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第5話:『おばちゃん、街で大人気になる』

魔法学校の見学から一夜明けた朝。

トモエは宿屋の食堂でパンをかじりながら、昨日のことを思い返していた。


「子どもら、ほんま可愛かったなぁ……」

「おばちゃんさん、昨日は大変だったみたいですねぇ」


宿屋の女将・ミーナが笑いながら言った。


「街中で噂になってますよ。“虎柄の魔力おばちゃん”って」

「なんやその呼び名……」

「でも、悪い意味じゃないですよ。みんな楽しそうに話してます」


トモエは苦笑した。


「まぁ、嫌われてへんのならええか」


パンを食べ終えると、トモエは立ち上がった。


「ほな、今日も市場行ってくるわ。リオの店、ちょっと手伝わなアカンしな」

「いってらっしゃい。気をつけてくださいね」


虎柄シャツを揺らしながら、トモエは街へ向かった。


---


◆ 市場の朝は今日もにぎやか


市場に着くと、すでに多くの人で賑わっていた。

野菜の香り、焼き菓子の匂い、魔力水のきらめき――

異世界の市場は、どこか懐かしくて、でも新しい。


「おばちゃん、おはよう!」

「昨日の魔法、すごかったで!」

「今日もなんかやって!」


子どもたちが駆け寄ってくる。


「なんかって……うちは大道芸人ちゃうで」

「ええやん、ちょっとだけ!」

「水のやつ見たい!」


トモエは苦笑しながらも、手を前に出した。


「ほな、ちょっとだけやで。安全なやつな」


「アクア」


――ぽちゃん。


小さな水玉がふわりと浮かび、子どもたちが歓声を上げる。


「きれい!」

「おばちゃん、上手になってる!」

「昨日より全然安全や!」


トモエは胸を張った。


「せやろ? うち、練習したんや」


周囲の大人たちも笑顔で見ていた。


「なんか、あのおばちゃん来てから市場が明るくなったな」

「ほんまや。あの人、ええ雰囲気持ってるわ」


トモエは照れくさそうに笑った。


---


◆ リオの店へ


市場の奥にある「リオの魔道具店」に向かうと、店の前に見慣れない行列ができていた。


「え、なんやこれ……?」

「おばちゃん!」


リオが店の中から飛び出してきた。


「すごいんだよ! 昨日、おばちゃんが実演してくれたおかげで、店に人がいっぱい来て……!」

「え、うちのせい?」

「うん! “虎柄のおばちゃんが使ってた魔道具が欲しい”って!」


トモエは目を丸くした。


「なんやそれ……うち、ただ火起こし石で焦がしただけやのに」

「それが逆にウケてるんだよ! “魔力が強い人でも使えるなら安心”って!」


トモエは苦笑した。


「なんか複雑やけど……まぁ、売れてるならええか」


リオは嬉しそうに言った。


「おばちゃん、店の中、見てみて!」


店に入ると、昨日トモエが提案した“説明書き”が商品に貼られていた。


【火起こし石】

・魔力が弱くても使える

・料理や暖炉に便利

・強い魔力の人は少しだけ流してね!


【風送り扇】

・部屋の換気に最適

・魔力を流すと風が出ます

・おばちゃんも絶賛!


トモエは吹き出した。


「おばちゃんも絶賛って……うち、そんなこと言ったっけ?」

「言ってないけど……お客さんが喜ぶかなって……」


トモエは笑いながらリオの頭を軽く叩いた。


「あんた、商売人の才能あるやん」

「え、ほんと……?」

「ほんまや。昨日より顔つきがしっかりしてるで」


リオは照れくさそうに笑った。


---


◆ 実演コーナー、始動


トモエは店の奥にある小さなスペースを見て言った。


「ここ、実演コーナーにしたらええって言ったやつやな」

「うん! おばちゃん、今日も手伝ってくれる?」

「もちろんや」


リオは嬉しそうに頷いた。


「じゃあ、まずは“風送り扇”の実演を……」


トモエは扇を手に取り、魔力を少しだけ流した。


「ウィンド……っと」


――ふわぁぁぁ。


優しい風が店内を吹き抜け、客たちが歓声を上げた。


「すごい!」

「涼しい!」

「おばちゃん、魔法上手やな!」


トモエは胸を張った。


「せやろ? 昨日より上達したんや」


リオは感動したように言った。


「おばちゃん……本当にありがとう。店がこんなに賑わうなんて……」

「ええって。うちは世話焼きが趣味やねん」


---


◆ 市場のトラブル発生


そのとき、市場の中央から大きな声が聞こえた。


「誰か助けてくれーっ!」


トモエとリオは顔を見合わせ、急いで外へ飛び出した。


市場の真ん中で、老人が倒れていた。

周囲の人々が慌てている。


「おじいさん、大丈夫!?」

「息が荒い……魔力が足りてないんだ!」


ユウトが叫んだ。


「おばちゃん! 魔力を分けてあげて!」

「え、魔力って分けられるん!?」

「生活魔法の応用でできるよ! 手を握って、“マナシェア”って言うんだ!」


トモエは老人の手を握った。


「マナシェア!」


――ふわっ。


温かい光がトモエの手から老人へ流れ込んだ。


「う……うぅ……」

「おじいさん!」

「息が整ってきた!」


老人はゆっくり目を開けた。


「ありがとう……助かったよ……」


トモエは胸をなでおろした。


「よかった……ほんまによかったわ」


周囲の人々が拍手を送った。


「おばちゃん、すごい!」

「魔力だけやなくて、心も強いんやな!」

「街の守り神みたいや!」


トモエは照れくさそうに笑った。


「守り神は言いすぎやろ……うちはただの大阪のおばちゃんやで」


---


◆ 街の人気者に


市場の騒動が落ち着くと、トモエの周りには人だかりができていた。


「おばちゃん、ありがとう!」

「また魔法教えてな!」

「リオの店、今日も行くわ!」


リオも嬉しそうに言った。


「おばちゃん……本当に街の人気者だよ」

「せやろ? うちはどこ行っても人気やねん」


ユウトが笑った。


「おばちゃん、明日も学校来てよ!」

「もちろんや。子どもらの顔見たら元気出るしな」


トモエは空を見上げた。


異世界の空は、今日も青く澄んでいた。


「よっしゃ。異世界生活、ええ感じになってきたで」


虎柄シャツが風に揺れ、トモエは胸を張って歩き出した。

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