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ミナミのおばちゃん、異世界で心の影を救います  作者: ぽそまる


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120/124

第120話:『おばちゃん、“怒りの影”に呑まれかける』

孤独の影、諦めの影を越えたあと、

ノルディア中心広場には再び黒い霧が立ち込めた。


しかし――

今度の霧は違った。


重い。

熱い。

そして、どこか“刺すような痛み”を含んでいる。


ユウトが眉をひそめた。


「おばちゃん……

 なんか……

 今までの霧と違うで……

 胸がチクチクする……!」


カイルは魔力を探りながら顔を青くした。


「これは……

 “怒りの影”……!

 ノルディアの人々が長い冬の中で抱えてきた、

 どうしようもない怒り……!」


リリアは震えた。


「怒り……

 なんだか……

 胸が熱くなる……

 苦しい……」


セイルは静かに言った。


「孤独は助けを求める声。

 諦めは声を失った心。

 そして怒りは……

 “心が壊れる直前の叫び”」


エルミナは涙をこらえた。


「……ノルディアの人々は……

 冬に奪われ続け……

 いつしか……

 怒りを抱くことすら罪だと思うようになりました……

 その抑圧が……

 影になったのです……」


トモエは前を見据えた。


(怒りの影……

 これは……

 簡単にはいかんやろな)


黒い霧が渦を巻き、

トモエの視界を飲み込んだ。


---


◆ ◆ ◆


◆ “怒りの街”に立つ


霧が晴れると、

トモエはまた別の街に立っていた。


雪は降り続け、

家々は崩れ、

道には深い亀裂が走っている。


孤独の街とも、

諦めの街とも違う。


ここには――

“怒り”が満ちていた。


ユウトの声が遠くから聞こえる。


「おばちゃん!!

 返事して!!」


しかしその声も、

すぐに霧に飲まれた。


(またひとり……

 せやけど……

 この空気……

 胸が熱い……)


そのとき、

地面が震えた。


---


◆ ◆ ◆


◆ “怒りの影”が姿を現す


地面の亀裂から、

黒い炎のような影が立ち上がった。


影は人の形をしているが、

輪郭は揺れ、

目だけが赤く光っている。


影は叫んだ。


『……奪われた……!

 寒さに……

 希望に……

 未来に……

 全部奪われた……!!』


トモエは息を呑んだ。


(これは……

 ノルディアの人たちの……

 “怒り”そのものや)


影は続けた。


『……誰も助けてくれなかった……

 誰も……

 何も……

 変えてくれなかった……!!』


トモエは影を見つめた。


「……せやな。

 怒りたくなる気持ち、わかるで」


影は揺れた。


『……怒ってはいけないと言われた……

 怒りは弱さだと……

 怒りは罪だと……

 だから……

 心が壊れた……!!』


トモエは胸が締め付けられた。


(怒りを押し込め続けたら……

 そら心も壊れるわ)


---


◆ ◆ ◆


◆ “怒りの影”が襲いかかる


影は突然、

トモエに向かって飛びかかった。


ユウトの声が遠くから聞こえる。


「おばちゃん!!

 危ない!!」


カイルの声も震えていた。


「怒りの影は……

 触れた者の心を“爆発”させます!!

 気をつけて!!」


リリアの声は涙混じりだった。


「おばちゃんさん……

 戻ってきて……!」


セイルの声は冷静だった。


「光の継承者。

 怒りの影は……

 “心の温度”を乱す。

 冷静さを奪われれば……

 飲まれる」


エルミナの声は祈るようだった。


「……どうか……

 ノルディアの怒りを……

 受け止めてください……」


影は叫んだ。


『……怒りを返せ!!

 お前も怒れ!!

 怒りで壊れろ!!』


トモエは影の手を掴んだ。


「怒りは……

 悪いもんやない」


影は揺れた。


『……嘘だ……!!』


「怒りは……

 “心が傷ついた証拠”や。

 誰かを守りたい気持ちの裏返しや。

 怒ってええんや」


影は震えた。


---


◆ ◆ ◆


◆ “怒り”を否定しない強さ


トモエは影に近づいた。


影は怯えたように後ずさった。


『……近づくな……

 お前も……

 壊れる……!!』


トモエは静かに言った。


「壊れへん。

 怒りは……

 うちも知っとる」


影は揺れた。


『……お前も……

 怒ったことが……?』


トモエは頷いた。


「あるで。

 いっぱいある。

 理不尽なことも、

 悲しいことも、

 悔しいことも……

 怒りたくなることなんか山ほどあった」


影は震えた。


『……じゃあ……

 どうして……

 壊れなかった……?』


トモエは胸に手を当てた。


「怒りを“抱えたまま”でも、

 前に進む方法を知っとるからや。

 怒りを否定せんと、

 ちゃんと抱きしめて、

 自分の力に変えるんや」


影は光に包まれ始めた。


『……抱きしめる……?

 怒りを……?』


「せや。

 怒りは悪やない。

 あんたらが怒ったんは……

 生きたかったからや。

 守りたかったからや。

 それは……

 尊い気持ちや」


影は涙のような光をこぼした。


『……あたたかい……

 こんな……

 怒りの受け止め方……

 知らなかった……』


影は光に溶け、

雪の中へ消えていった。


---


◆ ◆ ◆


◆ 試練の終わり


霧が晴れ、

現実の広場が戻ってきた。


ユウトが駆け寄る。


「おばちゃん!!

 ほんまに大丈夫なんか!!

 めっちゃ怖かったで!!」


トモエは笑った。


「大丈夫や。

 ちょっと怒りと喧嘩してただけや」


カイルは息をついた。


「怒りの影……

 ノルディアの人々の“心の叫び”……

 それを受け止めたんですね……」


リリアは涙を拭った。


「おばちゃんさん……

 本当に……

 すごい……」


セイルは静かに言った。


「光の継承者。

 あなたは“怒りの影”を溶かした。

 国の影は……

 確実に弱まっている」


エルミナは深く頭を下げた。


「……ありがとうございます……

 あなたがいてくださって……

 本当に……心強い……」


トモエは前を見据えた。


(次は……

 国の影の“核心”が来る)


「よっしゃ。

 行こか、みんな。

 試練は……

 いよいよ佳境や」


黒い霧が再び揺れ、

次の影が姿を現し始めた。

ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます。


第120話では、

“国の影の試練”の第三段階として、

ノルディアの人々が長い冬の中で抱えてきた

「怒りの影」

が描かれました。


怒りは悪ではなく、

“心が傷ついた証拠”。

それを否定せず、

抱きしめて受け止めることで、

おばちゃんは影を溶かしていきます。


次回、第121話では

国の影の最終段階:

ノルディアの人々が抱えてきた“喪失の影”

が姿を現します。


これからも、おばちゃんの物語を

どうぞよろしくお願いいたします。

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