第18話:『おばちゃん、魔法植物園を救う』
リューネの朝は、今日も穏やかだった。
しかし、トモエの胸には少しだけワクワクがあった。
(今日は魔法植物園に行くんや。楽しみやなぁ)
昨日の参観日で子どもたちと保護者に大人気となり、トモエはすっかり“おばちゃん先生”として認識されていた。
だが今日は久しぶりに自由時間がある。
宿屋の女将・ミーナが声をかけてきた。
「おばちゃんさん、今日はお休みなんですよね?」
「せや。ちょっと観光でもしよ思てな」
「魔法植物園に行くんですか?」
「なんで知ってんの?」
「昨日、ユウトくんが“おばちゃんを案内するんだ!”って張り切ってましたよ」
トモエは笑った。
「ほんま、あの子は元気やなぁ」
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◆ 魔法植物園へ
市場に着くと、ユウトが待っていた。
「おばちゃん! 今日は植物園行こ!」
「おはよう、ユウト。案内頼むで」
「任せて!」
二人は街の外れにある大きな温室へ向かった。
そこには、魔力を帯びた植物が育てられている。
「ここが魔法植物園やな?」
「うん! 珍しい植物がいっぱいあるんだよ!」
入り口には、園長らしき老人が立っていた。
「おや……あなたが噂の“虎柄のおばちゃん”かね?」
「なんでみんなうちのこと知ってんの!?」
「街中で有名ですよ。魔力暴走を止め、子どもたちを救い、魔道具を鎮め……」
「いやいや、そんな大したことしてへんて」
園長は笑った。
「今日はゆっくり楽しんでいってください」
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◆ 魔法植物の世界
温室の中は、色とりどりの植物であふれていた。
・光る花
・歌う草
・触ると笑うキノコ
・魔力を吸うツタ
・空中に浮かぶ果実
トモエは目を輝かせた。
「うわぁ……めっちゃ綺麗やん!」
「おばちゃん、これ見て! “マナフラワー”っていうんだよ!」
「ほんまや、光っとる!」
トモエは花にそっと触れた。
――ぽわん。
花が優しい光を放ち、トモエの手を包んだ。
「なんやこれ……癒されるわぁ」
「マナフラワーは、魔力の流れを整える効果があるんだって!」
トモエは深呼吸した。
「ええなぁ……こういう場所、好きやわ」
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◆ しかし、事件は起きる
園内を歩いていると、突然――
「きゃああああっ!!」
悲鳴が響いた。
「なんや!?」
「おばちゃん、あっち!」
温室の奥で、巨大なツタが暴れ回っていた。
まるで生き物のように動き、職員たちを追い回している。
「“マナツタ”が暴走してる!」
「魔力が急に増えて……制御できないんだ!」
「誰か助けてくれ!」
トモエは腕まくりした。
「よっしゃ、うちが行くで!」
「おばちゃん、危ないよ!」
「危ないから行くんや!」
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◆ マナツタとの対決
暴走するツタは、まるで巨大な蛇のようだった。
「シャアアアアッ!!」
ツタがトモエに襲いかかる。
「こら! 暴れんとき!」
トモエは手をかざした。
「マナドレイン!」
――ふわぁぁぁ。
ツタの魔力が吸い取られ、動きが鈍くなる。
「よし……あとちょっとや!」
しかし――
「シャアアアアッ!!」
ツタは最後の力を振り絞り、トモエに巻きつこうとした。
ユウトが叫んだ。
「おばちゃん!!」
トモエは叫んだ。
「マナシールド!!」
――ドォォォォォンッ!!
光の盾が現れ、ツタを弾き飛ばした。
「うわぁぁぁっ!」
「すごい……!」
「おばちゃん、魔法使いみたいや!」
「うちは魔法使いやなくて、大阪のおばちゃんや!」
ツタは弱り、地面に倒れた。
園長が駆け寄ってきた。
「助かった……! 本当にありがとう!」
「ええって。ちょっと魔力吸っただけや」
園長は首を振った。
「あなたの魔力……植物を傷つけずに鎮めている。こんなこと、普通はできません」
「そうなん?」
「あなたは……“癒しの魔力”を持っているのかもしれません」
トモエは照れくさそうに笑った。
「うちはただの世話焼きやで?」
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◆ マナツタの秘密
園長は倒れたツタを見ながら言った。
「実は……このマナツタは、街の魔力の乱れを吸収していたんです」
「魔力の乱れ?」
「最近、街の魔力が不安定になっているでしょう?」
「せやな……なんか色々あったし」
「その影響で、ツタが魔力を吸いすぎて暴走したのです」
ユウトが言った。
「おばちゃんの魔力が強いから……?」
「いや、あなたの魔力は“安定”している。むしろ……街を守っている」
トモエは胸に手を当てた。
(うちの魔力……ほんまに誰かの役に立ててるんやろか)
園長は続けた。
「あなたが来てから、植物園の魔力も安定してきています。ぜひ……また来てください」
「ええよ。癒されるしな」
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◆ 帰り道
植物園を出ると、ユウトが言った。
「おばちゃん、今日もすごかったね」
「せやろ? うちはやるときはやる女やねん」
「でも……おばちゃんの魔力って、本当に特別なんだね」
「そうなんかなぁ……」
ユウトは笑った。
「うん。街のみんながそう思ってるよ」
「そうか……」
トモエは空を見上げた。
異世界の空は、今日も優しい色をしていた。
「よっしゃ。明日も頑張るで」
虎柄シャツが夕風に揺れた。




