第69話:『おばちゃん、絶望の影の気配を感じる』
孤独の影を癒し、
雪原の村に“つながり”が戻ったあと。
トモエたちは村を後にし、
さらに北へ向かって歩き出した。
ユウトが白い息を吐きながら言う。
「おばちゃん……
孤独の影、ほんまに消えてよかったなぁ……」
カイルは頷きながら言った。
「沈黙、怒り、孤独……
これで三つの影が癒されました。
残るは“絶望の影”だけです」
リリアは胸に手を当てた。
「絶望の影……
四つの影の中で、
最も深く、最も重い影……」
セイルは静かに言った。
「絶望は、心が完全に折れたときに生まれる影。
影の王に最も近い影です」
トモエは空を見上げた。
(絶望の影……
心が折れたときに生まれる影……)
(うちも……
昔は何度も折れそうになったことがある)
(せやけど……
折れへんかったのは、
誰かがそばにいてくれたからや)
「よっしゃ。
絶望の影、癒したるで!」
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◆ ◆ ◆
◆ 古代の大陸へ向かう道
雪原を抜けると、
景色は一変した。
白い世界から、
灰色の荒野へ。
ユウトが驚く。
「おばちゃん……
なんか……
急に景色が変わったで……!」
カイルは地面を見つめながら言った。
「ここは“古代の大陸”へ続く道……
昔、影と光が最初に生まれた場所です」
リリアは震える声で言った。
「絶望の影は……
この大陸のどこかに……?」
セイルは頷いた。
「影の王の気配が、
この大陸全体に広がっています。
絶望の影は、その中心にいるはずです」
トモエは拳を握った。
(絶望の影……
影の王に一番近い影)
(うちは……
その影を癒さなあかん)
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◆ ◆ ◆
◆ 荒野に響く“泣き声”
荒野を進んでいると、
突然、風が止まった。
――スゥ……
ユウトが身をすくめる。
「おばちゃん……
なんか聞こえへん?」
カイルも耳を澄ませた。
「これは……
“泣き声”……?」
リリアは顔を青くした。
「こんな……
こんな悲しい声……
聞いたことない……」
セイルは静かに言った。
「絶望の影の気配です。
絶望は、心が完全に折れたときに生まれる影。
その泣き声は……
世界中の悲しみを集めたような声です」
トモエは胸を押さえた。
(胸が痛い……
この声……
聞いとるだけで心が締めつけられる)
(絶望の影……
どれだけ苦しんどるんや)
「みんな、気ぃつけて進むで」
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◆ ◆ ◆
◆ 古代の遺跡 ―― 絶望の影の入口
荒野の奥に、
巨大な石造りの遺跡が現れた。
ユウトが息を呑む。
「おばちゃん……
あれ……!」
カイルは震える声で言った。
「古代の大陸の中心……
“影の神殿”……!」
リリアは胸を押さえた。
「絶望の影は……
この中に……?」
セイルは頷いた。
「影の王の気配が、
この神殿の奥から溢れています。
絶望の影は……
影の王の“すぐそば”にいるはずです」
トモエは神殿を見上げた。
(影の王……
あんたの影、
もうすぐや)
(絶望の影……
うちはあんたを癒したる)
そのとき――
神殿の奥から、
かすれた声が響いた。
『……たすけて……
もう……いや……
もう……むり……』
ユウトが震える。
「おばちゃん……
これ……
絶望の影の声や……!」
カイルは息を呑んだ。
「こんな……
こんな悲しい声……!」
リリアは涙を流した。
「絶望の影……
どれだけ苦しんで……
どれだけ泣いて……」
セイルは静かに言った。
「絶望の影は、
“心が完全に折れた人”の影。
その痛みは……
沈黙や怒りや孤独とは比べ物になりません」
トモエは拳を握った。
(絶望の影……
あんたは一人で泣いとるんやな)
(うちは……
その涙、受け止めたる)
「よっしゃ。
絶望の影、助けに行くで!」
虎柄シャツが灰色の風に揺れ、
おばちゃんは影の神殿の奥へと踏み込んだ。
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます。
第69話では、
絶望の影の気配が漂う“古代の大陸”へ向かう旅の始まり
が描かれました。
絶望の影は、
沈黙・怒り・孤独とは比べものにならないほど深い影。
その声は、
“心が完全に折れた人の叫び”。
影の王の気配も強まり、
物語はいよいよ最終章へ突入します。
次回、第70話では
絶望の影の正体が明らかになり、
おばちゃんがその深い痛みと向き合う
物語が描かれます。
これからも、おばちゃんの物語を
どうぞよろしくお願いいたします。




