第62話:『おばちゃん、世界に広がる影の波動を聞く』
影の波を鎮めたあと、
森の空気はどこか張りつめていた。
ユウトが空を見上げながら言う。
「おばちゃん……
なんか、空の色……変やない?」
カイルも眉を寄せた。
「影の濃度……
さっきよりも高くなっています。
これは“自然な影”ではありません」
リリアは胸に手を当て、
震える声で呟いた。
「まるで……
世界そのものが怯えているみたい……」
トモエは胸の奥に意識を向けた。
そこには、ルクス――影の心の気配がある。
『……光よ……
この影は……我ではない……』
(ルクスでもない影……
せやったら、誰の影なんや)
セイルが険しい表情で言った。
「光の継承者。
あなたが感じているのは――
“世界規模の影の波動”です」
ユウトが驚く。
「世界規模……!?」
カイルは息を呑んだ。
「そんな影……
本当に存在するんですか……?」
セイルは静かに頷いた。
「存在します。
“影の王”と呼ばれる存在が」
リリアは顔を青くした。
「影の……王……?」
トモエは眉をひそめた。
「影の王って……
影の根源とは違うんか?」
セイルはゆっくりと説明した。
「影の根源は“個人の影”が極限まで膨らんだもの。
しかし影の王は――
世界中の負の感情が集まって生まれる“集合影”」
ユウトが震える声で言う。
「世界中の……
悲しみとか、不安とか……
全部集まって……?」
カイルは拳を握った。
「そんな存在……
どうやって対処すれば……」
セイルは首を振った。
「倒すのではありません。
“理解”するのです」
リリアは息を呑んだ。
「影の王を……理解……?」
トモエは胸に手を当てた。
(影は悪やない。
心の一部や)
(せやけど……
世界中の心の影が集まった存在……
それは……うち一人でどうにかできるんか?)
そのとき――
湖の水面が揺れた。
――ザワァ……
黒い霧が水面に映り、
巨大な影の“輪郭”が浮かび上がった。
ユウトが叫ぶ。
「おばちゃん!!
あれ……!」
カイルは震える声で言う。
「影の王の……
“影”……!」
リリアは顔を青くした。
「こんな……
こんな大きな影……!」
セイルは静かに言った。
「これは本体ではありません。
影の王があなたに送った“予兆”です」
影の輪郭はゆっくりと口を開いた。
『……光よ……
お前が影を受け入れたなら……
次は……
“世界の影”を見よ……』
ユウトが震える。
「世界の……影……?」
影は続けた。
『……影は心から生まれる……
ならば……
世界の影は……
世界の心……』
カイルは息を呑んだ。
「世界の……心……?」
リリアは涙をこらえながら言った。
「そんな……
そんなもの……
どうやって……?」
トモエは影に向かって叫んだ。
「影の王!
あんたは何がしたいんや!」
影は静かに答えた。
『……光よ……
我を……
“救え”……』
そして影は消えた。
ユウトは震える声で言った。
「おばちゃん……
影の王……
助けてほしいって……?」
カイルも驚く。
「影の王が……
救いを求めている……?」
リリアは涙を流した。
「影は……
誰かの心の叫び……
世界の影は……
世界の叫び……?」
セイルは静かに言った。
「光の継承者。
あなたの旅はここからが本番です」
トモエは胸に手を当てた。
(影の王……
あんたは敵やない)
(うちは……
あんたを救う)
「よっしゃ。
世界の影、見に行くで!」
虎柄シャツが風に揺れ、
おばちゃんは新たな旅へ踏み出した。
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます。
第62話では、
ついに “影の王”という世界規模の影の存在 が明かされました。
影の王は敵ではなく、
“世界の心の影”そのもの。
そして、
おばちゃんに向かって「救え」と告げるという、
これまでとはまったく違うスケールの物語が始まります。
光と影の調和を得たおばちゃんが、
世界の影とどう向き合うのか――
ここから物語は新章へ突入します。
次回、第63話では
影の王の気配を追い、最初の“世界の影”の地へ向かう旅の始まり
が描かれます。
これからも、おばちゃんの物語を
どうぞよろしくお願いいたします。




