表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ミナミのおばちゃん、異世界で心の影を救います  作者: ぽそまる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

116/124

第116話:『おばちゃん、“心の底”を覗かれる』

ノルディア中心広場を覆う黒い霧。

その中心に立つ“古い影の分身”。


影の分身は静かに手を広げた。


『……光の継承者よ……

 お前の“心の底”を見せよ……』


その声と同時に、

黒い霧がトモエの足元から立ち上がり、

世界を飲み込んだ。


ユウトが叫ぶ。


「おばちゃん!!

 あかん!!

 霧が――」


声は途中で途切れ、

トモエの視界は真っ暗になった。


(……ここは……?)


---


◆ ◆ ◆


◆ “心の底” ―― 誰もいない世界


霧が晴れると、

そこは――

何もない世界だった。


白い地面。

白い空。

風も音もない。


トモエはひとりだった。


ユウトも、

カイルも、

リリアも、

セイルも、

エルミナもいない。


(みんな……どこや……?)


そのとき、

遠くから足音が聞こえた。


コツ……コツ……コツ……


トモエは振り返った。


そこに立っていたのは――

“若い頃の自分”だった。


---


◆ ◆ ◆


◆ 若いトモエ ―― “置き去りの願い”


若いトモエは、

大阪で働いていた頃の姿。


疲れた顔。

無理して笑う口元。

誰にも言えなかった本音。


若いトモエは静かに言った。


「あんた……

 ほんまにそれでええの?」


トモエは眉をひそめた。


「またあんたか……

 前にも出てきたやろ」


若いトモエは首を振った。


「前のは“後悔”。

 今回のは……

 “願い”や」


トモエは息を呑んだ。


「願い……?」


若いトモエは続けた。


「あんた……

 本当は……

 誰かに頼りたかったんちゃう?」


トモエは言葉を失った。


若いトモエはさらに言う。


「誰かに甘えたかった。

 誰かに守ってほしかった。

 誰かに……

 “しんどい”って言いたかった」


トモエは拳を握った。


(これは……

 うちがずっと心の底に押し込んどったもんや)


---


◆ ◆ ◆


◆ “本当の願い”を突きつけられる


若いトモエは一歩近づいた。


「あんたは強い。

 でも……

 強さの裏で、

 ずっとひとりで耐えてきた」


トモエは目をそらした。


「……せやな。

 うちは……

 誰にも頼らんと生きてきた」


若いトモエは静かに言った。


「それが……

 本当に幸せやった?」


トモエは胸が締め付けられた。


(幸せ……

 うちは……

 どうやったんやろ)


若いトモエは続けた。


「あんた……

 本当は……

 誰かに言いたかったんちゃう?

 “助けて”って」


トモエは目を閉じた。


(助けて……

 そんな言葉……

 うちは……

 ずっと言えへんかった)


---


◆ ◆ ◆


◆ “影の声”が割り込む


そのとき――

空気が震えた。


黒い霧が渦を巻き、

影の分身の声が響いた。


『……そうだ……

 それが“心の底”……

 お前の影……

 “頼れない心”……』


若いトモエは影に飲まれ、

黒い姿へと変わった。


影のトモエは笑った。


「あんたは……

 誰にも頼れへん。

 誰かに甘えるなんてできへん。

 だから……

 心が凍るんや」


トモエは震えた。


(これは……

 うちの……

 “弱さ”……)


影のトモエは迫る。


「あんたは強いんやない。

 強く“見せてる”だけや。

 ほんまは……

 ひとりが怖いんやろ?」


トモエは叫んだ。


「怖いわ!!

 ひとりは怖い!!

 誰にも頼られへんのも怖い!!

 せやけど――

 それでもうちは前に進む!!」


光が弾け、

影のトモエは後退した。


---


◆ ◆ ◆


◆ “頼る”という強さ


トモエは胸に手を当てた。


「うちは……

 誰かに頼るのが苦手や。

 甘えるのも下手や。

 せやけど……

 今は違う」


影のトモエは揺れた。


「違う……?」


トモエは言った。


「今は……

 ユウトも、

 カイルも、

 リリアも、

 セイルも、

 エルミナもおる。

 うちは……

 もうひとりやない」


影のトモエは震えた。


「……ひとりじゃ……

 ない……?」


トモエは頷いた。


「せや。

 うちは仲間に頼る。

 仲間を信じる。

 それが……

 うちの“心の底”や」


光が広がり、

影のトモエは砕け散った。


黒い霧が晴れ、

現実の世界が戻ってきた。


---


◆ ◆ ◆


◆ 仲間の声


ユウトが駆け寄る。


「おばちゃん!!

 大丈夫やったんか!!

 めっちゃ心配したで!!」


トモエは笑った。


「大丈夫や。

 ちょっと自分の心と喧嘩してただけや」


カイルは息をついた。


「古い影の分身……

 おばちゃん先生の“心の底”を狙ったんですね……」


リリアは涙を拭った。


「よかった……

 本当に……よかった……」


セイルは静かに言った。


「光の継承者。

 あなたは“心の底”を見つめ、

 影を受け入れた。

 それは大きな一歩です」


エルミナは深く頭を下げた。


「……ありがとうございます……

 あなたがいてくださって……

 本当に……心強い……」


トモエは影の分身を見据えた。


「さぁ……

 次はあんたの番や」


影の分身は笑った。


『……面白い……

 では次は……

 “ノルディアの影”を見せてやろう……』


黒い霧が再び渦を巻いた。

ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます。


第116話では、

古い影の分身が“心の底”を暴き、

おばちゃんが自分の最も深い弱さ――

「誰にも頼れない心」

と向き合う姿が描かれました。


強さの裏にある孤独。

誰にも言えなかった“助けて”という願い。

それを認めたことで、

おばちゃんはさらに強く、温かくなった。


次回、第117話では

ノルディア全体に広がる“国の影”が姿を現し、

街そのものが試練を仕掛けてくる回

が描かれます。


これからも、おばちゃんの物語を

どうぞよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ