第30話:『おばちゃん、北の山へ出発する』
リューネの朝は、いつもより冷たかった。
空気が張りつめ、街全体が静まり返っている。
トモエは宿屋の窓を開け、深呼吸した。
(……今日や。ついに北の山へ行く日や)
胸の奥がざわつく。
怖さもある。
でも、それ以上に――覚悟があった。
宿屋の女将・ミーナが声をかけてきた。
「おばちゃんさん……本当に行くんですね」
「行くで。街のためや」
「……どうか、無事に帰ってきてください」
「任しとき。うちは不死身のおばちゃんや」
ミーナは涙ぐみながら笑った。
「おばちゃんさん……街の誇りですよ」
トモエは照れくさく笑い、虎柄シャツを整えて宿屋を出た。
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◆ 市場の“出発式”
市場に着くと、すでに大勢の人が集まっていた。
中央には旗が掲げられ、まるで祭りのような雰囲気だ。
「おばちゃん、来たで!」
「今日が出発の日や!」
「気ぃつけてな!」
ユウトが駆け寄ってきた。
「おばちゃん! 準備できてる?」
「もちろんや」
バルドが大声で言った。
「よし! 北の山遠征隊、集合や!」
選ばれたメンバーが前に並ぶ。
• ユウト(少年・魔力適性あり)
• バルド(鍛冶屋・前衛)
• エリナ(魔法学校教師・後衛支援)
• サラ(郵便局員・偵察)
• カイル(魔法学校の生徒・魔力制御訓練中)
そして――
• トモエ(大阪のおばちゃん・光の魔力)
市場の人々が拍手を送る。
「おばちゃん、頼んだで!」
「街の光、守ってな!」
「帰ってくるの待ってるからな!」
トモエは胸が熱くなった。
(……こんなに応援されるなんて)
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◆ 出発前の言葉
バルドが前に出た。
「よし、出発前に一言ずつ言おうや!」
● バルド
「俺は前衛として、みんなを守る!
影の核がなんぼのもんや!」
● エリナ
「私は結界と支援魔法で、皆さんを守ります。
おばちゃんさんの魔力も安定させます」
● サラ
「偵察と連絡は任せてください。
魔法生物たちも協力してくれます」
● カイル
「……僕は、もう逃げへん。
おばちゃん先生を守るために行く」
● ユウト
「おばちゃんは……僕の光や。
だから僕も、おばちゃんを守る!」
トモエは涙がこぼれそうになった。
(……なんやこれ。泣いてまうやろ)
そして、みんながトモエを見る。
「おばちゃん、最後に一言!」
トモエは深呼吸した。
「うちは……ただの大阪のおばちゃんや」
「せやけど――」
市場が静まり返る。
「困ってる人を放っとけへん。
それがうちの生き方や」
「みんなの想い、しっかり受け取ったで。
絶対に帰ってくる。
せやから――」
「帰ってきたら、またたこ焼き焼いたる!」
市場が大歓声に包まれた。
「おばちゃああああん!!」
「たこ焼き楽しみにしてるで!!」
「絶対帰ってきてな!!」
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◆ 北の山へ向けて出発
市場の出口で、占い師が待っていた。
「……来たわね」
「またあんたか」
「今日は“見送り”よ」
占い師はトモエの手を握った。
「あなたは光。
だが光は、仲間がいてこそ輝く」
「忘れないで。
“絆”こそが、影を打ち払う力」
トモエは頷いた。
「わかったで」
占い師は静かに言った。
「北の山は……あなたたちを試す場所。
だが、あなたなら乗り越えられる」
そして、占い師は霧のように消えた。
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◆ 森を抜け、山道へ
街を出て、森の中を歩く。
「空気が……重いな」
「魔力が乱れてるんや」
「気ぃつけて進むで」
森の奥へ進むほど、空気が冷たくなる。
サラが言った。
「魔法生物たちが……怯えてる」
「やっぱり、影の核の影響か……」
カイルが震えながら言った。
「なんか……胸がざわざわする」
「大丈夫や。うちがおる」
トモエはカイルの頭を軽く撫でた。
(みんな……怖いんや)
(せやけど、うちが支えな)
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◆ 北の山が見える
森を抜けると、巨大な山が姿を現した。
山頂には黒い雲が渦を巻き、
雷のような光が時折走っている。
「……あれが北の山……」
「めっちゃ不気味やな……」
「影の核が……目覚めかけてるんや」
ユウトがトモエの手を握った。
「おばちゃん……怖い?」
「そら怖いで」
「でも……行くんやろ?」
「もちろんや」
トモエは山を見上げた。
(ここからが本番や)
(うちは……この世界に来た意味を知るんかもしれへん)
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◆ 山道の入り口で
バルドが言った。
「よし、ここからは本格的に危険や。
気ぃ引き締めていくで!」
エリナが結界を張る。
「これで少しは安全です」
「ありがとうな、エリナ先生」
サラが魔法生物を飛ばす。
「偵察開始します!」
カイルが杖を握りしめる。
「僕……頑張る」
ユウトがトモエの隣に立つ。
「おばちゃん、一緒に行こ」
「せやな。行こか」
トモエは深呼吸した。
「よっしゃ――」
「北の山、攻略開始や!!」
虎柄シャツが風に揺れた。
こうして、おばちゃんと仲間たちは
ついに“影の核”が眠る北の山へ足を踏み入れた。




