感情を空白にしているのです」
トモエはミオの手を握った。
「ミオちゃん。
何があったん?」
ミオはゆっくりと答えた。
「……わからない……
気づいたら……
胸が……
空っぽになってた……」
ユウトが震える声で言う。
「おばちゃん……
この子……
怖かったやろな……」
トモエはミオの影を見つめた。
影は、
まるで“何かを探すように”
揺れていた。
(この影……
まだ完全に取り憑いてへん)
(今なら……
ミオちゃんの心に入れる)
「よっしゃ。
ミオちゃんの心の中に入って、
この影を追い出したる」
カイルが驚く。
「おばちゃん先生……
心の中に……!?」
リリアは震えた。
「危険です……
新しい影は未知の存在……!」
セイルは静かに言った。
「しかし……
ミオを救えるのは、
光の継承者だけです」
トモエは頷いた。
「ミオちゃん。
うち、あんたの心に入ってもええか?」
ミオは小さく頷いた。
「……助けて……
ほしい……」
トモエはミオの手を握り、
静かに目を閉じた。
(ミオちゃん……
あんたの心、守ったる)
光が弾け、
トモエの意識は――
ミオの心の中へと引き込まれた。
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます。
第82話では、
新しい影が“最初に狙った人物”――ミオという少女
が明らかになりました。
新しい影は、
痛みも怒りも孤独も絶望も持たない、
ただ“空白”だけを抱えた影。
その影は、
人の心に入り込み、感情を奪う
という危険な存在。
ミオはその最初の宿主となり、
おばちゃんは彼女の心の中へ踏み込む決意をしました。
次回、第83話では
ミオの心の世界で、おばちゃんが“空白の影”と対峙する
物語が描かれます。
これからも、おばちゃんの物語を
どうぞよろしくお願いいたします。




