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第4話:『おばちゃん、魔法学校へ行く』

リューネの朝は、今日も穏やかだった。

宿屋の窓から差し込む光を浴びながら、トモエは伸びをした。


「よっしゃ、今日は魔法学校の見学やな。気合い入れていこ」


虎柄シャツを整え、髪をまとめ、鏡の前で軽く笑顔の練習をする。


「うん、今日もええ顔や」


宿屋の女将・ミーナが声をかけてきた。


「おばちゃんさん、今日は学校に行くんですよね?」

「せや。なんか先生にスカウトされてもうてな」

「すごいですねぇ……! 魔法学校なんて、普通の人はなかなか入れませんよ」

「いやいや、うちはただの主婦やって」


そう言いながらも、トモエは少し胸を張っていた。


---


◆ 魔法学校へ向かう道


ユウトが迎えに来てくれた。


「おばちゃん、準備できた?」

「ばっちりや。案内頼むで」

「うん!」


二人は街の中心から少し離れた丘の上へ向かった。

そこには、白い石造りの大きな建物がそびえていた。


「ここが……魔法学校?」

「そうだよ。リューネで一番大きな学校なんだ」


門の前には、魔法陣が刻まれた石柱が立っている。

近づくと、石柱が淡く光った。


「おばちゃん、魔力が強いから反応してるんだよ」

「へぇ〜、なんか歓迎されてるみたいやな」


門をくぐると、広い中庭が広がっていた。

子どもたちが魔法の練習をしている。


「アクア!」

「フレア!」

「ウィンド!」


小さな魔法が次々と飛び交い、笑い声が響く。


トモエは目を細めた。


「ええなぁ……子どもは元気が一番や」


---


◆ エリナ先生との再会


中庭の奥から、昨日会ったエリナ先生が歩いてきた。


「おばちゃんさん、ようこそ。お待ちしていました」

「おはようさん。今日はよろしく頼むで」

「こちらこそ。まずは授業を見学していただきますね」


エリナは優雅に微笑んだ。


「今日は初級クラスの“生活魔法”の授業です。おばちゃんさんにも、ぜひ体験していただければと」

「え、うちも?」

「もちろんです。子どもたちも喜びますよ」


トモエは少し緊張した。


(うち、まだ魔法慣れてへんのに……)


だが、子どもたちの期待に満ちた目を見て、腹をくくった。


「よっしゃ、やったるわ!」


---


◆ 初級クラスの授業


教室に入ると、子どもたちがざわついた。


「あっ! 昨日の水のおばちゃんだ!」

「ほんまや! 水柱のおばちゃんや!」

「虎柄のおばちゃんや!」


トモエは苦笑した。


「みんな、昨日のは事故やで。今日はちゃんとやるからな」


エリナが教壇に立ち、授業が始まった。


「今日は“水出し”の魔法を練習します。まずは私が見本を見せますね」


エリナが手をかざすと、透明な水がふわりと浮かび上がった。


「きれいやなぁ……」

「これくらいの量が基本です。では、みなさんもやってみましょう」


子どもたちが一斉に「アクア!」と唱える。

小さな水玉がぽこぽこと生まれた。


エリナがトモエに向き直る。


「おばちゃんさんも、どうぞ」

「ほな、やってみるわ」


トモエは深呼吸し、手を前に出した。


「アクア」


――ぽちゃん。


昨日よりもずっと小さな水玉が浮かび上がった。


「おおっ……!」

「おばちゃん、上手!」

「昨日より全然安全や!」


トモエは胸を張った。


「せやろ? うち、やるときはやる女やねん」


エリナも微笑んだ。


「素晴らしいです。魔力が強い方ほど、制御が難しいのですが……おばちゃんさんは飲み込みが早いですね」


トモエは照れくさそうに笑った。


---


◆ 子どもたちの悩み


授業が終わると、子どもたちがトモエの周りに集まってきた。


「おばちゃん、魔法ってどうやったら上手くなるん?」

「僕、魔力弱いから、みんなみたいにできへん……」

「私、火の魔法が怖いねん……」


トモエはしゃがんで、子どもたちの目線に合わせた。


「みんなな、魔法は競争やないで。自分のペースでええんや」

「でも……」

「うちかて、昨日は水柱ドーンやったんやで?」

「知ってる!」

「街中で噂になってる!」


トモエは笑った。


「せやからな、失敗してもええねん。大事なんは、諦めんことや」


子どもたちは真剣にうなずいた。


「おばちゃん、また来てくれる?」

「来てほしい!」

「もっと魔法教えて!」


トモエは少し考えた。


(うち、先生なんて柄ちゃうけど……)


でも、子どもたちの笑顔を見て決めた。


「ええよ。また来るわ」

「やったー!」

「おばちゃん先生や!」


エリナが微笑んだ。


「おばちゃんさん……本当に、子どもたちに好かれますね」

「うちはな、子ども好きやねん。元気もらえるわ」


---


◆ 魔法学校の裏庭で


見学が終わり、エリナが裏庭へ案内してくれた。


「ここは、魔力の流れを整える場所です。おばちゃんさんの魔力は非常に強いので、ここで調整すると良いでしょう」


裏庭には、古い石碑と魔法陣が刻まれた広場があった。


「ここに立って、深呼吸してください」


トモエは魔法陣の中心に立ち、ゆっくり息を吸った。


――ふわっ。


体の中を、温かい風が通り抜けるような感覚がした。


「なんやこれ……気持ちええなぁ」

「魔力が整っている証拠です。おばちゃんさんの魔力は、非常に純度が高い……まるで、異世界の力そのもののようです」


トモエは首をかしげた。


「異世界の力……?」

「はい。あなたの魔力は、この世界の人々とは少し違う性質を持っています」


トモエは胸に手を当てた。


(うちの魔力……なんか特別なんやろか)


エリナは続けた。


「ですが、心配はいりません。あなたの魔力は“人を助ける力”に向いています。だからこそ、子どもたちも惹かれるのでしょう」


トモエは照れくさそうに笑った。


「なんや、褒められたらむずがゆいわ」


---


◆ 帰り道


学校を出る頃には、夕日が街をオレンジ色に染めていた。


ユウトが言った。


「おばちゃん、今日すごかったね」

「せやろ? うち、ちょっと頑張ったわ」

「子どもたち、めっちゃ喜んでたよ」

「うちも楽しかったで」


トモエは空を見上げた。


異世界の空は、今日もきれいだった。


「明日からも、頑張らなアカンなぁ……」


虎柄シャツが夕風に揺れた。

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