第22話:『おばちゃん、魔法郵便局で大混乱を収める』
リューネの朝は、今日も穏やかだった。
しかし、トモエの胸には、昨日の占い師の言葉が少しだけ残っていた。
(“災いが来る”って……なんやろなぁ)
そんな不安を振り払うように、トモエは宿屋の朝食を平らげた。
宿屋の女将・ミーナが声をかけてきた。
「おばちゃんさん、今日はどこへ行くんです?」
「今日はなぁ……郵便局行こう思て」
「郵便局?」
「せや。家族に手紙書こう思てな。異世界から届くかわからんけど……気持ちや」
ミーナは微笑んだ。
「きっと届きますよ。魔法郵便はすごいですから」
「そうなん?」
「はい。魔法生物が届けてくれるんです」
トモエは目を丸くした。
「魔法生物が……郵便配達?」
「ええ。可愛いですよ」
(可愛い魔法生物……ちょっと楽しみやな)
トモエは虎柄シャツを整え、郵便局へ向かった。
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◆ 魔法郵便局へ
市場を抜けた先に、白い塔のような建物があった。
【リューネ魔法郵便局】
扉を開けると、そこには――
「ピィィィィッ!!」
「キュルルルル!!」
「ポポポポポ!!」
小さな魔法生物たちが飛び回っていた。
・羽の生えたウサギ
・光るトカゲ
・空中を泳ぐ魚
・手紙を抱えた小さなドラゴン
トモエは目を輝かせた。
「うわぁ……めっちゃ可愛い!」
「おばちゃん、来てくれたんや!」
ユウトが駆け寄ってきた。
「ここ、僕のお母さんが働いてるんだよ!」
「そうなん?」
「うん! 今日は見学させてくれるって!」
そこへ、ユウトの母親・サラが現れた。
「トモエさん、ようこそ魔法郵便局へ」
「お邪魔します〜。ここ、めっちゃ可愛いなぁ」
「ありがとうございます。今日は特別に裏側も見せますね」
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◆ 魔法郵便の仕組み
サラは説明した。
「魔法郵便は、魔力で住所を読み取り、魔法生物が届ける仕組みです」
「へぇ〜、便利やなぁ」
「ただ……魔力が不安定だと、配達生物が暴走することもあって……」
トモエは眉をひそめた。
「暴走……?」
「ええ。最近、街の魔力が乱れているせいか、少し不安定なんです」
(また魔力の乱れか……)
サラは続けた。
「でも今日は大丈夫でしょう。ちょうど配達の時間なので、見ていってください」
魔法生物たちが一斉に並び、手紙を受け取っていく。
「ピィッ!」
「キュルル!」
「ポポポ!」
トモエは微笑んだ。
「可愛いなぁ……癒されるわ」
しかし――
その瞬間。
「……へっ……へっ……」
(あかん……! このタイミングでくしゃみは……!)
「へくしっ!!」
――ドォォォォォンッ!!
魔力が暴発し、郵便局全体が光に包まれた。
「きゃあああっ!」
「魔法生物が暴走してる!」
「手紙が空中に散らばってる!」
魔法生物たちが一斉に飛び回り、手紙をばらまき始めた。
「ピィィィィッ!!」
「キュルルルル!!」
「ポポポポポ!!」
サラが叫んだ。
「トモエさん! 魔力が刺激になって、配達生物が暴走してます!」
「ごめん! うちのくしゃみのせいや!」
「止めないと……手紙が全部どこかへ飛んでいってしまう!」
ユウトが叫んだ。
「おばちゃん、助けて!!」
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◆ 魔法生物の暴走を止めろ
トモエは腕まくりした。
「よっしゃ、うちがやったる!」
まずは、光るトカゲが暴走していた。
「キュルルルル!!」
トモエは手をかざした。
「マナドレイン!」
――ふわぁぁぁ。
トカゲの魔力が吸い取られ、落ち着いた。
「よし、一匹目!」
次は、空中を泳ぐ魚。
「ポポポポポ!!」
「こら! 暴れんとき!」
「マナドレイン!」
――ふわぁぁぁ。
魚も静かになった。
しかし――
「ピィィィィィィィィッ!!」
小さなドラゴンが暴走し、火を吐きながら飛び回っている。
「うわぁぁぁっ!」
「火が出てる!」
「危ない!!」
トモエは叫んだ。
「マナシールド!!」
――ドォォォォォンッ!!
光の盾が現れ、火を防いだ。
「よし……次はあんたや!」
トモエはドラゴンに飛びついた。
「マナドレイン!!」
――ふわぁぁぁ。
ドラゴンは静かになり、トモエの腕の中で眠り始めた。
「よし……全部止まったな」
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◆ 手紙の回収
しかし、空中にはまだ大量の手紙が舞っていた。
「手紙が……!」
「全部散らばってる!」
「どうしよう……!」
トモエは深呼吸した。
「任しとき。うちが集めたる」
トモエは両手を広げた。
「マナウィンド……優しめで!」
――ふわぁぁぁ。
優しい風が吹き、手紙が一箇所に集まり始めた。
「すごい……!」
「手紙が戻ってきた!」
「おばちゃん、天才や!」
トモエは笑った。
「せやろ? うちはやるときはやる女やねん」
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◆ サラの感謝
サラが深く頭を下げた。
「トモエさん……本当にありがとうございました」
「ええって。うちのくしゃみが原因やしな」
「いえ……あなたがいなければ、郵便局は大混乱でした」
「そうか?」
「ええ。あなたは……やっぱり街の“光”です」
トモエは照れくさそうに笑った。
「光って……うちは虎柄のおばちゃんやで?」
「虎柄の光でもいいじゃないですか」
ユウトが笑った。
「おばちゃん、今日もすごかったよ!」
「せやろ? うちはやるときはやる女やねん」
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◆ 夕暮れの帰り道
郵便局を出ると、夕日が街を赤く染めていた。
トモエは空を見上げた。
(占い師の言う“災い”……これのことやったんかな)
ユウトが言った。
「おばちゃん、また街を救ったね」
「いやぁ……たまたまや」
「でも、おばちゃんがいると安心するよ」
「そうか?」
「うん。みんなそう思ってる」
トモエは胸が温かくなった。
「よっしゃ。明日も頑張るで」
虎柄シャツが夕風に揺れた。




