第49話:『おばちゃん、光と影の始まりを知る』
――まぶしい光。
視界が白に染まり、
足元の感覚が消える。
トモエは思わず目を閉じた。
(ここ……どこや……?)
風も匂いもない。
ただ、静寂だけが広がっている。
その中で――
柔らかい声が響いた。
『ようこそ、光の継承者よ』
トモエはゆっくり目を開けた。
そこには、
白い衣をまとった女性が立っていた。
長い銀髪、
優しい瞳、
そして身体から溢れる柔らかな光。
ユウトが息を呑む。
「おばちゃん……
あの人……!」
カイルが震える声で言う。
「まさか……
初代光の魔法使い……アリア……?」
リリアは膝をつき、頭を下げた。
「アリア様……
伝説の……!」
アリアは微笑んだ。
『ようやく……来てくれたのですね』
トモエは戸惑いながら言った。
「うち……
あんたに呼ばれたんか?」
アリアは頷いた。
『はい。
あなたは“光の継承者”。
私が残した光を受け継ぐ者です』
トモエは胸に手を当てた。
(光の継承者……
ほんまにうちなんか?)
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◆ ◆ ◆
◆ アリアが語る“光と影の始まり”
アリアは手をかざし、
周囲の白い空間に映像を浮かべた。
そこには、
古代の街が映し出されていた。
人々が笑い、
光の魔法が街を照らしている。
ユウトが目を輝かせる。
「すごい……
これ、昔の世界なん?」
アリアは静かに語り始めた。
『かつて、この世界には
“光の魔法使い”が存在しました。
光は人々の心を照らし、
争いを減らし、
世界を豊かにしていました』
映像の中の街は、
まるで楽園のようだった。
しかし――
次の瞬間、映像が揺れる。
空が黒く染まり、
街に“影”が広がり始めた。
カイルが息を呑む。
「影……!」
アリアは悲しげに言った。
『影は突然現れたのではありません。
光が強くなりすぎたとき――
人々の心に押し込められた“負の感情”が
形を持ったのです』
トモエは眉をひそめた。
「光が強すぎたら……
影が生まれるんか?」
アリアは頷いた。
『光と影は対。
どちらかが強くなりすぎれば、
もう一方もまた強くなる』
ユウトが不安そうに言う。
「じゃあ……
おばちゃんが光やから、影が……?」
アリアは優しく首を振った。
『違います。
あなたたちの光は“心を照らす光”。
押しつける光ではありません』
トモエは胸が温かくなった。
(うちの光は……
誰かを照らす光なんや)
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◆ ◆ ◆
◆ 初代光の魔法使いの“罪”
アリアは映像を変えた。
そこには、
若い頃のアリアが映っていた。
彼女は強い光を放ち、
影を消し去っている。
しかし――
その光はどこか冷たかった。
リリアが呟く。
「アリア様……
こんなに強かったんですね……」
アリアは悲しげに言った。
『私は……
光を“正義”だと信じていました。
影を完全に消せば、
世界は平和になると』
映像の中のアリアは、
影を消すたびに表情を失っていく。
『しかし……
影を消すたびに、
人々の心から“負の感情”が溢れ、
より強い影が生まれました』
ユウトが震える声で言う。
「それって……
影の根源みたいな……?」
アリアは頷いた。
『はい。
私が光を強めすぎたせいで、
“影の根源”が生まれたのです』
トモエは息を呑んだ。
(影の根源は……
アリアの光が生んだんか)
(せやけど……
あの子は悪意やなかった)
(悲しみの塊やった)
アリアは続けた。
『私は……
自分の罪を償うために、
光を封印し、
“継承者”に託しました』
『それが……あなたです、トモエ』
トモエは胸が熱くなった。
「うちが……
あんたの光を継いだんか……?」
アリアは微笑んだ。
『はい。
あなたの光は、
私の光とは違う。
“人の心に寄り添う光”です』
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◆ ◆ ◆
◆ “二つの心”の意味
アリアはユウトとカイルを見つめた。
『そして……
光の継承者には、
必ず“もう一つの心”が必要です』
ユウトが驚く。
「もう一つの……心?」
アリアは頷いた。
『光は一人では完成しません。
二つの心が重なったとき――
真の光が目覚めます』
カイルが息を呑む。
「じゃあ……
おばちゃん先生とユウト……?」
アリアは優しく微笑んだ。
『はい。
あなたたち二人の光が揃ったとき、
“扉”が開くでしょう』
トモエはユウトの手を握った。
「ユウト……
あんたと一緒に光るんやな」
ユウトは涙をこらえながら笑った。
「うん……!
僕、おばちゃんと一緒に光る!」
アリアは静かに言った。
『どうか……
私のように光を押しつけないでください』
『あなたたちの光は、
“寄り添う光”なのですから』
光がゆっくりと弱まり、
アリアの姿が薄れていく。
『光の継承者よ……
どうか……
影を憎まず……
心を照らしてください……』
そして――
光は完全に消えた。
トモエたちは遺跡の封印の間に戻っていた。
ユウトが震える声で言う。
「おばちゃん……
アリアさん……消えた……」
トモエは静かに頷いた。
「せやけど……
あの人の想いは残っとる」
カイルが言う。
「これから……
どうするんですか?」
トモエは水晶を見つめた。
(光と影の始まり……
アリアの罪……
二つの心……)
(うちは……
この世界の光として、
歩いていかなあかん)
「よっしゃ。
次の“扉”を探すで!」
虎柄シャツが光を反射し、
おばちゃんは新たな決意を胸に歩き出した。
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます。
第49話では、
ついに 光と影の始まり が語られ、
初代光の魔法使いアリアの“罪”と“願い”が明かされました。
光は正義ではなく、
影は悪ではない。
どちらも“心”から生まれるもの。
そして、
おばちゃんとユウトの“二つの心”が揃ったとき、
真の光が目覚める――
物語は大きな転換点を迎えました。
次回、第50話では
遺跡の奥で見つかる“次の扉”と、新たな影の気配 が描かれます。
読んでくださる皆さまの応援が、
私にとっての“光”です。
これからも、おばちゃんの物語を
どうぞよろしくお願いいたします。




