表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ミナミのおばちゃん、異世界で心の影を救います  作者: ぽそまる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/124

第27話:『おばちゃん、初めて弱音を吐く』

リューネの朝は、どこか重かった。

昨日の“黒い霧”の騒動が街に影を落としているのか、

人々の声も、鳥の鳴き声も、どこか沈んで聞こえた。


トモエは宿屋の窓を開け、深呼吸した。


(胸の奥が……まだザワザワするわ)


昨日、占い師が言った言葉が頭から離れない。


“災いはまだ始まったばかり”


(うち……ほんまに乗り越えられるんやろか)


そんな不安を抱えたまま、トモエは市場へ向かった。


---


◆ 市場の静けさ


市場に着くと、いつもの賑やかさはなく、

人々がひそひそと話し合っていた。


「おばちゃん、おはよう……」

「昨日の霧、ほんま怖かったな……」

「北の山のほう、まだ空気が重いらしいで……」


ユウトが駆け寄ってきた。


「おばちゃん! 今日も来てくれたんや!」

「そら来るやろ。市場はうちの癒しや」

「でも……今日はなんか、みんな元気ないね」


トモエは頷いた。


「せやな……街全体が不安なんやろ」


そのとき、鍛冶屋のバルドが大声で言った。


「トモエ! 今日から街の見回りを強化するぞ!」

「見回り?」

「災いが来るなら、備えなあかんやろ!」

「せやけど……」


市場の人々も口々に言った。


「おばちゃんを守るためや!」

「街の光を失うわけにはいかん!」

「おばちゃんは休んでてええんや!」


トモエは困ったように笑った。


「みんな……うち、そんな弱い存在ちゃうで?」

「弱いとかやなくて!」

「守りたいんや!」

「おばちゃんは街の宝や!」


トモエは胸が熱くなった。


(こんなふうに言われるなんて……)


しかし、その温かさの裏で、

胸の奥に小さな痛みが走った。


(……うちは、ほんまに守られる側なんやろか)


---


◆ 魔法学校へ


気持ちを落ち着けるため、トモエは魔法学校へ向かった。


エリナ先生が出迎えた。


「おばちゃんさん……昨日の件、聞きました」

「大したことないで」

「いえ……あなたがいなければ、街は危険でした」


エリナは少しだけ迷ったあと、言った。


「……本当は、怖かったでしょう?」

「え……?」


トモエは言葉に詰まった。


(怖かった……)


(ほんまは、めっちゃ怖かった)


でも、口に出せなかった。


「うちは……大丈夫や」

「……そうですか」


エリナはそれ以上追及しなかった。


---


◆ 子どもたちの声


教室に入ると、子どもたちが一斉に駆け寄ってきた。


「おばちゃん先生!」

「昨日の霧、すごかったんやって!」

「怖くなかったん!?」


トモエは笑顔を作った。


「怖いわけないやろ。うちは大阪のおばちゃんやで?」

「すごーい!」

「やっぱりおばちゃん先生は最強や!」


子どもたちの無邪気な声に、

トモエの胸が少しだけ軽くなった。


(子どもらの笑顔……ほんま癒されるわ)


しかし――


そのとき。


「……おばちゃん先生」


カイルが静かに近づいてきた。


「昨日……怖かったんやろ?」


トモエは固まった。


「なんでそう思うん?」

「だって……僕、わかるもん。怖いときの顔」


カイルは自分の胸に手を当てた。


「僕も……昔、魔法暴走させたとき……同じ顔してた」


トモエは息を呑んだ。


(……見抜かれた)


カイルは続けた。


「怖いときは……怖いって言っていいんやで」

「……」


トモエの胸が、ぎゅっと締めつけられた。


(うち……ずっと強がってたんやな)


---


◆ トモエ、初めて弱音を吐く


授業が終わり、トモエは校庭のベンチに座った。


ユウトが隣に座る。


「おばちゃん……元気ない?」

「……ユウト」

「うん?」


トモエは、ゆっくりと言葉を紡いだ。


「……うち、昨日……めっちゃ怖かったんや」


ユウトは目を丸くした。


「おばちゃんが……?」

「せや。霧の中で……心が折れそうになった」

「……」


「みんなが“光や”って言うてくれるけど……」

「うちは……そんな立派なもんちゃう」

「ただの……大阪のおばちゃんや」


ユウトは静かに言った。


「それでええんやで」


「え……?」


「おばちゃんが“光”なんは……強いからやなくて」

「優しいからや」

「怖くても……誰かのために動けるからや」


トモエは涙がこぼれそうになった。


「ユウト……」

「おばちゃんが弱音吐いても……僕らが支えるから」

「街のみんなも……そう思ってるよ」


トモエは目を閉じた。


(……あかん。泣きそうや)


(でも……なんか、心が軽くなった)


---


◆ 占い師の影


そのとき――


「……良いわね」


振り返ると、占い師が立っていた。


「またあんたか……」

「あなたが弱さを見せたのは、初めてね」

「見とったんかい!」

「あなたが弱さを認めたとき……光はさらに強くなる」


トモエは眉をひそめた。


「どういう意味や?」

「災いは近い。だが――あなたはもう、一人ではない」


占い師は静かに消えた。


---


◆ 夕暮れの帰り道


ユウトが言った。


「おばちゃん、今日は……ちょっと泣きそうやったね」

「泣いてへん!」

「でも……泣いてもええんやで」

「……うるさいわ」


トモエは空を見上げた。


夕焼けが、街を優しく包んでいた。


(うちは……一人やない)


(みんながおる)


(それだけで……前に進める)


「よっしゃ。明日も頑張るで」


虎柄シャツが夕風に揺れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ