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第3話:『おばちゃん、魔法を習う』

リューネの街に来て二日目の朝。

トモエは宿屋のベッドから勢いよく起き上がった。


「よっしゃ、今日も頑張るで!」


宿屋の女将・ミーナが驚いた顔で振り返る。


「お、おばちゃんさん、朝から元気ですねぇ……」

「朝は元気出さなアカンやろ。ほら、朝ごはんの準備手伝うで」

「い、いえいえ! お客様にそんな……!」

「ええねんええねん。手ぇ動かしてたら落ち着くねん」


ミーナは苦笑しながらも、どこか嬉しそうだった。


「じゃあ……パンを温めるの、お願いできます?」

「任しとき!」


トモエはパンを並べ、手をかざした。


「えーっと……火の魔法は“フレア”やったな。昨日ちょっと焦がしてもうたけど……今日は慎重に……」


深呼吸して、そっと呟く。


「フレア」


――ぽっ。


優しい火がパンの表面を温め、香ばしい匂いが広がった。


「おおっ……!」

「おばちゃんさん、上手じゃないですか!」


トモエは胸を張った。


「そらそうよ。うち、やるときはやる女やねん」


ミーナは笑いながら、温められたパンを皿に並べた。


「おばちゃんさん、魔法の扱い、昨日よりずっと上手くなってますよ」

「せやろ? 魔法って、慣れやな」


そう言いながらも、トモエは内心ドキドキしていた。

昨日の水柱事件は、街の噂になっているらしい。


(あれはほんまに恥ずかしかったわ……)


でも、落ち込んでいる暇はない。

異世界で生きていくには、魔法を使いこなさなあかん。


---


◆ 街の人々の反応


朝食を終え、宿屋を出ると、街の人々がトモエに声をかけてきた。


「昨日の水柱、見たよ! すごかったなぁ!」

「おばちゃん、魔力めっちゃ強いんやって?」

「虎柄の服、どこで売ってるん?」


トモエは苦笑しながら答えた。


「虎柄はな、日本のミナミいうとこで買えるんや。こっちには売ってへんと思うで」

「にほん……?」

「遠いとこや」


街の子どもたちも寄ってくる。


「おばちゃん! 魔法見せて!」

「昨日の水、もう一回やって!」


「いやいや、あれは危ないからアカンて!」


トモエは手を振った。


「ほな、ちょっとだけやで。安全なやつ」


子どもたちが目を輝かせる。


トモエは手を前に出し、そっと呟いた。


「アクア」


――ぽちゃん。


小さな水玉がふわりと浮かび上がった。


「わぁぁぁぁ!」

「きれい!」

「おばちゃん、すごい!」


トモエは胸を張った。


「せやろ? 昨日より上手くなったやろ?」


子どもたちは大喜びで、水玉を触ろうと手を伸ばす。


「おばちゃん、魔法学校の先生になれるんちゃう?」

「いやいや、うちはただの主婦やで」


そう言いながらも、トモエは少し嬉しかった。


---


◆ ユウトとの再会


市場へ向かう途中、ユウトが駆け寄ってきた。


「おばちゃん! 昨日の噴水の件、街中で話題になってるよ!」

「やっぱりか……恥ずかしいわ」

「でも、悪い噂じゃないよ。みんな“面白い人が来た”って喜んでる」


トモエはホッとした。


「ほな、今日も市場行こか」

「うん! リオも待ってると思う」


二人は市場へ向かった。


---


◆ 魔道具屋の改革


リオの店に入ると、青年は相変わらずうつむいていた。


「お、おばちゃん……昨日はありがとう」

「ええって。店、ちょっと見せてみ」


トモエは棚をじっくり見て回った。


「うーん……やっぱり並べ方が地味やなぁ」

「じ、地味……?」

「せや。もっと“ここで買いたい!”って思わせる工夫が必要や」


トモエは腕をまくった。


「まずは、商品に説明書きつけよ。どんな人に向いてるか、どう便利か、ぱっと見でわかるようにするんや」

「そ、そんなこと考えたことなかった……」

「あと、実演コーナー作ろ。魔道具って使ってみなわからんやろ?」


リオは目を丸くした。


「実演……!」

「そうや。うちが手伝ったるから、やってみよ」


トモエは棚から“火起こし石”を取り出した。


「これ、どう使うん?」

「魔力を少し流すと、火花が出ます」

「ほな、やってみるで」


トモエは石に手をかざした。


「フレア……っと」


――ボッ!


石から勢いよく火が噴き出し、リオが慌てて水をかけた。


「お、おばちゃん! 魔力強すぎ!」

「ごめんごめん! ちょっと力入れすぎたわ!」


店の外から笑い声が聞こえた。


「またやってるぞ、あのおばちゃん」

「魔道具屋、最近楽しそうやな」


リオは苦笑しながらも、どこか嬉しそうだった。


「……おばちゃん、ありがとう。店が明るくなった気がする」

「そらそうよ。商売は笑顔が大事や」


トモエはにっこり笑った。


---


◆ 魔法学校からの誘い


店を出ようとしたとき、見知らぬ女性が声をかけてきた。


「あなたが……噂のおばちゃんですね?」


「噂の……?」

「はい。魔法学校の教師をしております、エリナと申します」


エリナは優雅に頭を下げた。


「あなたの魔力、街中で話題になっています。ぜひ、魔法学校に見学に来ていただけませんか?」

「え、うちが?」

「はい。あなたほどの魔力量は滅多にいません。ぜひ、子どもたちに魔法の楽しさを教えていただきたいのです」


トモエは驚いた。


「いやいや、うち魔法の知識なんかほとんどないで?」

「知識は後からつきます。大事なのは、あなたの明るさと、人を元気にする力です」


ユウトが嬉しそうに言った。


「おばちゃん、すごいよ! 先生にスカウトされるなんて!」

「いやいやいや、うちはただの主婦やって……」


エリナは微笑んだ。


「見学だけでも構いません。明日、学校に来ていただけますか?」

「……ほな、見学だけな」

「ありがとうございます」


エリナは丁寧に頭を下げ、去っていった。


トモエはため息をついた。


「なんや、異世界来てから忙しいなぁ……」

「でも、おばちゃんらしいよ」

「せやな……」


トモエは空を見上げた。


異世界の空は、今日も青く澄んでいた。


「よっしゃ。明日は魔法学校や。頑張るで!」


虎柄シャツが風に揺れ、トモエは胸を張って歩き出した。

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