第20話:『おばちゃん、魔法料理大会で優勝する』
リューネの朝は、今日もにぎやかだった。
市場の中央から、太鼓のような音と人々の歓声が響いてくる。
「なんや、今日はやけに騒がしいなぁ……」
宿屋の女将・ミーナが笑顔で言った。
「おばちゃんさん、今日は“魔法料理大会”なんですよ」
「魔法料理大会?」
「はい。年に一度、街の料理人たちが腕を競う大きなイベントです」
トモエの目が輝いた。
「料理大会……? それ、めっちゃおもろそうやん!」
「おばちゃんさん、出るんですか?」
「いや、うちはただの大阪のおばちゃんやし……」
そう言いながらも、胸の奥がざわついた。
(たこ焼き……また焼きたいなぁ)
ミーナは微笑んだ。
「きっと、街の人たちもおばちゃんさんに出てほしいと思いますよ」
「……そうかもしれんな」
トモエは虎柄シャツを整え、市場へ向かった。
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◆ 市場の熱気
市場はいつも以上に人であふれていた。
屋台が並び、魔力で光る料理が次々と並べられている。
「おばちゃん、おはよう!」
「今日の大会、絶対見てな!」
「今年は強豪が多いで!」
ユウトが駆け寄ってきた。
「おばちゃん! 今日の料理大会、すごいよ!」
「どんな料理出るん?」
「火の魔法で焼く“フレアステーキ”とか、氷魔法で冷やす“アイスフルーツ”とか!」
「めっちゃ美味しそうやん!」
そこへ、リオが走ってきた。
「おばちゃん! 出場者が一人足りないんだって!」
「ほう」
「大会の主催者が“ぜひおばちゃんに出てほしい”って!」
トモエは目を丸くした。
「なんでうちやねん!」
「たこ焼きが大人気だからだよ!」
「いや、あれは祭りのノリやろ……」
しかし、周りの人々が口々に言った。
「おばちゃん、出てや!」
「たこ焼き、また食べたい!」
「優勝できるで!」
トモエはため息をついた。
「しゃあないなぁ……ほな、出たるわ!」
市場が歓声に包まれた。
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◆ 魔法料理大会、開幕
大会会場は市場の中央に設置された巨大なステージだった。
観客席には街中の人々が集まっている。
司会者が声を張り上げた。
「さぁ! 年に一度の魔法料理大会、開幕です!」
「今年はなんと……特別ゲストが参加します!」
「異世界から来た、謎の虎柄料理人――大原トモエ!!」
トモエは頭を抱えた。
「なんやその紹介……!」
観客が大歓声を上げる。
「おばちゃんー!!」
「たこ焼きー!!」
「がんばれー!!」
トモエは手を振った。
「はいはい、頑張るわ!」
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◆ 料理対決スタート
今回のテーマは――
『自由料理』
好きな料理を作ってよいというルールだ。
トモエは迷わず言った。
「たこ焼きやな」
ユウトが笑った。
「やっぱり!」
「うちはこれしかないわ」
隣の料理人たちは、豪華な魔法料理を準備していた。
・炎をまとったステーキ
・空中で踊るサラダ
・魔力で味が変わるスープ
・氷の花が咲くデザート
トモエは粉を混ぜながら言った。
「みんな派手やなぁ……」
「おばちゃんのは地味だけど……絶対美味しいよ!」
「せやろ?」
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◆ しかし、事件は起きる
たこ焼きを焼いていると――
「……へっ……へっ……」
(あかん……! このタイミングでくしゃみは……!)
「へくしっ!!」
――ボフッ!!
魔力が暴発し、鉄板の火力が一気に上がった。
「うわぁぁぁっ!」
「たこ焼きが……!」
「燃えるーっ!」
しかし――
「……あれ?」
「めっちゃカリッとしてる!」
「こっちのほうが美味しい!」
トモエは目を丸くした。
「え、うちのくしゃみで……?」
「おばちゃんの魔力、料理にも効くんや!」
「これ“くしゃみ焼き”や!」
「変な名前つけんといて!」
しかし、観客は大喜びだった。
「おばちゃん、もう一皿!」
「くしゃみ焼きちょうだい!」
「今日の大会、これが一番や!」
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◆ 審査タイム
審査員たちが料理を試食していく。
「このステーキ……魔力の香りが素晴らしい」
「このスープ……味が変わるのは面白いな」
「このデザート……美しい……」
そして、トモエのたこ焼き。
審査員が一口食べた瞬間――
「……っ!!」
会場が静まり返る。
「ど、どうなんや……?」
審査員は震える声で言った。
「……これは……」
「これは……!!」
「魔法料理の概念を覆す味だ!!」
会場が大歓声に包まれた。
「おばちゃんすげぇぇぇ!!」
「たこ焼き最強!!」
「優勝や!!」
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◆ 優勝発表
司会者が叫んだ。
「優勝は――」
「異世界から来た虎柄の料理人!」
「大原トモエ!!」
トモエは頭を抱えた。
「なんで優勝してもうたん……!」
ユウトが笑った。
「おばちゃん、すごいよ!」
「せやろ? うちはやるときはやる女やねん」
リオも駆け寄ってきた。
「おばちゃん、優勝おめでとう!」
「ありがとうなぁ」
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◆ 優勝賞品
司会者がトモエに賞品を渡した。
「こちらが優勝賞品、“マナクッキングブック”です!」
「なんやこれ?」
「魔法料理のレシピが100種類載っています!」
トモエは目を輝かせた。
「これ……めっちゃええやん!」
「おばちゃん、また新しい料理作れるね!」
「せやなぁ……楽しみやわ!」
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◆ 夕暮れの帰り道
ユウトが隣で言った。
「おばちゃん、今日もすごかったね」
「せやろ? うちはやるときはやる女やねん」
「街の人、みんな喜んでたよ」
「そうか?」
「うん。おばちゃんが来てから、街がどんどん明るくなってるよ」
トモエは空を見上げた。
夕焼けが街を優しく染めていた。
「よっしゃ。明日も頑張るで」
虎柄シャツが夕風に揺れた。




