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ミナミのおばちゃん、異世界で心の影を救います  作者: ぽそまる


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第70話:『おばちゃん、絶望の影の涙に触れる』


影の神殿の入口に立った瞬間、

トモエたちは息を呑んだ。


中から響いてくる声は、

これまで聞いたどんな影よりも深く、

重く、

冷たかった。


ユウトが震える声で言う。


「おばちゃん……

 この声……

 胸がぎゅってなる……」


カイルは額に汗を浮かべながら言った。


「絶望の影……

 沈黙、怒り、孤独とは比べ物にならない……

 心の底から漏れる“折れた声”です」


リリアは胸を押さえた。


「こんな……

 こんな悲しい声……

 聞いているだけで涙が出る……」


セイルは静かに頷いた。


「絶望の影は、

 “心が完全に折れた人”の影。

 影の王に最も近い影です」


トモエは拳を握った。


(絶望の影……

 あんたはどれだけ泣いてきたんや)


(うちは……

 その涙、受け止めたる)


「行くで、みんな」


---


◆ ◆ ◆


◆ 神殿の中 ―― 絶望の影の気配


神殿の中は薄暗く、

壁には古代の文字が刻まれていた。


ユウトが不安そうに言う。


「おばちゃん……

 なんか……

空気が重い……」


カイルは魔力を探りながら言った。


「絶望の影の波動……

 この神殿全体に満ちています」


リリアは震える声で言った。


「ここにいるだけで……

 心が沈んでいく……」


セイルは静かに言った。


「絶望は“心の底”に沈む影。

 触れれば、誰でも心を奪われます」


トモエは前に進んだ。


(絶望の影……

 あんたは一人で泣いとるんやな)


(うちは……

 その涙を聞いたる)


そのとき――

神殿の奥から、

かすれた声が響いた。


『……もう……いい……

 もう……歩けない……

 もう……生きられない……』


ユウトが涙をこらえながら言う。


「おばちゃん……

 この声……

 聞いとるだけで苦しい……!」


カイルは震える声で言った。


「絶望の影……

 どれだけ深い痛みを抱えて……」


リリアは涙を流した。


「こんな……

 こんな悲しい声……

 放っておけない……!」


セイルは静かに言った。


「絶望の影の核は、

 “心が折れた人”の影。

 その人は……

 自分の価値を完全に見失っています」


トモエは拳を握った。


「絶望の影……

 あんたの声、聞かせて」


---


◆ ◆ ◆


◆ 絶望の影の核 ―― 一人の少女


神殿の最奥に辿り着くと、

そこには――

一人の少女が座り込んでいた。


年はユウトより少し上くらい。

白い髪が肩にかかり、

その身体は黒い霧に包まれていた。


ユウトが息を呑む。


「おばちゃん……

 あの子……!」


カイルは震える声で言った。


「絶望の影の核……

 あの少女……!」


リリアは涙をこらえた。


「こんなに……

 小さな子が……

 絶望の影を……?」


セイルは静かに言った。


「絶望は、年齢に関係なく生まれます。

 彼女は……

 誰にも助けを求められず、

 心が折れてしまったのでしょう」


少女はかすれた声で呟いた。


「……誰も……

 わたしを……

 見てくれなかった……」


トモエは少女の前にしゃがみ込んだ。


「なぁ。

 あんた……

 何があったん?」


少女は震えた。


「……わたし……

 ずっと……

 ひとりだった……」


ユウトが涙をこらえながら言う。


「そんな……

 そんなの……辛すぎる……!」


少女は続けた。


「……助けて……

 ほしかった……

 でも……

 誰も……

 気づいてくれなかった……」


カイルは胸を押さえた。


「孤独とは違う……

 これは……

 “助けを求めても届かなかった絶望”……!」


リリアは涙を流した。


「誰かに気づいてほしかった……

 それが叶わなかった……

 その痛みが……絶望に……!」


セイルは静かに言った。


「絶望の影は、

 “救われなかった心”の影です」


トモエは少女の手を握った。


「なぁ。

 あんた……

 助けてほしかったんやな」


少女は涙を流した。


「……うん……

 でも……

 誰も……

 来てくれなかった……」


トモエは優しく言った。


「来たで。

 今、うちがここにおる」


少女は目を見開いた。


「……え……?」


トモエは微笑んだ。


「うちはあんたを見とる。

 あんたの声、ちゃんと聞いとる」


少女は震えた。


「……わたし……

 本当に……

 見えてる……?」


トモエは頷いた。


「見えてる。

 あんたはここにおる。

 ちゃんと、生きとる」


少女は泣き崩れた。


「……こわかった……

 ずっと……

 こわかった……!!」


トモエは少女を抱きしめた。


「せやな。

 怖かったんやな。

 もう大丈夫や。

 うちはここにおる」


少女の身体を包んでいた黒い霧が、

ゆっくりと光に溶けていった。


絶望の影の核は――

癒された。


---


◆ ◆ ◆


◆ 絶望の影の消滅、そして――


絶望の影が消えた瞬間、

神殿全体が静かになった。


ユウトが涙を拭いながら言う。


「おばちゃん……

 絶望の影……

 救われたんやな……!」


カイルも胸に手を当てた。


「これで……

 四つの影すべてが癒されました……!」


リリアは涙を流した。


「少女さん……

 本当に……よかった……!」


セイルは静かに言った。


「しかし……

 影の王の気配は、

 さらに強まっています」


トモエは空を見上げた。


(影の王……

 あんたの影、

 全部癒したで)


(次は……

 あんた自身や)


「よっしゃ。

 影の王に会いに行くで!」


虎柄シャツが風に揺れ、

おばちゃんは影の王の元へ向かって歩き出した。

ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます。


第70話では、

絶望の影の核――“救われなかった少女の心”

が描かれました。


絶望は、

“助けを求めても届かなかった痛み”から生まれる影。


少女が抱えていたのは、

弱さではなく、

“誰かに気づいてほしい”という切実な願いでした。


おばちゃんの光は、

その願いに応え、

絶望の影を癒しました。


これで四つの影はすべて癒され、

物語はいよいよ 影の王との対峙 へ突入します。


次回、第71話では

影の王の正体と、その心に秘められた真実

が明らかになります。


これからも、おばちゃんの物語を

どうぞよろしくお願いいたします。

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