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ミナミのおばちゃん、異世界で心の影を救います  作者: ぽそまる


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第14話:『おばちゃん、問題児の心をほどく』

リューネの朝は、今日も穏やかだった。

市場の喧騒が遠くから聞こえ、魔力灯の光が街を照らす。


トモエは宿屋の朝食を食べながら、今日の予定を考えていた。


「今日は魔法学校の日やな……子どもら、元気やろか」


ミーナが笑顔で言った。


「おばちゃんさん、学校の先生たちが“ぜひ今日も来てほしい”って言ってましたよ」

「うち、先生ちゃうのになぁ……」

「でも、子どもたちが喜んでるんですから」


トモエは照れくさそうに笑った。


「ほな、今日も行ってくるわ」


---


◆ 魔法学校へ


学校に着くと、子どもたちが一斉に駆け寄ってきた。


「おばちゃん先生、おはよう!」

「今日も魔法教えて!」

「昨日の続きしたい!」


トモエは笑顔で手を振った。


「みんな元気やなぁ。ほな、今日も頑張ろか」


そこへエリナ先生がやってきた。


「おばちゃんさん、今日もありがとうございます」

「ええよ。子どもらの顔見たら元気出るしな」

「実は……今日は少しお願いがありまして」


エリナは少し困ったような顔をした。


「“問題児”が一人いるんです」


トモエは眉をひそめた。


「問題児?」

「はい。名前は“カイル”。魔力は強いのですが、授業をサボったり、他の子をからかったり……」

「ほうほう」

「最近は魔法の暴発も多くて……教師たちも手を焼いています」


トモエは腕を組んだ。


「ほな、うちが話してみよか」

「本当に……?」

「任しとき。子どもの扱いは慣れとる」


エリナはホッとしたように微笑んだ。


---


◆ 問題児・カイル


カイルは教室の隅で、机に足を乗せて座っていた。

金髪で、目つきは鋭い。

周りの子どもたちは距離を置いている。


「カイル、今日はちゃんと授業に――」

「うるせぇよ。どうせ俺なんか、誰も期待してねぇだろ」


エリナは困った顔をした。


トモエはカイルの前に歩み寄った。


「おはようさん」

「……誰だよ、あんた」

「うちは大原トモエ。大阪のおばちゃんや」

「おば……ちゃん?」


カイルは怪訝な顔をした。


「なんだよその服。虎柄って……ダサ……」

「ダサい言うたな?」


トモエはにっこり笑った。


「うちの虎柄バカにしたら、ただじゃおかへんで?」

「ひっ……!」


カイルは思わず身を引いた。


周りの子どもたちがクスクス笑う。


「カイル、ビビってる!」

「おばちゃん先生、強い!」


トモエは笑った。


「ほら、座り。授業始めるで」

「……別に、座ってやってもいいけどよ」


カイルはぶつぶつ言いながら席に戻った。


---


◆ 授業開始


今日の授業は“風の魔法”。


「まずは“ウィンド”って言うてみ。そしたら風が出るで」


子どもたちが一斉に唱える。


「ウィンド!」


――ふわぁ。


優しい風が教室を吹き抜けた。


「おばちゃん先生、できた!」

「ええやん、上手やで」


しかし――


「ウィンド!」


カイルの魔法だけ、教室の机を吹き飛ばすほどの強風になった。


「うわぁぁぁっ!」

「机が飛んだ!」

「カイル、またやった!」


カイルは舌打ちした。


「チッ……俺の魔力、どうせ暴走するんだよ」

「カイル、落ち着きや」

「うるせぇ! 俺なんか……魔法なんて向いてねぇんだよ!」


トモエはカイルの前にしゃがみ込んだ。


「カイル、あんた……魔法怖いんか?」

「……っ」


カイルの肩が震えた。


「俺……昔、魔法暴走させて……友達をケガさせたんだ……」

「ほう」

「それから……誰も俺に近づかなくなった。教師も……俺を避けてる」

「せやろな」

「だから……俺なんか……魔法使わないほうがいいんだよ!」


トモエはカイルの頭をぽんと叩いた。


「アホ言いなや」

「……は?」

「魔法が怖いんやなくて、失敗が怖いだけやろ?」

「……っ」


カイルの目が揺れた。


「失敗してもええんや。大事なんは、そこからどうするかや」

「でも……」

「うちかて、くしゃみしたら市場吹っ飛ばすんやで?」

「えっ……?」

「ほんまや。昨日なんか、野菜全部空飛んだわ」


子どもたちが笑い出した。


「おばちゃん先生、くしゃみ魔法や!」

「市場の人、みんな知ってるで!」


カイルも思わず笑った。


「……そんな先生、初めてだ」

「せやろ? うちは特別やねん」


---


◆ カイルの挑戦


トモエはカイルの手を取った。


「ほな、もう一回やってみよか」

「……でも」

「大丈夫や。うちがついとる」


カイルは深呼吸した。


「ウィンド……!」


――ふわぁ。


今度は優しい風が吹いた。


「……できた……?」

「できたで。めっちゃ上手やん」

「ほんとに……?」

「ほんまや。うちは嘘つかへん」


カイルの目に涙が浮かんだ。


「俺……魔法、使ってもいいのかな……」

「当たり前や。あんたには才能あるんやから」


カイルは泣きながら笑った。


「……ありがとう、おばちゃん先生」


---


◆ 子どもたちの輪


授業が終わると、子どもたちがカイルに駆け寄った。


「カイル、すごかったで!」

「一緒に練習しよ!」

「また明日もやろ!」


カイルは驚いた。


「……俺と、一緒に?」

「当たり前やん!」

「友達やろ?」


カイルは涙をこぼした。


「……ありがとう……みんな……」


トモエは胸が温かくなった。


(子どもって……ほんま素直でええなぁ)


---


◆ エリナ先生の言葉


授業後、エリナが深く頭を下げた。


「おばちゃんさん……本当にありがとうございます」

「ええって。うちはただの世話焼きや」

「カイルがあんな顔をするの……初めて見ました」

「子どもはな、誰かに認めてもらいたいだけやねん」

「……あなたは、本当に不思議な力を持っていますね」

「魔力やなくて、世話焼きの力やな」


エリナは笑った。


---


◆ 夕暮れの帰り道


ユウトが隣で言った。


「おばちゃん、今日もすごかったね」

「せやろ? うちはやるときはやる女やねん」

「カイル、すごく元気になってたよ」

「人はな、誰かに寄り添ってもらうだけで変われるんや」


ユウトは笑った。


「おばちゃんが来てから、街がどんどん優しくなってるよ」

「そうか?」

「うん。みんな笑ってる」


トモエは空を見上げた。


夕焼けが街を優しく染めていた。


「よっしゃ。明日も頑張るで」


虎柄シャツが夕風に揺れた。

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