第58話:『おばちゃん、仲間の影と向き合う』
影の結界を抜け、
トモエたちは再び森の中へ戻ってきた。
ユウトが息を整えながら言う。
「おばちゃん……
さっきの試練、ほんまに大丈夫やったん?」
トモエは笑って頷いた。
「大丈夫や。
うちはもう一人やない。
みんながおるからな」
カイルは真剣な表情で言った。
「でも……
影の心“ルクス”は、
まだ次の試練を用意しているはずです」
リリアは胸に手を当てた。
「影は……
光の継承者だけでなく、
“周囲の心”にも反応します」
セイルは静かに言った。
「次の試練は――
仲間の影 でしょう」
ユウトが驚く。
「仲間の……影……?」
セイルは頷いた。
「光の継承者の旅は、
“自分の影”だけでは終わりません。
共に歩む者の影もまた、
光の継承者に影響を与える」
トモエは胸がざわつくのを感じた。
(仲間の影……
誰の影なんやろ)
(ユウト?
カイル?
リリアさん?
それとも……セイルさん?)
そのとき――
――スゥ……
森の奥から、
冷たい風が吹いた。
ユウトが身を震わせる。
「おばちゃん……
また影の気配や……!」
カイルが杖を構える。
「さっきより……
ずっと強い……!」
リリアは顔を青くした。
「これは……
“誰かの心の影”が暴走している……!」
セイルは静かに言った。
「来ます」
影の気配が一気に濃くなり、
森の木々が揺れた。
そして――
黒い霧が渦を巻き、
人の形を作り始めた。
ユウトが叫ぶ。
「おばちゃん!!
また影や!!」
カイルは震える声で言う。
「でも……
さっきの影とは違う……
もっと……苦しんでる……!」
リリアは息を呑んだ。
「これは……
“誰かの心の叫び”……!」
トモエは影を見つめた。
影は、
どこかユウトに似た輪郭をしていた。
ユウトが青ざめる。
「えっ……
これ……僕……?」
影は震えながら、
かすれた声で呟いた。
「……こわい……
おばちゃんが……
いなくなるのが……」
ユウトは目を見開いた。
「そ、そんな……
僕……そんなこと……!」
カイルは息を呑んだ。
「ユウト……
これは……
君の“影”だよ」
リリアは涙をこらえながら言った。
「心の奥にある不安……
それが影として現れたんです……!」
ユウトは震えた。
「僕……
おばちゃんがいなくなるのが怖いなんて……
そんなこと……思ってへん……!」
影は叫んだ。
「……こわい……
おばちゃんが……
どこかへ行ってしまう……
僕を置いて……」
ユウトは胸を押さえた。
「やめて……
そんなこと言わんといて……!」
トモエはユウトの肩に手を置いた。
「ユウト。
あんたの心の影や。
逃げたらあかん」
ユウトは涙をこらえながら言った。
「でも……
僕……
おばちゃんに頼りすぎてるんや……?」
トモエは優しく微笑んだ。
「頼ってええんやで。
頼ることは悪いことやない」
影は震えながら言った。
「……でも……
僕は弱い……
おばちゃんがいなかったら……
何もできへん……」
ユウトは影を見つめた。
「そんなこと……
ない……!」
トモエはユウトの背中を押した。
「ユウト。
あんたの言葉で、
あんた自身の影を救ったり」
ユウトは涙を拭い、
影に向き合った。
「僕は……
弱いかもしれへん。
でも……
おばちゃんと一緒に歩いて、
強くなりたいって思ったんや!」
影は揺れた。
ユウトは続けた。
「おばちゃんがいなくなるのが怖いのは……
僕が、おばちゃんを大事に思ってるからや!」
「でも……
僕はもう逃げへん!
おばちゃんと一緒に……
光になりたいんや!!」
影は震え、
ゆっくりと光に溶けていった。
リリアは涙を流した。
「ユウトくん……
あなたは……
とても強い……!」
カイルも胸に手を当てた。
「影を受け入れた……
それは本当の強さだよ」
セイルは静かに言った。
「これが“二つ目の試練”。
仲間の影を理解し、
受け入れること」
トモエはユウトの頭を撫でた。
「ユウト。
あんたはもう立派な光や」
ユウトは涙をこらえながら笑った。
「おばちゃん……
ありがとう……!」
トモエは空を見上げた。
(ルクス……
あんたはうちらに“影を受け入れろ”って言いたいんやな)
「よっしゃ。
次の試練も受けて立つで!」
虎柄シャツが風に揺れ、
おばちゃんたちはさらに深い影の領域へと進んでいった。
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます。
第58話では、
二つ目の試練=仲間の影 として、
ユウトの心の奥に潜む“不安”が影として現れました。
ユウトの影は、
「おばちゃんを失う恐怖」。
それは依存ではなく、
“大切な人を失いたくない”という
誰もが抱える自然な感情。
影は悪ではなく、
心の一部。
それを受け入れたユウトは、
一段と強い光へと成長しました。
次回、第59話では
三つ目の試練=“影が映す未来”
が描かれます。
読んでくださる皆さまの応援が、
私にとっての“光”です。
これからも、おばちゃんの物語を
どうぞよろしくお願いいたします。




