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ミナミのおばちゃん、異世界で心の影を救います  作者: ぽそまる


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121/125

第121話:『おばちゃん、“喪失の影”の涙を見る』

怒りの影が光に溶けたあと、

ノルディア中心広場には、

これまでとは違う“静かな黒い霧”が立ち込めた。


ユウトが震えながら言う。


「おばちゃん……

 なんか……

 今までの影より……

 静かやのに……

 めっちゃ怖い……」


カイルは魔力を探りながら顔を青くした。


「影の濃度が……

 異常です……

 これは……

 “喪失の影”……!」


リリアは胸を押さえた。


「喪失……

 なんだか……

 胸が締めつけられる……

 息が苦しい……」


セイルは静かに言った。


「孤独は助けを求める声。

 諦めは声を失った心。

 怒りは壊れる直前の叫び。

 そして喪失は……

 “心が壊れたあとの静けさ”」


エルミナは震える声で言った。


「……ノルディアの人々は……

 冬の中で……

 大切なものを失い続けました……

 家族……

 友……

 未来……

 その痛みが……

 影になったのです……」


トモエは前を見据えた。


(喪失の影……

 これは……

 今までで一番深い影や)


黒い霧が渦を巻き、

トモエの視界を飲み込んだ。


---


◆ ◆ ◆


◆ “喪失の街”に立つ


霧が晴れると、

トモエはまた別の街に立っていた。


雪は降り続け、

家々は崩れ、

道には誰もいない。


しかし――

孤独の街とも、

諦めの街とも、

怒りの街とも違う。


ここには、

“静かな悲しみ” が満ちていた。


ユウトの声が遠くから聞こえる。


「おばちゃん!!

 返事して!!」


しかしその声も、

すぐに霧に飲まれた。


(またひとり……

 せやけど……

 この静けさ……

 胸が痛い)


そのとき、

雪の中から声が聞こえた。


『……どうして……

 いなくなったの……』


トモエは振り返った。


そこには、

影の子どもが立っていた。


---


◆ ◆ ◆


◆ “喪失の影”が語りかける


影の子どもは、

顔のない影のはずなのに、

どこか“泣いている”ように見えた。


『……どうして……

 帰ってこないの……』


トモエは胸が締め付けられた。


(これは……

 ノルディアの人たちが……

 冬の中で失ったもの……

 その痛みや)


影の子どもは続けた。


『……寒い……

 ひとりはいや……

 でも……

 もう誰も……

 いない……』


トモエは影に近づいた。


「……せやな。

 大切な人を失うんは……

 ほんまに辛い」


影は震えた。


『……返して……

 返してよ……

 大切な人を……

 返して……』


トモエは目を閉じた。


(返してほしい気持ち……

 痛いほどわかる)


---


◆ ◆ ◆


◆ “喪失の影”が形を持つ


影の子どもは、

ゆっくりと形を変えた。


子どもから大人へ。

大人から老人へ。

老人からまた子どもへ。


それは――

ノルディアの人々が失ってきた

すべての“誰か” の姿だった。


影は静かに言った。


『……失ったものは……

 もう戻らない……

 だから……

 心も……

 凍った……』


トモエは影を見つめた。


「戻らへんもんは……

 確かにある。

 せやけど……

 それでも前に進むんが……

 生きるってことや」


影は揺れた。


『……前に……

 進めない……

 痛い……

 苦しい……

 怖い……』


トモエは影に手を伸ばした。


「怖くてええ。

 痛くてええ。

 泣いてええ。

 せやけど……

 ひとりで抱えんでええんや」


影は震えた。


---


◆ ◆ ◆


◆ “喪失”を抱きしめる


トモエは影を抱きしめた。


影は冷たく、

重く、

まるで“凍った涙”のようだった。


影は震えながら言った。


『……痛い……

 苦しい……

 でも……

 あたたかい……』


トモエは静かに言った。


「大切な人を失った痛みは……

 消えへん。

 せやけど……

 その痛みがあるからこそ、

 人は優しくなれる。

 強くなれる。

 前に進める」


影は涙のような光をこぼした。


『……前に……

 進んでいいの……?』


「進んでええ。

 あんたらの痛みは……

 うちが受け止める」


影は光に包まれ、

ゆっくりと溶けていった。


---


◆ ◆ ◆


◆ 試練の終わり


霧が晴れ、

現実の広場が戻ってきた。


ユウトが駆け寄る。


「おばちゃん!!

 ほんまに大丈夫なんか!!

 めっちゃ心配したで!!」


トモエは笑った。


「大丈夫や。

 ちょっと喪失と喧嘩してただけや」


カイルは息をついた。


「喪失の影……

 ノルディアの人々が抱えてきた

 “最も深い痛み”……

 それを受け止めたんですね……」


リリアは涙を拭った。


「おばちゃんさん……

 本当に……

 すごい……」


セイルは静かに言った。


「光の継承者。

 あなたは“喪失の影”を溶かした。

 国の影は……

 ほぼ消えつつある」


エルミナは深く頭を下げた。


「……ありがとうございます……

 あなたがいてくださって……

 本当に……心強い……」


トモエは前を見据えた。


(次は……

 古い影の本体や)


「よっしゃ。

 行こか、みんな。

 ここからが本番や」


黒い霧が静かに揺れ、

“古い影”の気配が近づいていた。

ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます。


第121話では、

“国の影の試練”の最終段階として、

ノルディアの人々が長い冬の中で抱えてきた

「喪失の影」

が描かれました。


孤独、諦め、怒り――

そのすべての奥にあるのが“喪失”。


失ったものは戻らない。

それでも前に進むために、

おばちゃんはその痛みを抱きしめ、

光へと変えていきます。


次回、第122話では

ついに“古い影の本体”が姿を現し、

ノルディアの運命を決める戦いが始まる回

が描かれます。


これからも、おばちゃんの物語を

どうぞよろしくお願いいたします。

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