第51話:『おばちゃん、影に狙われた者を知る』
南の遺跡の奥で見つかったアリアの手紙。
そこに書かれていた言葉は、
トモエたちの胸に重くのしかかった。
『心を喰らう影は、あなたのすぐ近くにいる』
ユウトが震える声で言う。
「おばちゃん……
“すぐ近く”って……どういうことなん?」
カイルも不安そうに眉を寄せる。
「まさか……
誰かが影に取り憑かれている……?」
リリアは唇を噛んだ。
「影の獣……
あれは“心の影”が暴走した姿。
誰かの心が限界まで追い詰められた証……」
トモエは手紙を握りしめた。
(心を喰らう影……
誰かの心を奪って、影を生んだんや)
(せやけど……
誰が……?)
そのとき――
――ドクン。
胸の奥が、
嫌な予感でざわついた。
(……まさか)
トモエは振り返り、
三人の顔を順に見つめた。
ユウト。
カイル。
リリア。
そして――
遺跡の入口で休んでいる、
リリアの護衛の男。
(あの人……
ずっと苦しそうやった)
(影の獣が現れたときも……
あの人の方角から影の気配がした)
(もしかして……)
「みんな、戻るで!」
トモエは駆け出した。
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◆ ◆ ◆
◆ 影に喰われた心
遺跡の入口に戻ると、
護衛の男――ガルドが、
地面に倒れ込んでいた。
リリアが叫ぶ。
「ガルドさん!!」
ユウトが駆け寄る。
「しっかりして!!」
ガルドは苦しそうに胸を押さえ、
かすれた声で呟いた。
「……あ……ああ……
影が……
影が……来る……」
カイルが息を呑む。
「影……?」
トモエはガルドの胸に手を当てた。
(これは……
影に心を喰われてる)
(影の根源とは違う……
もっと小さくて、もっと狡猾な影)
(“心の隙間”に入り込む影や)
リリアは涙をこらえながら言った。
「ガルドさんは……
私を守るために、
ずっと無理をしていました……」
「南の領地では……
影の噂が広がっていて……
彼はずっと怯えていたんです……」
ユウトが震える声で言う。
「じゃあ……
ガルドさんの心が……
影に喰われたん……?」
トモエは頷いた。
「せや。
影は心の弱ったところに入り込む。
ガルドさんは……
ずっと一人で抱え込んどったんや」
ガルドは苦しげに叫んだ。
「……助けて……
影が……
俺の心を……!」
トモエはガルドの手を握った。
「大丈夫や。
うちが助ける」
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◆ ◆ ◆
◆ 心の中の影
トモエはガルドの胸に手を当て、
光の魔力を流し込んだ。
「マナ・ヒールライト……!」
――パァァァァァッ!!
光がガルドの心に入り込む。
その瞬間――
トモエの意識は、
ガルドの“心の世界”へ引き込まれた。
(ここは……
ガルドさんの心の中……?)
暗い。
冷たい。
何もない。
その中心に――
黒い影がうずくまっていた。
影は、
ガルドの声で呟いた。
「……守れなかった……
俺は……弱い……
誰も……救えない……」
トモエは影に近づいた。
「ガルドさん……
あんた、そんなこと思っとったんか」
影は顔を上げた。
「……誰だ……?」
「うちはトモエ。
あんたを助けに来たんや」
影は苦しげに叫んだ。
「来るな……!
俺は……弱い……
誰も守れない……
影に喰われる……!」
トモエは影の前にしゃがみ込んだ。
「弱いから悪いんやない。
弱い自分を責めるから、影が生まれるんや」
影は震えた。
「……俺は……
リリア様を守れなかった……
だから……
俺は……いらない……」
トモエは影を抱きしめた。
「いらん人なんておらん。
あんたはリリアさんを守ろうとして、
必死に戦ってきたんや」
「その気持ちがある限り……
あんたは強い」
影はゆっくりと光に溶けていった。
「……ありがとう……
俺は……
まだ……守れる……?」
「守れるで。
あんたは強い人や」
影は完全に消え、
光がガルドの心を満たした。
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◆ ◆ ◆
◆ ガルドの涙
トモエが目を開けると、
ガルドは涙を流していた。
「……トモエ殿……
私は……
私は……生きている……?」
トモエは微笑んだ。
「せや。
あんたの心は、ちゃんと戻ってきたで」
リリアは泣きながらガルドに抱きついた。
「ガルドさん……!!
本当に……よかった……!」
ガルドは震える声で言った。
「リリア様……
私は……
あなたを守れなかった……」
リリアは首を振った。
「違います!
あなたはずっと私を守ってくれた!
だから……
もう自分を責めないで……!」
ユウトも涙をこらえながら言った。
「ガルドさん……
あんたは強い人やで」
カイルも頷く。
「影に喰われても……
戻ってこれた。
それは強さです」
トモエは立ち上がった。
(影は心から生まれる。
せやけど……
心が光を求める限り、
影は癒せる)
(これが……
うちの光なんや)
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◆ ◆ ◆
◆ 新たな影の気配
そのとき――
――スゥ……
遺跡の奥から、
冷たい風が吹いた。
ユウトが身を震わせる。
「おばちゃん……
また影の気配がする……!」
カイルが杖を構える。
「さっきの獣とは違う……
もっと……深い……!」
リリアは顔を青くした。
「これは……
“心を喰らう影”の本体……?」
トモエは前に出た。
「みんな、構え!」
遺跡の奥の闇が揺れ、
ゆっくりと形を成し始めた。
黒い霧。
歪んだ影。
そして――
人の形。
ユウトが叫ぶ。
「おばちゃん!!
あれ……!」
カイルが震える声で言う。
「“影の主”……!」
リリアは息を呑んだ。
「心を喰らう影の……本体……!」
トモエは杖を構えた。
「よっしゃ。
次の影、相手したるで!」
虎柄シャツが風に揺れ、
おばちゃんは新たな影へと立ち向かった。
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます。
第51話では、
“影に狙われた人物”が明らかになり、
ガルドの心の影との戦いを描きました。
影は悪ではなく、
心の弱さや悲しみから生まれるもの。
それを“癒す”のが、おばちゃんの光。
そして最後に現れた
“心を喰らう影の本体”。
物語はここから、
新たな戦いへと突入します。
次回、第52話では
“影の主”との初対峙と、その正体の一端
が描かれます。
読んでくださる皆さまの応援が、
私にとっての“光”です。
これからも、おばちゃんの物語を
どうぞよろしくお願いいたします。




