第34話:『おばちゃん、影の核の“声”と向き合う』
第三層で影の守護獣を倒した一行は、
谷の奥に続く細い洞窟へと足を踏み入れた。
洞窟の中は、まるで生き物の体内のように脈動しており、
壁には黒い脈が走り、時折、紫色の光が流れている。
ユウトが不安そうに言った。
「おばちゃん……ここ、なんか変や」
「せやな。空気が……重い」
エリナが魔力を感じ取りながら言った。
「第四層は“影の核の意思”が直接干渉してくる場所です。
戦闘より……精神的な圧力が強いはず」
サラが魔法生物を抱きしめる。
「この子たち……震えてる。
ここ、相当危険や」
カイルが杖を握りしめた。
「僕……胸が苦しい。
なんか……誰かに見られてるみたい」
バルドが前に立つ。
「気ぃつけろ。ここからは敵が見えへんぞ」
トモエは深呼吸した。
(影の核……)
(あんたの“声”が聞こえるんやろか)
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◆ 第四層:影の心臓部
洞窟を進むと、
突然、空間が開けた。
そこは巨大な空洞で、
天井から黒い雫が落ち、
地面には紫色の魔法陣が刻まれている。
そして――
空洞の中央に、
黒い“球体”が浮かんでいた。
「……あれが……影の核……?」
ユウトが震える声で言った。
「おばちゃん……怖い」
「大丈夫や。うちがおる」
そのとき――
――ドクン。
黒い球体が脈動した。
「……光よ……」
「……来たか……」
「……我を……照らせ……」
エリナが青ざめた。
「声……! 影の核が……私たちに話しかけてる……!」
サラが耳を押さえる。
「やめて……頭に直接響いてくる……!」
カイルが膝をつく。
「うっ……胸が……苦しい……!」
バルドが叫ぶ。
「全員、下がれ!!」
しかし――
影の核の声は、
トモエだけを“名指し”した。
「……トモエ……」
「……光の女……」
「……近くへ……来い……」
トモエは息を呑んだ。
(なんで……うちの名前を……?)
ユウトが叫ぶ。
「おばちゃん! 行ったらあかん!!」
「危険すぎる!!」
エリナも必死に止める。
「影の核は……あなたを取り込もうとしているんです!!」
しかし――
トモエは一歩前に出た。
「大丈夫や。
うちは……逃げへん」
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◆ 影の核との対話
トモエが球体に近づくと、
周囲の空気が一気に冷たくなった。
「……光よ……」
「……なぜ……この世界に来た……?」
トモエは眉をひそめた。
「それは……うちが聞きたいわ」
影の核は低く笑った。
「……お前は……“呼ばれた”のだ……」
「呼ばれた……?」
「……この世界が……光を求めた……」
トモエは胸がざわついた。
(うちが……呼ばれた?)
(誰に……?)
影の核は続けた。
「……だが……光は……影を生む……」
「……お前が来たことで……
この世界の“影”は……目覚めた……」
トモエは息を呑んだ。
「うちが……影を目覚めさせた……?」
「……そうだ……」
「……お前が来たから……
我は……目を覚ました……」
ユウトが叫ぶ。
「嘘や!!
おばちゃんは……街を救ってくれたんや!!」
影の核は冷たく笑った。
「……救った?
違う……」
「……お前は……災いの“原因”だ……」
トモエの胸が痛む。
(……うちが原因?)
(ほんまに……?)
影の核は続けた。
「……お前が光である限り……
影は……増え続ける……」
「……この世界に……光は不要……」
「……消えろ……トモエ……」
――ドクンッ!!
黒い衝撃波がトモエに向かって放たれた。
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◆ 仲間たちの叫び
「おばちゃん!!」
ユウトが飛び出す。
「やめろ!!」
バルドが剣を構える。
「トモエを傷つけさせるか!!」
エリナが結界を張る。
「《光壁・最大展開》!!」
サラが魔法生物に指示する。
「守って!!」
カイルが叫ぶ。
「おばちゃん先生を……傷つけるな!!」
しかし――
影の核の衝撃波は、
仲間たちの結界を簡単に砕いた。
「うわぁぁぁっ!!」
「くっ……強すぎる……!」
ユウトが必死にトモエに手を伸ばす。
「おばちゃん!!」
トモエは衝撃波に吹き飛ばされながらも、
必死に踏みとどまった。
(うちは……)
(この世界に……災いを呼んだ……?)
(ほんまに……?)
影の核の声が響く。
「……お前は……不要……」
「……光は……影を増やすだけ……」
「……消えろ……」
トモエは拳を握った。
(……うちは……)
(ほんまに……不要なんか?)
(そんなわけ……)
(あるかい!!)
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◆ おばちゃんの反撃
トモエは叫んだ。
「うちは……この世界に必要や!!」
――パァァァァァッ!!
トモエの体から光が溢れ、
影の衝撃波を押し返した。
影の核が揺れる。
「……なに……?」
トモエは続けた。
「うちは……街の人に必要とされてる!!
ユウトにも……みんなにも!!」
「せやから――
あんたの言うことなんか、信じへん!!」
――ドォォォォォンッ!!
光が影の核にぶつかり、
空洞全体が揺れた。
影の核が苦しげに声を上げる。
「……光……!!
なぜ……ここまで……強い……!!」
トモエは叫んだ。
「うちは一人やないからや!!」
ユウトが涙を流しながら叫ぶ。
「おばちゃん!!」
バルドが剣を構える。
「トモエ!! やったれ!!」
エリナが魔力を送る。
「おばちゃんさん……あなたならできます!!」
サラが魔法生物を飛ばす。
「光を……届けて!!」
カイルが杖を掲げる。
「おばちゃん先生……!!
僕らがついてる!!」
トモエは光を放った。
「マナブレイク!!」
――パァァァァァァァッ!!
影の核が大きく揺れ、
黒い霧が吹き飛んだ。
「……ぐ……あああああ……!!」
影の核は一瞬だけ弱まり、
その奥に“何かの形”が見えた。
しかし――
次の瞬間、影の核は霧をまとい、
姿を隠した。
「……光よ……
次は……第五層で……」
影の核の声が消え、
空洞は静寂に包まれた。
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◆ 第四層突破
ユウトが駆け寄る。
「おばちゃん!! 大丈夫!?」
「大丈夫や……ちょっと疲れたけどな」
バルドが肩を叩く。
「よくやった!!
お前の光、影の核に届いてたぞ!」
エリナが分析する。
「影の核……
おばちゃんさんの光を“恐れている”ように見えました」
サラが言った。
「おばちゃんさんの光……
本当にあったかい……」
カイルが涙を拭きながら言った。
「おばちゃん先生……
僕……もっと強くなる」
トモエは笑った。
「みんな……ありがとうな」
そして、第五層へ続く道を見つめた。
(影の核……)
(次は……あんたの本体と向き合うんやな)
「よっしゃ。
第五層、行くで!!」
虎柄シャツが風に揺れた。




