第59話:『おばちゃん、影が映す未来を見る』
ユウトの影が光に溶けたあと、
森の空気は一瞬だけ静まり返った。
しかし――
その静寂は長く続かなかった。
――スゥ……
冷たい風が吹き抜け、
木々がざわめき始める。
カイルが杖を握りしめた。
「また……影の気配が強くなってきました……!」
リリアは胸に手を当てる。
「これは……
さっきまでの影とは違う……
もっと……深い……」
セイルは静かに言った。
「三つ目の試練が始まります。
“未来の影”――
光の継承者が最も恐れるものです」
トモエは息を呑んだ。
(未来の影……
うちが恐れとる未来……?)
(そんなもん……
考えたこともなかったわ)
ユウトが不安そうに言う。
「おばちゃん……
大丈夫なん?」
トモエは笑ってみせた。
「大丈夫や。
未来なんて、誰でも怖いもんや」
しかし胸の奥は、
ざわざわと落ち着かない。
(未来……
うちが恐れとる未来って……なんや)
そのとき――
森の奥が光り、
景色がゆっくりと歪み始めた。
---
◆ ◆ ◆
◆ 影が作り出した“未来の世界”
気づけば、
トモエたちは森ではなく、
見知らぬ街の中に立っていた。
ユウトが驚く。
「えっ……ここ……どこ……?」
カイルは周囲を見渡しながら言う。
「これは……幻覚ではありません。
“未来の可能性”を映した空間……!」
リリアは震える声で言った。
「影の心……ルクスが見せている……
“未来の影”……!」
セイルは静かに頷いた。
「光の継承者が恐れる未来。
それが形になっているのです」
トモエは周囲を見渡した。
そこは――
見覚えのある街だった。
(ここ……
うちらの街や)
しかし、
街は静まり返り、
人の姿がない。
建物は崩れ、
黒い霧が漂っている。
ユウトが震える声で言う。
「おばちゃん……
これ……街が……」
カイルは息を呑んだ。
「影に……飲まれている……!」
リリアは涙をこらえた。
「こんなの……
こんな未来……嫌です……!」
トモエは拳を握った。
(これは……
うちが恐れとる未来)
(うちが守れへんかった未来)
(うちが……
みんなを救えへんかった未来)
そのとき――
黒い霧の中から、
人影がゆっくりと現れた。
ユウトが叫ぶ。
「おばちゃん!!
誰かおる!!」
霧の中から現れたのは――
“未来のユウト”だった。
しかしその姿は、
どこか影に侵されている。
目は虚ろで、
身体から黒い霧が漏れていた。
未来のユウトは、
かすれた声で呟いた。
「……おばちゃん……
どうして……
助けてくれへんかったん……?」
ユウトは青ざめた。
「えっ……
僕……?」
カイルは震える声で言う。
「これは……
ユウトくんの“未来の影”……!」
リリアは涙を流した。
「こんなの……
こんなの未来じゃない……!」
トモエは未来のユウトに近づいた。
「ユウト……
あんた……どうしたんや」
未来のユウトは、
悲しげに言った。
「……おばちゃんが……
いなくなったから……
僕……
影に飲まれてもうた……」
ユウトは叫んだ。
「そんな未来、絶対に嫌や!!
おばちゃんは……
僕を置いていかへん!!」
未来のユウトは首を振った。
「……未来は……
変わる……
おばちゃんが……
光を失ったら……
僕らは……
影に飲まれる……」
トモエは胸が締めつけられた。
(うちが光を失ったら……
みんなが影に飲まれる)
(それが……
うちの恐れとる未来なんや)
未来のユウトは、
手を伸ばしてきた。
「……おばちゃん……
光を……
失わんといて……」
トモエはその手を握った。
「失わへん。
絶対に失わへん」
「うちは……
あんたらと一緒に光るんや」
未来のユウトは揺れ、
ゆっくりと光に溶けていった。
ユウトは涙をこらえながら言った。
「おばちゃん……
僕……
絶対におばちゃんを支えるで……!」
カイルも胸に手を当てた。
「未来は……
恐れるものじゃない……
作るものです……!」
リリアは涙を拭った。
「おばちゃんさん……
あなたの光は……
未来を照らす光……!」
セイルは静かに言った。
「三つ目の試練は完了です。
未来の影を受け入れたことで、
あなたの光はさらに強くなった」
トモエは深呼吸した。
(ルクス……
あんたはうちに“未来を恐れるな”って言いたかったんやな)
「よっしゃ。
次はルクス本人に会いに行くで!」
虎柄シャツが風に揺れ、
おばちゃんは未来への恐れを乗り越え、
さらに強い光を胸に進み始めた。
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます。
第59話では、
第三の試練=未来の影 として、
おばちゃんが“自分が光を失った未来”と向き合う回を描きました。
未来のユウトが影に飲まれた姿は、
おばちゃんの深層にある恐れそのもの。
しかし、
その未来は“決定された未来”ではなく、
“恐れが作り出した未来”。
光を失わない限り、
未来は変えられる。
次回、第60話では
ルクスとの再会と、影の心の真意
が描かれます。
読んでくださる皆さまの応援が、
私にとっての“光”です。
これからも、おばちゃんの物語を
どうぞよろしくお願いいたします。




