第21話:『おばちゃん、謎の占い師に未来を告げられる』
リューネの朝は、今日も穏やかだった。
しかし、トモエの胸には、いつもと違うざわつきがあった。
(なんやろ……胸がムズムズするわ)
昨日の料理大会で優勝し、街の人々から祝福され、
「おばちゃん=街の英雄」
という謎の構図が完全に定着してしまった。
宿屋の女将・ミーナが声をかけてきた。
「おばちゃんさん、昨日は本当におめでとうございました」
「ありがとうなぁ。たこ焼きがこんなに人気になるとは思わんかったわ」
「今日も市場はおばちゃんさんの話題でいっぱいですよ」
「……なんか恥ずかしいなぁ」
ミーナは少しだけ真剣な顔になった。
「そういえば……市場に“占い師”が来ているそうですよ」
「占い師?」
「はい。年に一度だけ現れる、謎の旅人だとか……」
トモエは眉をひそめた。
(占い師か……なんか嫌な予感するなぁ)
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◆ 市場の異変
市場に着くと、いつもとは違う空気が漂っていた。
人々がざわざわと集まり、中央にテントが張られている。
「おばちゃん、おはよう!」
「今日は占い師が来てるで!」
「めっちゃ当たるらしいで!」
ユウトが駆け寄ってきた。
「おばちゃん! 占い師さん、すごい人気だよ!」
「どんな人なん?」
「黒いローブを着た、ちょっと怖い感じの人……」
トモエは腕を組んだ。
「うちは占いとか信じへんけど……まぁ、見てみよか」
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◆ 謎の占い師
テントの中は薄暗く、香草の匂いが漂っていた。
中央に座っていたのは、白髪の女性。
深い紫のローブをまとい、瞳は金色に輝いている。
「……来たわね」
トモエは驚いた。
「え、うちのこと知ってるん?」
「この街に来た瞬間から、あなたの魔力の波動は感じていたわ」
(なんやこの人……めっちゃ怪しい)
占い師は静かに言った。
「あなた……“異世界の者”ね?」
「……っ!」
トモエは思わず身を引いた。
「なんでそれ知ってんの?」
「あなたの魔力は、この世界のものではない。外の世界の力……それがあなたを包んでいる」
トモエは苦笑した。
「うちはただの大阪のおばちゃんやで?」
「いいえ。あなたは“選ばれし者”よ」
「いやいやいや! うちは選ばれたくないねん!」
占い師は微笑んだ。
「あなたの魔力は、癒しと調和の力。人を救い、街を導く力」
「導くって……うち、そんな大層なもんちゃうで」
「あなたが来てから、この街は変わったわ」
占い師は指を折りながら言った。
「魔力暴走区域の封印」
「魔道具の暴走鎮静」
「魔力不足の家庭の救済」
「問題児の心の解放」
「植物園の暴走鎮圧」
「料理大会での街の活性化」
トモエは頭を抱えた。
「なんで全部知ってんの!?」
「見えるのよ。あなたの“軌跡”が」
占い師は続けた。
「あなたは、この街に“幸運”を呼び込む存在」
「幸運……?」
「ええ。あなたが動くと、必ず誰かが救われる」
トモエは胸に手を当てた。
(うち……そんな大層なことしてるつもりないんやけどなぁ)
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◆ 占い師の予言
占い師は水晶玉に手をかざした。
「しかし……あなたの未来には“影”が見える」
「影?」
「この街に……大きな災いが近づいている」
「災い……?」
トモエは眉をひそめた。
「なんやそれ。具体的に言うてや」
「まだ“形”にはなっていない。だが……あなたの魔力が必要になる時が来る」
トモエはため息をついた。
「また騒動かいな……」
「ええ。だが、あなたなら乗り越えられる」
占い師はトモエの手を握った。
「あなたは……この街の“光”よ」
「光って……うちは虎柄のおばちゃんやで?」
「虎柄の光でもいいじゃない」
トモエは吹き出した。
「なんやそれ!」
占い師も微笑んだ。
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◆ 占い師の正体
占いが終わると、占い師は静かに言った。
「最後に……ひとつだけ言っておくわ」
「なんや?」
「あなたは、この世界に“呼ばれた”のではない」
「……え?」
「あなた自身が……“選んだ”のよ」
トモエは目を見開いた。
「どういう意味や?」
「それは……いずれわかるわ」
占い師は立ち上がり、テントの奥へ消えていった。
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◆ 市場の外で
ユウトが心配そうに言った。
「おばちゃん、大丈夫?」
「大丈夫や。ちょっとビビっただけや」
「占い師さん、何て言ってたの?」
「うちが“光”とか言うてたわ」
「おばちゃん、光っぽいよ!」
「どこがやねん!」
ユウトは笑った。
「でも……おばちゃんが来てから、街が明るくなったのは本当だよ」
「そうか?」
「うん。みんな笑ってる」
トモエは空を見上げた。
(うち……ほんまにこの街の役に立ててるんやろか)
夕焼けが街を優しく染めていた。
「よっしゃ。明日も頑張るで」
虎柄シャツが夕風に揺れた。




