第71話:『おばちゃん、影の王の正体を知る』
絶望の影を癒したあと、
影の神殿の奥へと続く道は、
静かで、冷たく、そしてどこか懐かしい気配を帯びていた。
ユウトが不安そうに言う。
「おばちゃん……
なんか……空気が変わった気がする……」
カイルは神殿の壁に刻まれた古代文字を見つめながら言った。
「ここから先は……
“影の王”の領域です。
影の根源に最も近い場所……」
リリアは胸に手を当てた。
「絶望の影が癒されたのに……
影の王の気配は、むしろ強くなってる……」
セイルは静かに頷いた。
「四つの影が癒されたことで、
影の王は“本来の姿”を現そうとしています。
あなたがここまで辿り着くのを……
待っていたのです」
トモエは拳を握った。
(影の王……
あんたは敵やない。
せやけど……
あんたの影は、世界中の痛みを背負っとる)
(うちは……
その痛みを受け止めるために来たんや)
「行くで、みんな」
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◆ ◆ ◆
◆ 影の王の間 ―― 世界の影の中心
神殿の最奥に辿り着くと、
そこは広い空間だった。
天井は高く、
壁には光と影が揺れ、
まるで世界そのものが呼吸しているようだった。
ユウトが息を呑む。
「おばちゃん……
ここ……
なんか……生きてるみたいや……」
カイルは魔力を探りながら言った。
「影の密度……
今までの比じゃない……
ここが……影の王の中心……!」
リリアは震える声で言った。
「こんな……
こんな場所……
人が入っていいの……?」
セイルは静かに言った。
「光の継承者だけが辿り着ける場所です。
あなたが来たからこそ、
影の王は姿を現すでしょう」
そのとき――
空間の中央に、黒い霧が集まり始めた。
――スゥ……
霧は渦を巻き、
ゆっくりと人の形を作り始める。
ユウトが叫ぶ。
「おばちゃん!!
あれ……!」
カイルは震える声で言った。
「影の王……
姿を現した……!」
リリアは息を呑んだ。
「こんな……
こんな大きな影……!」
セイルは静かに言った。
「これが……
世界の影の王……」
霧が完全に形を成した。
その姿は――
黒いローブをまとった、
背の高い“人影”。
しかしその顔は、
どこか悲しげで、
どこか優しげで、
どこか……懐かしかった。
トモエは思わず呟いた。
「……あんた……
なんでそんな顔しとるん?」
影の王は、
ゆっくりと口を開いた。
『……光の継承者よ……
ようやく……来たか……』
その声は、
深く、重く、
しかしどこか温かかった。
ユウトが震える声で言う。
「おばちゃん……
影の王……
なんか……悲しそうや……」
カイルは息を呑んだ。
「影の王は……
世界中の悲しみを背負っている……
だから……
こんな表情に……」
リリアは涙をこらえた。
「影の王は……
悪い存在じゃない……
ただ……
苦しんでいるだけ……」
セイルは静かに言った。
「影の王は、
“世界の心の影”。
世界中の痛み、悲しみ、絶望……
すべてを背負って生まれた存在です」
トモエは影の王に近づいた。
「影の王。
あんた……
何を望んどるん?」
影の王は、
ゆっくりとトモエを見つめた。
『……我は……
救われたい……』
ユウトが息を呑む。
「おばちゃん……
影の王……
助けてほしいって……!」
カイルも震える声で言った。
「影の王は……
世界の影そのもの……
でも……
その中心には……
“救われたい心”がある……!」
リリアは涙を流した。
「影は……
心の叫び……
世界の影は……
世界の叫び……!」
影の王は続けた。
『……光よ……
我は……
世界の痛みを背負い……
世界の涙を受け止め……
世界の絶望を抱え……
壊れかけている……』
トモエは胸が締めつけられた。
(影の王……
あんたは……
世界中の痛みを一人で抱えてきたんか)
影の王は、
震える声で言った。
『……光よ……
我を……
救ってくれ……』
トモエは影の王に手を伸ばした。
「救うで。
あんたの痛み……
全部、うちが受け止めたる」
影の王は揺れた。
『……光よ……
本当に……
我を……
受け入れるのか……?』
トモエは頷いた。
「光はな……
影を照らすだけやない。
影と一緒に歩くもんや」
影の王は、
ゆっくりと手を伸ばした。
二人の手が触れた瞬間――
――ドォォォォォン!!
神殿全体が揺れ、
光と影が渦を巻いた。
ユウトが叫ぶ。
「おばちゃん!!」
カイルも声を上げた。
「影の王が……
おばちゃんに……!」
リリアは涙をこらえた。
「おばちゃんさん……
どうか……!」
セイルは静かに言った。
「これは……
光と影の“融合”。
影の王の心が……
光に触れようとしているのです」
トモエは影の王の手を握り返した。
(影の王……
あんたは一人やない)
(うちは……
あんたを救うために来たんや)
「一緒に行こ。
影の王」
影の王は、
初めて――
微笑んだ。
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます。
第71話では、
影の王の正体――“世界の心の影”
がついに明らかになりました。
影の王は敵ではなく、
世界中の痛み、悲しみ、絶望を背負って生まれた存在。
その中心にあったのは、
“救われたい”という切実な願いでした。
おばちゃんはその願いに応え、
影の王と向き合い、
ついに“光と影の融合”が始まります。
次回、第72話では
影の王の心の奥へ入り込み、
世界の影の本当の姿と向き合う
物語が描かれます。
これからも、おばちゃんの物語を
どうぞよろしくお願いいたします。




