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ミナミのおばちゃん、異世界で心の影を救います  作者: ぽそまる


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125/142

第125話:『おばちゃん、“忘れたはずの声”と再会する』

白霧の森の中。

視界は白く、

音は吸い込まれ、

世界はまるで“夢の中”のようだった。


ユウトの声も、

カイルの声も、

リリアの声も、

セイルの声も、

エルミナの声も――

すべて霧に飲まれて消えた。


トモエはひとり、

白い霧の中に立っていた。


(またひとりか……

 せやけど……

 この霧……

 なんか違う)


霧は冷たくない。

むしろ、胸の奥をそっと撫でるような、

懐かしい気配を含んでいた。


そのとき――

霧の奥から声が聞こえた。


「……トモエ……

 なんで……

 あのとき……

 助けてくれへんかったん……?」


トモエは息を呑んだ。


(この声……

 まさか……)


霧が揺れ、

ひとりの影が姿を現した。


---


◆ ◆ ◆


◆ “忘れたはずの人”の姿


霧の中から現れた影は、

トモエが“二度と会えない”と思っていた人物の姿をしていた。


それは――

トモエの妹、ミオ

の姿だった。


ユウトたちには話したことがない。

誰にも話したことがない。

トモエがずっと胸の奥に押し込んできた“痛み”。


ミオは、

トモエがまだ若かった頃、

病で亡くなった。


トモエは震える声で言った。


「……ミオ……?」


影のミオは、

悲しそうに微笑んだ。


「お姉ちゃん……

 なんで来てくれへんかったん……

 あのとき……

 ひとりで……

 怖かったんやで……」


トモエは胸が締め付けられた。


(やめて……

 そんなこと言わんといて……

 うちは……

 うちは……)


---


◆ ◆ ◆


◆ “後悔”が形を持つ


影のミオは続けた。


「お姉ちゃんは……

 仕事で忙しかったんやろ……?

 でも……

 私は……

 お姉ちゃんに来てほしかった……

 最後に……

 会いたかった……」


トモエは目を閉じた。


(あのとき……

 うちは……

 ミオの最期に間に合わんかった)


ミオは静かに言った。


「お姉ちゃん……

 私……

 寂しかった……」


トモエは叫んだ。


「ごめん……

 ごめんな……

 ミオ……

 うちは……

 あんたの最期に……

 間に合わんかった……!」


霧が揺れ、

影のミオは悲しそうに首を振った。


「……お姉ちゃん……

 まだ……

 自分を責めてるん……?」


トモエは拳を握った。


「責めてるに決まっとるやろ……

 うちは……

 あんたを守れへんかった……

 あんたの最期に……

 そばにおられへんかった……

 それが……

 ずっと……

 心の底に刺さっとるんや……!」


ミオは静かに近づいた。


---


◆ ◆ ◆


◆ “本当の声”


影のミオは、

トモエの手をそっと握った。


その手は冷たくなく、

温かかった。


「……お姉ちゃん……

 私……

 怒ってへんよ……」


トモエは目を見開いた。


「……え……?」


ミオは微笑んだ。


「お姉ちゃんは……

 ずっと頑張ってた。

 私のために……

 家族のために……

 自分のこと後回しにして……

 ずっと働いて……

 ずっと走って……

 ずっと……

 ひとりで頑張ってた」


トモエは震えた。


(ミオ……

 あんた……)


ミオは続けた。


「私は……

 お姉ちゃんが来れへんかったこと……

 恨んでへん。

 寂しかったけど……

 でも……

 お姉ちゃんが私を忘れたなんて……

 思ったことない」


トモエの目から涙がこぼれた。


「忘れるわけないやろ……

 うちは……

 ずっと……

 あんたのこと……

 心の中におる……」


ミオは優しく微笑んだ。


「なら……

 もう自分を責めんといて。

 お姉ちゃんは……

 十分頑張った。

 もう……

 前に進んでええんやよ」


---


◆ ◆ ◆


◆ “別れの時”


霧がゆっくりと薄くなり、

ミオの姿が淡く揺れ始めた。


トモエは手を伸ばした。


「ミオ……

 行かんといて……

 もう少し……

 話したい……」


ミオは首を振った。


「私は……

 もう大丈夫。

 お姉ちゃんが……

 前に進んでくれるなら……

 それでええ」


トモエは涙を流しながら言った。


「ミオ……

 ありがとう……

 ほんまに……

 ありがとう……」


ミオは最後に微笑んだ。


「お姉ちゃん……

 大好きやで」


霧が光に変わり、

ミオの姿は消えた。


---


◆ ◆ ◆


◆ 仲間の声が戻る


霧が晴れ、

現実の森が戻ってきた。


ユウトが駆け寄る。


「おばちゃん!!

 大丈夫か!!

 めっちゃ心配したで!!」


トモエは涙を拭いた。


「大丈夫や……

 ちょっと……

 大事な人と話してただけや」


カイルは優しく言った。


「白霧の森は……

 “心の記憶”を映す場所です。

 おばちゃん先生にも……

 大切な記憶があったんですね」


リリアは涙をこらえながら言った。


「おばちゃんさん……

 無事でよかった……」


セイルは静かに言った。


「光の継承者。

 あなたはまたひとつ、

 心の影を越えた」


エルミナは深く頭を下げた。


「……あなたの心が……

 少しでも軽くなっていますように……」


トモエは空を見上げた。


(ミオ……

 うちは前に進むで)


「よっしゃ。

 行こか、みんな。

 霧の谷はもうすぐや」


虎柄シャツが風に揺れ、

おばちゃんは再び歩き出した。

ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます。


第125話では、

白霧の森が見せる“過去の幻影”として、

おばちゃんがずっと胸の奥に押し込んできた

「妹・ミオとの別れ」

が描かれました。


孤独、諦め、怒り、喪失――

そのすべてを越えてきたおばちゃんが、

ついに“自分自身の最も深い後悔”と向き合う回。


ミオの言葉は、

おばちゃんの心をそっと解きほぐし、

新たな一歩を踏み出す力を与えてくれます。


次回、第126話では

霧の谷の本格的な探索と、

そこで待つ“新たな影の気配”

が描かれます。


これからも、おばちゃんの物語を

どうぞよろしくお願いいたします。

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